Do you followed by a happy time for you?
『貴方のための幸せな時間は続きますか?』
テーブルに置かれたアップルパイ。
表面が綺麗なきつね色に焼けている。
とてもいい香りが鼻をくすぐった。
「アップルパイだよ。ありす好きでしょ?」
少女がにこにこ笑いアップルパイを切り分ける。真っ白な皿にアップルパイをのせると、ありすの前に置く。それをありすはじぃっと見る。
「そうだっけ」
ありすは呟き首を傾げた。
その様子をみて少女は頬を膨らませる。
「この前、ありす言ってたじゃない!アップルパイ好きって」
ありすは自分の記憶の中からその言葉を探してみる。頭が痛い。そう感じ、すぐやめた。少女はまだ頬を膨らませている。ありすは少し口角を上げると、皿にのったアップルパイに銀色のフォークをさした。花のような装飾が施してある小さなフォークが太陽の光を受けて光る。ありすはアップルパイを口に運んだ。
「…美味しいよ」
ありすはそう呟くとアップルパイをもう一切れ口に運んだ。それを見て少女はやっと元の笑顔に戻った。少女は満足したのか、鼻歌交じりで自分の分のアップルパイを皿にのせた。
ーーアップルパイが無くなると、少女は皿を持ってキッチンに消える。ありすはそれを見届け、外に出た。いつも通りの晴天。また、いつもの大樹の下へ向かう。
ふと、白い髪が揺れるのが遠くに見えた。何故か呼ばれているような気がした。ふっと吸い寄せられるようにその髪が見えた方に足が動く。すると白い髪はありすから逃げるように木の影に消える。
「なんだよ、あれ」
ありすは若干ムキになり白い髪を追った。白い髪が隠れた木の裏を静かに覗くと、真っ白な兎がいた。兎は後ろにいる、ありすに気づかない。
(なんでこんなとこに白兎…)
ありすが住む場所には茶色の毛をした兎しかいないのだ。ありすは不思議になり、その兎をじっと見つめた。そんな見つめられているとは知らず、兎はゆっくりと二本足で立つ。そして何処からか、くすんだ金色の懐中時計をとりだした。
呆気にとられるありすなど目にも入らず、兎は時間を確認して汗を拭くような動作をする。すると兎は振り返った。
目があう。
白兎は綺麗な桃色の目をしていた。
しばらく二人は見つめ合う状態で止まっていた。
兎はようやく状況を理解したのか、慌てた様子で後ろに飛び跳ね走って行った。ありすは逃げて行く兎をまた追う。何故追うのかありす自身にもよくわからなかった。
だが、追わなければいけないような気がしたのだ。
ーーうふふ…おいで、ありす…
不思議の国のアリス…素敵