第5話 空間の狭間
俺は落ちる。ただひたすら下に落ちてゆく。
本当、なんでこんなにクソみたいな人生をおくんねーとならねえんだろう。
何が神様だ。何が救うだ。俺は神なんか信じない。
運命だってなんだって信じない。
運命なんて言葉、ただの情報整理をするための言葉だ。
未来を切り開くのは自分だ。神なんかじゃない。そう、自分自身だ。
わかってはいる。ただそれをわかっているからといい、それを受け入れられない。
全部運命のせい。神様のせいにしたくなる。
俺は罪人だ。だからなんだ。なぜ他の罪人たちは平然と話している。
あいつをいじめたやつ。あいつのいじめを止めなかった教師。いじめを知っていたのに注意をしなかった保護者。みんな罪を持っている。こんなことを言うやつもいる。
俺は止めたよ〜けどみんながするって言ったから〜まぁいいかなって(笑)
いいじゃん、あいつなんていなくても。君もよかったね。もしかしたらモテるかもしれないよ?
あいつをいじめた理由?そんなの輪の中心の人がしようぜって言ったからだよ。
あいつは出来すぎた。勉強もスポーツも人格も、できすぎていたから妬まれいじめを受けたのだろう。
結局、あのいじめはクラス、いや、学年全体だったのかもしれない。
.......すぎたことか。
〜〜ーー〜〜
くだらないことを考えて、もう何時間経ったのかわからない。
これからどうするんだろう。考えても無駄か......
とりあえず神威に会いたいな。この状況を把握してるのはあいつくらいだろうし。
けど、どうやって会うんだ?まあ、あいつのことだしどうにかするか。
そして俺はさらに落ちてゆく。もう何日も経った気がする。
普通、異世界行くのにこんな時間かかるのか?
その瞬間だった。
真上に赤黒い稲妻が走る。そこから空間に亀裂が入り一本の手が伸びてくる。
「青龍!!この手をつかめ!!」
俺は訳も分からないままその手を掴む。
そのまま引きあげられ俺はその亀裂の中に入った。
〜〜ーー〜〜
「貴様を引き上げるのが一番大変だったぞ。青龍。」
ああ、頭痛い。
くそったれ、一体全体何が起こってるんだ。
「.....ここはどこだ?俺は誰?」
「ここは空間の狭間、お前は龍田川 青龍だ。全く、しっかりしろ。」
うむ、全くわからん。
空間の狭間ってなに?
某猫型ロボットの持ってる四次元ポケットみたいな感じか?
「あぁ、その声は神威か.......やっと思い出した。」
「私以外にもいる。とりあえずこの空間を維持できんのはせいぜい10分程度だ。手短に話すぞ。」
短いのならその方がいいか。
「まず私たちはレイ?だったかな。そいつに異世界に飛ばされるらしい。今は飛ばしてる最中だな。」
「それにしても、不運だったなぁ。青龍。お前も巻き込まれるなんてよ。」
「うっせーぞ。バスケバカ。だいたいなんでお前もいんだよ。春香。」
「私もいるぞ〜」
げっ、時雨もか。
「それにしてもよ〜神威。俺たち向こうに飛ばされてどうすんの?俺なんかに出来ることは少ないぜ?」
「そんなことは知っている。春香には春香に出来ることをすればいい。問題は集合場所だ。みんな同じ場所に行くとは限らない。しかも今から行くのは未知の世界だ。不測の事態におちいる可能性もある」
「あらかじめ決めとくってのはどう?私個人の意見だけどね〜」
「貴様はバカか?!異世界の地形がわかるか!だから集合場所に困っているんだ。」
時雨はてへっと舌を出す。
こいつ頭いいけどバカだったか。なら仕方ないか。
「結局話し合っても決まんないな。神威、他を話し合うぞ。」
「わかっている。だがもう時間が少ない。一つ絶対事項を言っておく。向こうの世界で強くなれ。いついかなることがあっても迅速に対応できるように」
この場にいる全員が頷いた。
そしてこの空間にパチパチっと赤黒い小さな電気が流れ始める。
「これが最後だ。集合場所についてだが、絶対に会える魔法の言葉がある。軍にいた時仲間とはぐれそうなら必ずいった。」
神威は一呼吸おいてこう言った。
『また逢う日まで』
俺たちの意識は闇に吸い込まれていった。