1/12
プロローグ
「ちょっと待ってください。それはどういうことですか?」
「今お話しした通りです。これは出し惜しみをして解決できる問題ではないのです」
時刻はすでに夜九時をまわっていた。目の前に座っている男との会話は二時間以上続いていた計算になる。この手のトラブルが起きると、その度にこの禿げ頭と向かい合って来たが、まさか私が家族を──特に妹と弟を──巻き込むことになるなどいつ想像できただろうか。こめかみの辺りがうずくように痛む。
「だからと言って…………」
「心中、お察しします」嘘をつけ。どう見ても察している顔じゃない。ですが、と頭に付けて男は続ける。
「どうかよろしくお願いいたします。この国にもしものことがあれば、それこそご家族を危険に晒すことになりますゆえ」勿論、そんなことは分かっている。痛みを飲み込むように息を吸い、私はなんとか言葉を絞り出した。
「……了解しました。この一件、私たちにお任せを」




