六話
しばらく道の行くまま進んでいたが、根本的な問題に気付いた。
ペストの冷たい視線が突き刺さっているって事はペストも気付いたようだ。
それは――
「王室何処だよ······」
「「「············」」」
ペストは当然、担がれている二人まで黙りこんでしまった。
まぁ担がれている二人はさっきから気絶していただけだが。
拓は一度二人を降ろして思案を始め、ペストはそれを黙って見上げていた。
数秒後、拓は何か思い付いたのか手を叩く。
「ペストって確か群体精霊だったよな。黒い風に探させれば」
ペスト――“黒死病”とは、十四世紀から始まる寒冷期に大流行した、人類史上最悪の疫病だ。この病は敗血症を引き起こし、全身に黒い斑点が浮かんで死亡する。
そして、このペストと呼ばれる少女も黒死病で死んだ者の1人であり、黒死病で死んだの者達―約2.500万人程の霊を束ねている。
「って事は出来るだろ?」
「マスターは私を何だと思っているのかしら、此れでも一応魔王なのよ? 雑用係じゃないのよ? 」
ペストはこめかみに青筋を浮かべそう言いつつも黒い風を吹かせた。
拓には何を言っても意味が無いのを知っているペストは愚痴るしか出来ないのだ。
「そう言うなって、1つ何でも言うこと聴いてやるから」
ヘラっとする拓に怒る気も失せて風を吹かせ続ける。
それに命令権は交換条件としては悪くはない、この男に指示出来る何てそうそう無いのだから。
それにマスターの中に居る何者かの秘密を暴くチャンスだもの。
「ハァ···了解よ、マスター。でも此処は広すぎるから時間が掛かるから、少し待ってちょうだい」
「うん、了~解~。んで、そこの変態は狸寝入りなんてせずに名前教えてくれよ」
拓の言うとうり、半裸の青年は困った笑みを浮かべながら身体を起こしたが、警戒心剥き出しだった。
「バレてないと思ってたんだけどな~、困ったな。ぁあ、僕の名前は冬夜、よろしく」
「お前が宜しくするつもりねぇだろうが。俺が担いだ時かふら起きてたくせによ、気付いてたなら自分で歩けよな」
そんな事は無いけどなぁ、と頬を掻く冬夜はまだ暁華との距離を詰めた。
(この二人はただの人間じゃない。二人とも共通の特別な何かに護られているってのは初見から知っているけど、まだ何か別の何かありそうだ)
ペストは冬夜に冷たい視線を送り、二人を再び黒い風で包み込む。
「見つけたわ、マスター。着いてきて」
あいよ、拓と二人(強制)はペストの後に続いた。