そして僕はまた布団にくるまった
拝啓、全国のモテない男子諸君。
余りにも当然なので何を今さらと言うかもしれないが美少女もトイレはする。
ちなみにやり方というか処理のしかたはインターネットを参照した。僕のスマートフォンは最強なんだ。嘘言った、それなりに新しい型だけど普通のスマホだ。
膀胱炎の危機が去り、ひとまずは安心である。
さて、一難去ってまた一難、服がない。
いやもちろん、僕だって文明人の端くれである。
人並みに……いや人並みよりは少ないしお洒落を嗜むわけでもないが服はある。
無いのは何か。当然ながら女物の服である。
すなわち下着であったり……下着であったりだ。どうせ家から出ないのだからシャツやらなんやらは適当でいいと思うのだが下着である。
前にも言った気がするが、この体は美少女である。
実感はないが、美少女である。
よって、美少女の体型を維持することは、この体に対する義務である。誰に言われたわけでもないがそう確信している。
女性の体には、それに適した下着が必須らしい。もちろん、これまで女子と付き合ったことのない僕であるから情報はすべてインターネット頼りだが。
よって服はどうするか。簡単な話である。
いつも買ってきてくれる人に頼めばいい。
手早く通話のボタンをタップする。
連絡張をみる必要はない。何故ならば僕のスマホにはその人の電話番号以外にはあと一人しか登録はない。
暫くの発信音のあとに、聞き慣れた声が耳に届いた
「どうした旭、電話なんて珍しい」
「いや、兄貴。ちょっと女物の下着がほしくて」
切れた。
再度、通話ボタンを押す。
「なんた性犯罪者。まだ何か用か」
「いや、真面目な話なんだけど」
「女物の下着がほしいってののどこら辺が真面目な話なのか言ってみろ。大体なんだ、妙に女っぽい声作りやがって気持ち悪い」
「うん、女なんだよね」
しばらくの沈黙。
「意味がわからないんだがな、旭。女なんだよねってどういうことだ?」
「目が覚めたら体が女になっていた。何いってるのか分からねーと思うが僕にも何が起きたのか分からない。アポトキシン4869とか幻覚とかそんなチャチなもんじゃねー……もっと凄まじい人類の神秘っぽいのを味わってる」
「中途半端なジョジョネタ乙。そして嘘こけ、エイプリルフールはまだ遠いぞ」
「兄貴、もうすぐ家につくでしょ。それで分かる」
「……マジか」
「マジマジ。マージ・マジ・マジーロ」
「美少女か?」
「僕の理想のタイプ(外見」
中身がお前だもんな、と苦笑が入る。
「とりあえず帰ってからな。それから考えるわ」
もう家につくから少し待ってろと、電話が切れて。
とりあえず、兄弟とはいえ(今は兄妹か)全裸のままではいけないだろう。
この身は既に美少女なのだから。