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これからよろしく頼むぞ!

 時はあれから夜が明けた朝となる。


「おーい、優心ゆうしんよ、朝だぞぉ!」


 俺は誰かに必死に起こされていた。


「う、う~ん?」


 ゆっくりと目を開けると、寝ている布団に見たことあるような…ないような少女が乗っかっていた。


「あ、そういえば昨日一日だけ泊めるって約束したんだっけ。」


 俺は寝ぼけながらもその少女が神様で、1日だけ泊めることにした事を思い出した。


「起きたか?」


「あ、ああ。おはよう…。」


 俺は彼女に挨拶しながら時計を見た。

 時刻は朝方の6時だった。


「うお、まだこんな時間か。お前小屋に閉じこめられていたわりには時差ボケとかしてないんだな。」


「時差ぼけ…? よくわからんが、わらわはこのくらいの時間帯になればいつも起きとるぞ。」


 彼女はえっへんと言わんばかりのポーズをとった。


「つまり君には電波時計クオリティな体内時計が備わってるて事か…。まあ、せっかく起きたんだし布団を押し入れに片付けとくか。」


 特別にすることが思いつかなかったので、自分と彼女の布団をたたんで押し入れにしまうことにした。


「のお、妾はお腹が空いたぞ…」


 布団をしまっていると彼女は自分のお腹をなでながら言ってきた。


「んー仕方ないな、チャーハンでいいなら作ってやるよ。」


「ちゃーはん…?」


 俺は押し入れの戸を閉めると彼女を連れて台所に行き、チャーハンを作る為の材料を準備した。


「お主は料理ができるのか?」


「チャーハンだけなら作れるが、他のものは一切作れないんだよな…。」


 俺は喋りながらテキパキと調理を始めた。

 実際のところ普段は料理なんて作らないため、チャーハンを作るのも久しぶりなのだ。だから、あまり自信がない。



 「よし、味付けはこんなもんでどうかな。」


 俺は簡素に作ったチャーハンを不器用にフライパンから皿に盛り付けた。


「ほら、食ってみ。」


「おお! いただきます!」


 彼女は夢中になってチャーハンを食べ始めた。


「味付けどうだ?」


「旨い! 誰からこのチャーハンとやらの作り方を教えてもらったんじゃ?」


 想像以上に高評価で少し照れくさくなった。


「基本的な作り方は母さんで、味付けは俺の親友からだ。」


 どうでもいいが俺は持つべきは友だと心に刻んでいる。

 この味付けを教えてくれた俺の親友はとてもいい奴だ。


 ふと時計を見ると時刻はまだ6時半を過ぎたばかりだった。

 いつもは7時半頃に起きてドタバタと準備をして大急ぎで自転車をこいで学校にいくのだが、今日は久し振りの早起きのため、もの凄く余裕を感じられる。


「あら、今日はやけに早起きなのね。」


 気がつくと母さんが起きてきた。


「あ、うん。今日は神様に起こされたからね。」


「まあ、いいことじゃない。優心もご飯食べて準備しなさい。」


 母さんにそう言われたので、学校に行くためにご飯を食べることにした。



「そういえば優心、神様は一晩だけお泊まりなのよね?」

  

 俺が歯を磨き終えて部屋へ戻ろうとした時、母さんが質問してきた。


「うん、本人とそう約束したからね。」


「そう。」


 母さんはそれ以外には特に言わなかったため、俺は黙って部屋に戻り制服のブレザーへと着替えた。


「のお、優心。昨日は本当にお世話になった。本当に助かったぞ。」


 制服を着ていると彼女がさりげなく言ってきた。


「気にしなくていいよ。それで、これからどうするんだ?」


 俺が質問すると彼女は下を向いた。


「妾は…この時代の行くあてを探す事にするぞ。」


「…そうか、気をつけてな。」


 この日は早く家を出ることにした。

 神様と名乗る彼女を見送るために。




 学校へ行く準備が整った俺は彼女と玄関に向かった。


「優心、気をつけて行ってらっしゃい。」


 玄関で靴を履いていると母さんがやってきた。


「あと、神様にはこれ」


 母さんは神様に小さな紙袋を差し出した。


「これはなんじゃ?」


「おにぎりよぉ。お昼にでも食べてね。」


「ありがとうじゃ!」


 彼女はとても嬉しそうな顔をして袋を受け取った。


「それじゃ行ってくるよ。」


 そうして俺は彼女と共に家を出た。



 外に出てからは、いつも移動手段としている自転車を手で引きながら歩いた。


「結局どこに行くんだ?」


「そんなこと言われても…妾にもわからないのだ。」


 彼女はおにぎりの入った袋をきゅっと強く握りしめた。

 彼女が何年閉じ込められていたかは知らないが、相当日本の地理感覚は変化していることだろう。


「とりあえず俺はこれから隣の街に行くから、そこで何か探したら?」


「…うん、そうさせてもらうぞ。」


 それからは彼女と共にいつもの学校へ行く道を進んで隣の五所川原市へと向かった。

 歩いている時は会話を一切交わさず俺達は無言でひたすら歩いた。


 

 岩木川にかかっている いぬい橋 を渡り終えると彼女はそこで立ち止まった。


「ここが隣の街なのか?」


「そうだよ。」


 俺がそう答えると彼女は辺りを見渡した。


「…よし、妾とはここでお別れじゃ。お主は学校とやらにいくといい。」


「大丈夫か?」


 どこか不安に思っていた俺は一応最後の確認をした。


「わ、妾のことは気にしなくていいぞ…。」


 彼女はそう言うと、土手をとぼとぼと歩いていってしまった。

 俺は少し不安があったものの、本人がそう言うならと思い、自転車にまたがると学校へと向かった。


 学校についてからは自転車を自転車小屋に置いて、何事もなく教室へと向かった。

 ただ一つ頭の中では彼女の事でいっぱいだった。



「はい、全員席について。」


 気がつくと朝のホームルームの時間が来ていた。


「えーと、今日は授業の上下変更があります。それで──」


 担任の先生が朝礼を進めていると、廊下から副担任の先生があわただしくやって来た。


「先生、ちょっといいですか?」


 副担任の先生は担任の先生を呼ぶと、廊下で何かをこそこそと話し始めた。

 教室ではそんなことを気にすることなくガヤガヤとそれぞれが騒ぎ出した。

 しばらくして副担任の先生との会話は終わり、担任の先生は教室へ戻ってきた。


「えーと、工藤くどうはこのホームルームが終わったら先生にちょってついてきてくれ。」


「え、はい。」


 その時俺は何かしたかなとひたすら考えた。

 すると周りの数人が冷やかすようなことを言ってくるではないか。


 ホームルームが終わると。俺は先生について廊下へと出ていった。


「それでだな、工藤。どうやらお前に会いたがってる人がいるらしいんだが…このまま職員玄関にいくぞ。」


「会いたがっている人…ですか?」


「ああ。副担の話を聞く限りだと、小学校高学年から中学校くらいの女の子らしくてな、神社の子なのか巫女装束を着ているって感じ聞いたぞ。」


 その話を聞いた瞬間、会いに来た人が神様と名乗る少女だとすぐ分かった。


 職員玄関に到着すると数人の先生方がいて俺を見てきた。

 そして、その奥には予想通り彼女がいた。


「すまぬ…優心よ。」


 彼女はもの凄く申し訳無さそうな顔をして俺を見てきた。

 俺は周りに立っている先生方の目を気にしながら小声で話した。


「どうしてここに…? っていうか、俺がここにいるのよく分かったな。」


「お主の母が朝方に、お主の通ってる学校は商業高校というと教えてくれたのじゃ。それでたまたま道で出会ったおじいちゃんに場所を聞いたらこのあたりにはここしか商業高校がないと教えてくれたのじゃ。」


「そういう事か…。それで何しに来たんだよ。」


「その…お主に伝えたいことが…。」


彼女が次の言葉を言いかけた時、担任の先生が俺の隣に来た。


「工藤、話はまとまったかい? そろそろ最初の授業始まるけど…。」


「あ…その。」


 俺は今彼女をどうするべきかを必死に考えた。

するとこの学校で一番小さい子に触れ合いなれている音楽の先生が前に出てきた。


「工藤君、あなたが学校終わるまで私が彼女の面倒をみてあげてもいいわよ。幸い今日はどのクラスも音楽の授業はないですしね。」


「本当ですか!」


「ええ。今日はずっと音楽室にいるから、お昼休み位は会いにくるといいわ。」


「ありがとうございます! 神様、今はとりあえずあの先生と一緒にいてくれ。後で必ず迎えにいくから。」


「わかったぞ。」


 そうして彼女は音楽の先生と一緒に音楽室へと向かった。

それを見送った俺は小走りで教室に戻った。


 教室に戻るとそれを待っていたかのように拓斗たくとが近づいてきた。授業には間に合ったようだ。


「先生どなにしてたん?」


「迷える子羊が来たから救いをかけに行ってた。」


「どした意味だば。(どういう意味だよ)」


 拓斗は軽く笑って話していた。

 それから直ぐに最初の授業のチャイムが鳴り、俺達は各自の席に座った。




 時間は昼休みまで進む。

 

 俺は音楽の先生に言われた通り、彼女に会いに行くとついでに音楽室に弁当を持って行って食べることにした。

 いつもは拓斗と一緒に食べるのだが、声をかけられる前にそっと教室を出て音楽室へと姿を消した。


 音楽室の近くまで行くと、フルートを奏でメロディが聞こえてきた。そのメロディは幻想的で不思議な気持ちになる。


「失礼します。」


 音楽室に入るとフルートを奏でる彼女と、それを教えている先生がいた。


「あら、いらっしゃい。もうお昼なのね、先生は一旦職員室に戻るから工藤君が代わりに面倒みてね。」


「あ、はい。」


 先生はそう言うと音楽室を出て行った。


「優心よ、授業とやらはいいのか?」


「今は昼休みだから、ご飯を食べる時間なんだ。」


 俺はそう言いながら彼女の近くの席に座り弁当を広げた。


「そうじゃったか。妾もご飯をいただくとしようかの。」


 彼女は今朝、母さんからもらった袋からおにぎりを取り出して食べ始めた。


「それにしても優心よ、ここからの外の眺めは良いものじゃな!」


「そりゃ最上階だからな。」


 俺の通っている学校は最上階に音楽室だけがある。外から校舎を見ると、その部屋だけが出っ張っているように存在している。


「そうだ、朝に聞きそびれたけどなんで伝えたい事って?」


 彼女はしばらく黙った。


「正直…妾はどこへ行けばいいのか全く分からない。理不尽に閉じ込められて、やっと自由になったと思えば時は何年も時は進んでしまっておった。妾が閉じ込められていた間の外の出来事なんて何も知らない。……この時代に妾の居場所はあるのじゃろうか…。」


 彼女は半泣きしながら喋っていた。

 頬には涙が一粒二粒と伝って机に落ちていた。


「…神様なんだろ? お前の居場所は必ずあるよ。」


 俺は彼女の両肩に手を置いて喋った。


「そう信じるしかないぞ…。」


 彼女は頬を伝っていた涙を巫女装束の袖で拭った。


「よし、お前の居場所が見つかるまで俺の家に置いてやるよ。」


「…ほ、本当にいいのか?」


「まあ、偉そうには言えないけど、うちの両親なら歓迎してくれると思う。」


 それを言うと、彼女の瞳からはさっきより涙があふれた。


「す、すまぬ…。本当にすまぬ。」


 彼女はそう言いながら、おにぎりを口に詰め込むようにして食べた。

 俺は余計に泣かせてしまったかと思い少し焦った。


「ほ、ほら、泣くなよ!」


「うむ…。」


 彼女は流れる涙をひたすら巫女装束の袖で拭った。


「あらぁ、工藤君。女の子は泣かせちゃダメだよぉ。」


 いつの間にか音楽の先生が戻ってきていた。


「せ、先生!こ、これは、その…」


「ふふ、盗み聞きしてた訳では無いけど、たまたま話し声が聞こえちゃったわ。」


 音楽の先生はニコッと笑った。

 俺はなにも答えられずひたすらに焦った。


「まあ、彼女のことは任せて。休み時間がそろそろ終わるから、工藤君は教室に戻ったほうがいいわよ。」


「は、はい!」


 俺はささっと弁当箱を片付けて、彼女に「放課後に迎えに来るから」とだけ告げて教室へと走った。


 教室に戻ると不思議そうにした拓斗が近づいてきた。


「おめえ、どさ行ってだ? 飯ば一緒に食わねがど思って探してたんだぞお。」


「す、すまん!ちょっと訳あって別の教室で食べてた!」


 俺は手を合わせて拓斗に謝った。


「ま、まあ、いいんだばってさ。おめえ本当に何もトラブル起こしてねえんだべ…?」


「トラブルなんて起こすわけないだろ。」


 俺はそう言ってカバンに弁当箱をしまった。


「今日のおめえいつもより変だぞ…。」


「いつもよりって、いつも変なのかよ。」


 俺と拓斗は互いに笑った後、しばらくいつもみたいに日常的な会話を交わした。

 そして休み時間終了のチャイムが鳴ると再び各自の席へと戻った。

 



 それから時間は放課後まで進む。


 俺は拓斗に一緒に帰ろうと誘われたが、「用事がある」と断り先に帰ってもらった。

 

 そしてある程度人が減るのを待った。


 気がつけば時刻は17時を上回っている。

 人の数はだいぶ減ったので、約束通り彼女を迎えにいくべく、音楽室へと向かおうと荷物を持って教室を出た。

 すると階段の方から彼女と音楽の先生がタイミング良く降りてきた。


「優心!」


 彼女は俺を見ると駆け足で近づいて抱いてきた。


「わわ!」


 俺はいきなり抱きつかれ、次に行う行動に戸惑った。


「あらあら、学校で大胆ね~。」


「せ、先生!」


 先生はホホホと笑った。


「彼女ずっとあなたのこと待っていたのよ。」


「え?」


「それでね、日が暮れてきたら置いていかれたのかと不安に思ったのかしらね。あなたの教室に案内してほしいって言われたのよ。」


「そうだったんですか。今日は一日ありがとう御座いました。」


 俺は先生に頭を下げた。


「いえいえ、あなたの意外な一面もみれたので楽しかったわ。それじゃ、先生は職員室に戻るわね。気をつけて帰りなさい。」


「は、はい!」


 音楽の先生はそう言うとスタスタと職員室へと向かって姿を消した。


「さて、家に帰るか。」


「うむ!」


 そうして俺と彼女は自転車小屋へと向かった。

 


 自転車小屋についた俺は自転車の鍵を外し、自転車を引いて彼女と家に向かって歩き始めた。


「ふう、やっと今日という一日が終わったな。日に日に時間は長いようで短いものだと思わせられるぜ…。」


 俺がそう言うと彼女はクスッと笑った。


「妾も小屋に閉じこめられていた時間が嘘みたいな気がするぞ。時とは嘘みたいに早く過ぎてしまうようじゃな。」


「…そうなのかもな。」


 そらから俺達はしばらく無言で岩木川にかかっているいぬい橋を渡り始めた。


 太陽はちょうど沈む頃で空は夕日のオレンジ色と夜の闇が混ざって幻想的だった。


「こうやって川を見るのは久しいのお。…とても綺麗じゃ。」


 俺からすれば普段見る景色だが、彼女に言われてから見るといつもとは違う不思議な感じがする。


「のお、優心。」


「ん、どうした?」


 彼女は沈みかけの太陽をまっすぐ見つめながら言った。


「正直、妾は意地を張っておったのかもしれん。」


「意地…?」


「妾は神であるが故、こうして人に助けられてばかりでは情けないと思っての、朝にはちゃんとお主にお別れを言って一人でやっていこうと思っとったんじゃ。じゃが、いざお主がいなくなってしまうと、とてつもない寂しさとこの時代に対する恐怖に襲われたんじゃ。昼間にお主に家に置いてくれると言われたとき嬉しくて…安心して涙が止まらなかった。」


「そうだったのか。まあ、無理することもないと思うよ? 正直に言うのだって大切だからね。」


「そうじゃな。それにしても、妾は一人では何もできぬのお…。」


「そんな事はないだろ。これから必ずお前にしかできないことがあるさ。」


 俺はそう言い彼女の頭を軽くなでた。

 彼女は照れたように笑った。


 それから橋を渡りきると、いつものように住宅街を抜けて農道に出た。


「そう言えばずっと気になっていたんだけど。」


「なんじゃ?」


 彼女は辺りの景色を見ながら返事をした。


「お前はなんて言う豊作の神様なんだ? ずっとお前と呼ぶのもあれだからな。」


「そう言えば、ちゃんと教えていなかったの。それではあらためて…妾は“ウカノミタマ”と申す。これから宜しくお願いするぞ!」


「ウカノ…ミタマ…」


 俺はブレザーの内側のポケットからスマホを取り出して、ブラウザで“ウカノミタマ”と検索した。


「ウカノミタマって、お稲荷さんって言われている神様か!?」


「お稲荷さん…まあ、そうとも呼ばれておった気がするのお。ついでによく勘違いされておるが、狐の姿をしているのは妾の神子しんしであって、決して妾が狐の姿をしていると言う訳ではないからの。」


「ほ、ほお。まさか君がウカノミタマ様なんて驚きだ…。これからなんて君の事を呼べばいいかな?」


「お主の好きに呼んでくれて構わないぞ。」


「“好きに”か。じゃあでんで!」


 俺は冗談で全然関係のない名前で呼んだ。


「で、でん?」


 しかし彼女は少し嬉しそうな顔をした。


「ははは、冗談だよ。これからはウカ様って呼ぶよ。」


「い、いや、わ、妾はでんのほうがよい! その方がお主も呼びやすいのではないか!?」


「ま、まあ、神様の名前を直接呼んでる訳では無いから呼びやすいと言えば呼びやすいけど…何でその名前がいいんだ?」


「その…気安く呼んで貰えるような名前だからじゃ。神様の名前なんて堅苦しいじゃろう?」


 彼女は照れくさそうに喋った。


「そうだな。じゃあ、よろしくなでん。」


「宜しくお願いするぞ、優心。…ついでにこのでんと言う名前に意味とかはあるのか?」


 でんはそう言い首をかしげた。


「俺の言うでんんぼのと書いてでんだ。私的にその名前の意味を堪えるなら二つくらいかな。」


「教えて欲しいぞ!」


「一つ目は、ここは広大な津軽平野で水田すいでんが盛んという所からとったんだ。二つ目はさっき調べたんだけど、君は最初の頃はお米だけの守護神だったって書いてあったんだ。米はんぼで収穫するだろ?それででんだ。」


「単純だが悪くはないぞ。」


 それから俺とでんは会話を交わしながら家へと向かった。


 家に着いて車庫に自転車を片付けていると、でんは外で黙って家を見つめていた。


「どうした?」


 俺はシャッターを閉じながらでんに問いかけた。


「…本当に世話になっていいのかと不安になっての。」


「そう気にすんな。考えるのは後からでもいいさ。…さあ、行こう。」


「うむ、そうじゃな。」


 そうして俺達は家の中へと入った。


 

「ただいまあ。」


 玄関でそう言うと「おかえりなさい」と言う声が台所から聞こえた。どうやら皆はもう晩ご飯を食べているみたいだ。

 俺はでんを連れて台所まで行った。


「えっと…」

 俺はなにから言おうか悩んでいるとばあちゃんがにやっと笑い「おかえりなさい」とだけ言った。


「これからもしばらくお世話になってもらっていいか…?」


 でんは母さん達にそう言った。


「ええ、もちろんよ。」


 母さん達はこうなることを予想していたのか、テーブルにはいつもより一人分多いご飯が既に用意されていた。


「かたじけない!」


 でんはそう言って深くお辞儀をした。


「いいのよ。それより、あなたの名前が知りたいわ。」


 母さんは優しく微笑んだ。


「そうじゃった…。妾は豊作の神であるウカノミタマと申す。」


「なんと! お稲荷さまではないか!」


 おじいちゃんはそう言って「ありがたや~」と手を合わせて拝んだ。


「妾の事はで、でんと呼んで欲しいのじゃ。」


「あら、でんちゃんね。わかったわぁ。」


 母さんはそう言ってクスっと笑った。


「さ、優心達もご飯にしようじゃないか。」


 父さんが仕切り直すようにそう言った。

 俺とでんは言われるがまま台所へと入ってご飯を食べることにした。



 こうして、今日より俺の家には神様が居候する事になったのだ。


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