ももまん大好き桃太郎と鬼が島の鬼退治のその後
昔々、あるところに“ももまん”という可愛らしい桃の形をしたまんじゅうが大好きな少年がいました。
少年は拾い子です。
ある日、川から大きな桃の形をした船に乗せられ、捨てられていた赤子を、川に洗濯に来ていたお婆さんに拾われたのでした。
少年は“桃太郎”と名付けられ、お爺さんとお婆さんに可愛がられて育ちます。
桃太郎はお婆さんお手製の桃まんじゅうが大好きです。一日に何個でも食べられます。大量に、見ていると胸やけがしてやめてーーーー!!と叫びたくなるくらい・・・。
余談ですが、桃太郎は桃が嫌いです。
このお話は、桃太郎が鬼が島の鬼退治に行って、帰ってきた後の後日談。
※※※
桃太郎が鬼退治から帰ってきた。
装備はボロボロ。顔は煤け、腰には護身用の刀を下げていた。
「ただいま~!鬼を退治してきたよ~!!」
桃太郎の顔は晴れ晴れと、天真爛漫に輝いていた。
お婆さんに駆け寄るさまは褒めて褒めてと尻尾を振る犬のよう……、失礼。桃太郎や、こっちを睨まんといておくれ。お婆さんが首を傾げておるじゃろう?
「(お爺さん、何しているの?)」
いやいや、オヌシもわしの方を見て首を傾げるな。お婆さんから見れば虚空を見て首を傾げているように見えるからね?わし、お爺さんじゃないからの?ナレだから。ナレーターだからっっ
ほれ、わかったら話を進めい。お婆さんや、よろしくのぅ。さむずあっぷするな。それにしてもいい笑顔じゃのぅ・・・。
「おかえりなさい。桃太郎。頑張ったわね。ももまんがあるわよ?」
お婆さんは安堵したように笑って、ちゃぶ台の前に座った桃太郎の前にももまんを大量に置く。
「わ~い!!」
桃太郎はももまんに飛びつき、すごい勢いでももまんを消費していく。
お婆さんはニコニコと笑いながら、桃太郎の前にももまんを追加していく。
お婆さんとお爺さんから桃太郎が頑張ったご褒美だ。
お爺さんが家に帰ってきた。桃太郎、首を傾げながらわしとお爺さんを見比べて、“あれ?”って顔してるんじねぇよ。
お爺さんは桃太郎を見て取っても嬉しそうに、
「よう帰った!お前さんが無事でなによりじゃ!生きて帰ってきてくれて本当に良かった!」
泣きながらそう云った。そしてポロリと、
「鬼が島などお前が行かなくてもよかったんじゃ。」
衝撃の事実を言った。
「へ?」
桃太郎は口からポロリと餡子を落としそうになる。
「じゃあ、なんで鬼退治なんて行かせたんだ!!」
桃太郎は激怒。
その手には桃まんがしっかりと握られ、口元には餡子がたくさんついている。・・・締まらない。
「・・・だって、脅されたんですもの。」
様子を見ていたお婆さんが困ったようにそういう。
「え?」
桃太郎は目をまん丸くした。お婆さんは話し続ける。
「鬼にね、攻めて来いって・・・。自分たちの鬼が島には財宝がたくさんあるから、強い奴と戦わせろって・・・・。」
桃太郎は村一番強い。桃まんの為ならば、この日ノ本一強くなる。桃太郎の他に鬼に敵いそうな者が他にいなかったのだ。
いや、本当は数は少ないが、いるにはいた。
だが、みんな知らせを聞いて、夜逃げをしたり、病気や怪我になったりと、精神面で弱い奴ばかりだったのだ。
そこで桃太郎に白羽の矢が立った。桃まんの為ならば、どこまでも強くなる桃太郎に・・・。
そして、お爺さんとお婆さんは知らないが、本当はもう一つ理由があったのだ。
桃太郎を鬼が島に行かせることになった理由が。
それは、村の者が鬼が島に強者を向かわせないならば、鬼の方から出向いて、人間を滅ぼしてやる、というものだった。
これは絶対させるわけにはいかない。
鬼が村に来れば、必然死人が出てくることになるだろう。
そういうわけで、桃太郎は鬼が島に行かされたのだ。桃太郎の大好きな桃まんを餌に・・・。
「鬼は喧嘩好きじゃからのぅ・・・。」
とは白い立派なおひげを扱きながらのお爺さんの言。
桃太郎は桃まんを食べる手を止め、きょとんとした表情で
「え!?ボク、ミサイルとかダイナマイトとか使っちゃったよ?喧嘩の域超えてない?」
「「え!?・・・。」」
お爺さんとお婆さんは桃太郎の言葉にお互い、顔を見合わせる。
その頭の中では、そんなものどこから手に入れたんだとか、育て方を少し間違えたかしら?などという思考でいっぱいだ。
「鬼さんは正々堂々勝負がしたかったそうよ?」
「知らないよ!あいつら棍棒持ってたんだよ?ボクが殺されちゃうもん。」
桃太郎はももまんを頬張りながら、威張るように言う。
「「だよなぁ。(ですよね~。)」」
お婆さんとお爺さんは冷やさせを垂らしながら、深く桃太郎に同意する。そして、
「「鬼さん、・・・可哀そうに・・・・。」」
深く心の底から鬼に同情したとさ。
それから、桃太郎のお陰で桃太郎とお爺さん、お婆さんの家は裕福になり、桃太郎は毎日大好きな桃まんを食べて過ごしたとさ。
おしまい。