三人目-突然の訪問者
嵐は何時だって突然くるらしい。
誰だ、嵐の前の静けさという言葉を作った奴は。
どこに静けさというものがあった、答えてみろ。
嵐の前が静けさがあるならそれにただ縋り付きたかった。
くそ、こんな嵐望んでいない。
「嘘でしょ!!何よこれぇっ!」
ほら、はじまったっ。
「ちょっと!啓介これどいうことよっ!」
「いや…どうも、こうも、こう言う事ですけど。」
「ありえないじゃないっ!突然、私の家に猫がいるなんてっ!」
事の始まりは簡単なこと。
牡丹の家にいるはずもない猫が転がりこんでいたという話。
そんな中たまたま俺が遊びに来て、猫と遭遇してしまった牡丹につかまったという事。
いや、いくらなんでも俺でも突然言われても。
そんな困惑を知ってか知らずか牡丹は俺に抱きつき泣き喚いている。
耳に入るのは「嫌」だの「怖い」だの。
たまには俺の話も聞いてくれ牡丹。
元々、牡丹は猫が苦手らしい。
帰宅途中に猫にあうと決まって嫌な顔をしていく。
嫌な顔をしては俺の後ろへと隠れて猫から身を隠していく。
その理由を聞けば幼い頃、まだ無垢で純粋な牡丹は猫を飼っていたらしい。
それはそれはかわいい子猫で、家の家族全員で可愛がり育てて。
名前は自分の名前からとり「ぼん」と呼んでいたらしい。
此処で名前の事をつっこんだら負けだからな。
ぼんを育て可愛がっていたある日。
牡丹がぼんをお風呂へといれ一緒に楽しいバスタイムをしていた時
悪夢が訪れたといっていい。
ぼんがお風呂を嫌がり逃げだすのを牡丹が取り押さえ
抱きかかえようとした瞬間、ぼんが牡丹の大切な息子をかんだらしい。
そりゃ…嫌いになるよな。
「牡丹、本当にこの猫が入ってくる理由とか、原因とか
入ってこれる原因ないの?」
「ないにきまってるじゃないのよっ!」
牡丹が必死に俺の腕にしがみつき泣き喚いているのは言うまでもない。
困ったことに猫は牡丹の部屋が気に入ったのか、どっしりと腰を下ろし
部屋の主がベットの上で縮みこみ喚いているのもお構いなしに
部屋を見渡し物色していくようにしている。
根性の座っている猫だなと言っている場合ではない。
可愛げのある猫なら牡丹も猫へとこんなに拒絶はしなかったんだろうに
困ったことにこの猫の顔はどう見ても、いかつい。
まるで一昔前の猫の親分のような顔をしてこちらをにらんでいる。
我が物顔だ、此処は俺のものとでも言うように。
「牡丹、どうやらあの親分様は此処が気に入ったらしい。」
「ちょっとやめてよ!!此処はわたしの部屋だってばっ!」
ピンクのシーツベットの上で叫ばれてもどうしようもない。
泣き叫ぶ牡丹を横目に猫はこちらへと歩いてくる。
完全に背中へと隠れ怯える牡丹をそのままに猫を抱き上げようか。
意外な重量感、重いと感じながらもやはり可愛い。
どんなにいかつい顔をしていようの猫は猫だ。
「よし、俺こいつ飼う。」
「…嘘でしょっ、私啓介の家に遊びに行けなくなるっ」
「いや、これる。自力でこい、俺を愛してるというなら。」
「愛してても無理よっ!絶対に無理って言ってるじゃない!」
「おーしいかちい猫、おいでな俺の家に。名前は牡丹にしよーな」
「いやぁああああっ!!!!」
可愛い俺の彼女が泣き叫ぶ中
可愛い俺の家族が一人増えた。
彼女の名前は「牡丹」
可愛い家族の名前は「牡丹」
泣き叫ぶ彼女の声に、紛れて聞こえる猫の鳴き声。
明日から俺の部屋にくる時の牡丹が楽しみだ。
猫に大切なもの…痛そうですね…;
ちなみに私は無視が大の苦手っ子です。
友達といると倒せるのですけど…




