痛みの記憶
部活中の突然の来客に、応答する翔。
戸を開けた途端に、思いもよらない攻撃。
その瞬間、記憶が飛んでしまった・・・。
熱い。じわじわとくる熱さ。顔が焼けているようだ・・・。
後頭部からの激痛で目を覚ました。
「痛ぇ!!何だぁ・・・!?」
顔の中心が痛い。痛いと言うよりも、熱い。顔に広がる灼熱。耐えられない痛み。
「顔に何か付いてる・・・?」
顔に触れると、確かに液状の何かが大量に付いているのがわかる。
「何だよ!!コレはぁ?!」
それは赤かった。血だ。顔面を覆っていた液状の物。それは、紛れもない翔の鼻から溢れ出た血だった。
視界に入るのは、
「天井・・・?」
どうやら寝ていたようだ。仰向けになって・・・。
身体を起こして辺りを見回す。
まず、最初に目につくのが見知らぬ男だ。身長は190・・・200cm? 明らかに俺との慎重さが30cmはある。スキンヘッド。筋骨隆々という言葉が当てはまる。垂れ下がったその腕は岩のような拳。握り固めた時の破壊力は想像できない。
男は入り口付近に立っていた。男との距離は5m程か。その足元には、
「先輩!?」
うつ伏せになった先輩がそこにいる。
男と目が合う。初めて口を開いた。
「よぉ!遅いお目覚めで!ゆっくり眠れましたか?」
その言葉を聞いた瞬間、殴りかかっていた。身長差をものともしなかった。怒りによる内なる力。
人間の神秘。
右の拳が男の左ほほに突っ込んだ。固い。俺の拳の方が砕けそうだ・・・!
「急に何やねんなぁ~?訳わからんねぇ、キミは。」
「てめぇが先に手ぇ出してきたんだろがァ!!なに知らばっくれてんだ!自分でやったこと忘れてんのか!!」
「・・・あぁ。ソレか。ココ貰いに来たのに邪魔しててんから、かるくひねってやったわ。」
「ココ・・・?」
「この部室は、うちら空手部が貰うねん。センセーに聞いてへんかな?」
何のことだ・・・?そんな事、顧問はほのめかしてもいないぞ?
「それだとしても、入ってくるなりの蹴りはなんだ!!」
「あいさつやがな。格闘技やるもの皆独自のあいさつがあるやろ?」
そうか。そういう事なら。
男との距離をとった。
間、2m。
構えた。柔道ではない構え。右足を前に出し、左を後ろ。左手は握るか握らないかの中間。ほほと胸につくギリギリ。右手は広げて左よりも前に出す。いつでもモノをつかめる体制。
「やるぞ。」
男は、キョトンとした顔で、
「何をやんねん」
決まっているだろう。
「喧嘩だよ。」
その時、その場の空気が変わった。
始めて見せる喧嘩。
秘めたる力を開放する。
本番の幕開けだ・・・!!




