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終章-3-
―――――ボスン
まるで空気にでも支えられているような感覚だった。
柔らかい感触が身を包み、痛みなどは全く無い。衝撃は多少あったにも関わらず、俺は思考できていた。
どういうことだ、と脳内に疑問が浮かび上がる。
その瞬間、声が響いた。
「無事確保ーーーーーーー!!」
男性の野太く、大きい声が響き渡る。
俺は、全てを理解した。
「なぁ」
「うん?」
全部分かっていたはずの綾香が、陽気な声で返事をした。
「愛してる」
なんとなく、本当に感覚的に、涙が頬を伝ったような気がした。