十三話 出せぬ力
食間を出た拓とペストは、長い廊下を歩く。
アル爺を訪ねる為なのだが、しかし―――
「思うんだが、王さんに聞いた方が早かったよね? 無理やりにでも聞けば良かったわ、その後に記憶でも弄れば問題ナッシング」
「確かにそうだけど、別に良いんじゃない? 時間に制限は無いのし、数より質、早さより正確よ」
「まぁな」
「それか私が門を探す? それでも1日必要だけど、その間に準備にでもしてれば良いのだし」
ペストのその言葉で拓は目を向ける。
「珍しいな、お前が自分から動こうとするなんて。それに門の情報が一切無いから見つけるのは困難だぞ? どんな奴が管理してるのか分からねぇんだからよ」
「………貴方」
「ナンノコトカワカリマセンネー」
「まだ何も言ってないわよ。でも分かったわ、のんびりしましょ」
それだけ言って会話は終わり、アル爺が居るであろう訓練室に着く。
ペストが扉を開けようとドアノブに手を伸ばそうとした。
ドン、ペストの手が空を切り、小刻みに震えた。
「邪魔するぜ」
立ち止まるペストを他所に、拓は倒れている扉の上を通り、兵士の訓練の指導をしているアル爺に歩み寄る。
「………邪魔するのは構わんがの、扉を蹴り破るのはやめてくれんかの、特別製で高いんじゃよ」
「そりゃ悪かったな、直しておくから気にすんな………ペストが」
悪びれもせず、尚且つ後片付けをペストに押し付けた。
「………お主も大変じゃのう、嬢ちゃん」
「………ええ、本当に」
いつの間にかペストが近くに居たが、扉はしっかり直っていた。
「で、門の場所は?」
「唐突じゃのう、まぁ大体は聞こえていたのだが、残念じゃがワシでは力になれなさそうじゃ、悪いの」
「知ってた」
………………
「は?」
「うん、知ってた。だって王自身は知ってるから頑なに言おうとしなかったし、あれだけ言いたくないんならアル爺に聞くのも止めるはずだろ、アル爺が知ってるなら」
「確かに」
「だから、まぁ気にすんな」
アル爺の肩に手を乗せ言葉を掛ける。
だが、そこで拓の面白いが発生する。
「そこのお前! さっきから教官になんて口の利き方してるんだ!」
訓練中の兵士が3人ほどで近付いてきた。
それも武器を向けて。
「失礼だぞ! この方を“大戦時代の英雄”だと知っているだろ!」
「知らん」
「なッ!!」
「てか、アル爺人望厚いな。まぁ良いや、はい、決闘ね、受けるよ。こっちは素手で良いよ、何なら武器貸すしね、はいよ」
「!?」
拓は勝手に話を進め、自分の特製武器を兵士に放る。
兵士も戸惑いつつも、武器を受け取る。
その武器の特別製に気付いたらしい。
「………お前が決めたんだ、後悔するなよ」
「しねぇよ、痛い目見るのはアンタなんだから」
兵士の目は怒りに燃えている。
周りをよく見れば、他の兵士も怒っているように見える。
アル爺とペストに至っては椅子で座ってお茶を啜って、我関せず。
2人は訓練所の中央に移動し、兵士は構え、拓は兵士を見据えて腕を組む。
「来いよ」
その挑発に簡単に顔を真っ赤にした兵士は拓に近付く前に何かを起こす。
「“高速移動”!!」
「ほぉ」
魔法のようなものを発動させた途端、兵士の速さは蜂のように早く、鋭くなった。
翻弄しつつ近付く相手に動じず、笑っている。
「あれは強化魔法の一種じゃ、己の速さを引き上げることが出来る。調整次第では5倍にもなる」
「へぇ」
ペストに説明しているアル爺の声が聞こえる。
「ここだあぁぁぁぁあ!!」
拓を後ろから跳んで剣で切りかかる兵士、だが。
「遅い」
身体を半分だけ傾け、右手を伸ばす。
その手は、跳んで宙に浮く兵士が着地するより早く首を掴んだ。
左手にはいつの間にか兵士の持っていた剣が握られていた。
「お前は弱いんだよ、自覚しろ」
ネタばらししてやる!
この章では魔界行ってボロボロになって帰って来るぜ!
どうだウザいだろ!?
すいません。
まぁ、現時点で門を探してる訳ですし、大体予想できるから大丈夫ですよね。
それと、この話から一話一話にタイトル付けていきます。
では次話で、ではでは。




