共に。
「あ‥白銀さんはこんなところで何してるの?」
沈黙に耐えかねて僕が口を開くと白銀さんは、また優しい笑顔に戻った。
「僕は‥赤ずきんをさらう悪い狼なんだ‥。」
「え?!」
「ふふ‥冗談だよ。実は人を探してるんだ。君は何をしてるの?」
「僕は今から街に行くの。」
「へぇ‥何をしに?」
「分からないけど‥地図に書いてある場所へ行かなきゃいけないんだ。」
僕が鞄から地図を取り出すと白銀さんはしばらく地図を眺めていた。
「‥今からここへ行くの?」
「うん。」
「じゃあ僕も一緒についていくよ。」
「ええ?」
「どっちみち人を捜すには街へ行かなきゃ。こんな森の中じゃ灯君と僕しかいないだろ。」
「そうだよね‥じゃあ一緒に行こう。」
街へと向かって歩き出すと白銀さんが、そっと手を繋いできた。
暖かい人の手の温もり。
僕は数年ぶりの、その暖かさに、なんだか泣きたい様な笑いたい様な胸のとこが、ぎゅっとなって変な気持ちになった。
街までは、まだまだ歩かなきゃいけない。
普通なら初対面の人と、長い間一緒にいるのは緊張するけど何故だか白銀さんとは初めてあった気がしなかった。
心地よい沈黙。
白銀さんは僕の手をひきながら鼻歌を歌ってるみたいだった。
「灯君、疲れてないかい?」
灯君‥。
僕はそうやって人に名前を呼ばれるのも心配されるのも、本当に久しぶりで。
ふいに涙が出そうになったけど、我慢した。
「うん!だ、だいじょぶだよ。」
「そう‥疲れたらちゃんと言いなよ。」
「うん‥ありがとう‥。」
優しく僕を見つめる赤い瞳。
何もかも見透かされているような、不思議な瞳だった。
「白銀さんの瞳って‥どうして赤いの?」
「これはね‥大事な人がいなくなってしまって悲しくて泣いてばかりいたら、こんな色になっちゃったんだ‥。」
クスッと笑う白銀さんの表情とは裏腹に、なんだか切ない感情が伝わってきて僕は、さりげなく顔を伏せた。