出逢い。
「ふん!なんか言いたい事でもあるのかい?!」
「いえ‥ありません‥。」
「そう、それでお前に行ってきて欲しいところがあるんだよ。」
「え‥?」
「え、じゃない!返事は、はいだろ!」
「は‥はい!」
「この地図の通りに行けばいいからね‥。」
僕は地図を受け取り、街へと向かった。
家から街へは鬱蒼とした森を抜けて行かないといけない。
近所の子供達は1人で通らない様に言われていて、通る時はいつも父さんや母さんと一緒に通っていた。
でも僕は買い物や届け物で毎日の様に街へ行くけど、いつも1人。
不思議と、怖いと思った事は一度もなかった。
小さな動物や花々の甘い香り。
森には僕を怒る人や僕を嫌いな人がいなかったから。
「わぁ‥もう向日葵が咲いてるんだ‥!」
僕の背丈程もある、その花は太陽の様に存在を主張していた。
「綺麗だな‥。」
「‥君の方が綺麗だよ‥。」
「‥誰?」
森の中で、人に会う事は滅多に無い。
それなのに、どこかからふいに声が聞こえた。
辺りをきょろきょろと見回すと、少し離れた大木の横に優しく微笑みかける銀髪のお兄さんがいた。
なんだか大人っぽくも子供っぽくも見える不思議な印象の、だけど美しい人だった。
「初めまして。僕は白銀‥。君は?」
「あ‥ぼ、僕は灯‥じゃなくて赤ずきん‥。」
赤面しながら俯く僕に白銀さんは困った様に笑った。
「君の名前は灯君だよね?確かにその赤ずきんは、とても良く似合っているけど‥どうして灯って名乗らないの?」
「おばさん達に怒られるんだ‥召使いは名前なんかいらないって‥だから灯って言っちゃったのは内緒にしてね‥。」
僕が苦笑いしながら人差し指を口の前に当ててお願いしたら、白銀さんはなんだか怒った様な困った様な良く分からない表情のまま黙っていた。