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勇者、不在。〜俺の国だけ勇者がいないので、俺が暗躍する事にした。〜  作者: 片桐 りのん
対リロテット国編

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第5話 タタカイノ、ユクスエ。

 翌日、レティアーズ城。

 城内は騒乱に包まれていた。

 戦の準備は前日に終えているし、誰一人として勇者から逃げ出す者はいない。

 理由は偵察部隊からの報告の手紙にあった。

 その手紙は一行しかなかったが、それで伝わる明瞭な内容だった。


――勇者、死亡。


 吉報、これ以上ない吉報だ。

 リロテット国は勇者に依存する戦いを行っていた。

 兵器や兵士の武装は数十年前のものを使用している。

 何より兵力は帝国の方が何倍も多い。


 形成が逆転したのである。

 勝利への兆し。

 騎士団員たちは喜びを抑えきれず、溢れさせていた訳である。

 リアナは騎士団員へ手紙を読み終えた後、とある人を呼びに行く。

 彼女は城内を駆け上がる。

 この事を伝えなきゃ。

 部屋の扉を勢いよく開ける。

「副団長!」

 ステンドグラスに反射した光が床を照らす。

 目的の人物を探す。


 いた。

 相変わらず寝相が悪く、部屋の隅で毛布に包まり寝ていた。

「副団長、起きてください!」

 毛布を剥ぐ。

「んふぇぁ…」

 情けない声でハレトは鳴く。

 リアナはハレトの体を揺すってみる。

 ゆっくりと体を起こすハレト。

 彼は服を着直すと尋ねた。

「リアナ、どうしたの?」

 彼女は目を大きく見開き、

「嬉しい報告が来たんですよ!」

「勇者が死んだんです!!」

 彼女は喜びのあまり、ハレトの体を振り子の如く激しく揺さぶる。

 頭がカックンカックンなってる彼。

「それは良かったねぇ〜」

 微笑む彼。

「良いんだけど…僕、もう起きてるからやめてぇ…」

 次第に涙目になりながら答える彼であった。


 数分後、リアナによる揺さぶりが終わると、

「僕らは、これから軍と合流するのかい?」

と尋ねた。

「あぁ、それなんですけど」

 彼女はポケットから1通の手紙を取り出した。

 彼は受け取り、封を解く。

「帝国機関部かららしいんですけど」

 ハレトは文字を見た途端、

「あ、これ『団長』からだ」

 彼はそう言い切った。


 団長は現在、騎士団のトップとして帝王や上層部の護衛を行っている。

 見た事がある騎士団員は少なく、副団長であるハレトも年に数回会う程度である。

「団長からなんて来たんですか?」

 ハレトはある程度目を通すと、

「戦には行かなくていいってさ」

 彼は手紙を丁寧に折り畳みながら答える。

「え?」

「なんか…上層部は、完全に『軍』が『勇者』に勝利したっていう形にしたいみたい」

 すると、

「まるで私たち騎士団が邪魔みたいじゃないですか!」

 彼女は思わず声を荒げる。

「半分正解だと思う」

「国民の軍に対する不安不満を抑える目的だと思う」

 戦争に勝ったというより、軍が『勇者』を倒したという部分を強調したいらしい、とハレトは考える。

「軍自体は勇者を殺してないのに?」

「まぁ、プロパガンダってやつさ」

 彼は苦く笑う。

「なんですか、それ…」

 胸の中で安心と苛立ちが渦巻くリアナだった。


 ハレトは立ち上がり着替え始めた。

「どこか行くんですか?」

 リアナは尋ねる。

「んー?」

「昨日、手入れを頼んでた剣を受け取りに行ってくる」

 青髪をゴムで束ねながら答える。


 ハレトは扉を開ける直前、

「リアナ、これだけは覚えておいて」

 顔を見ずに彼女へ言う。

「『国は人だが、人は国ならず』」

 リアナはきっと不思議そうな顔をしているのだろう。

「それって…?」

「……」

「さぁ、なんだろうか」

 彼はとぼける。

 だが、

「分かる頃には、その心のわだかまりも消えてるよ」

 そう言い残し扉を閉めたのだった。


 手紙は落ち、床を埋める過去となる。




 それから12日後、リロテット国が滅んだという知らせが届いた。

 勇者死亡の翌日にあったナートバ高原での戦いでリロテット国軍は壊滅したという。

 その後に緊急徴兵した国民とともに、リロテット国の首都へ侵攻を開始。

 城は最後まで抵抗していたそうだが、抵抗虚しく陥落した。

 リロテット国王およびその一族は全員処刑、抵抗していた兵士や一部の貴族は奴隷とするらしい。

 近日中に、アスタリア帝国はリロテット国を吸収合併する予定だそうだ。


 勇者が死んだ事で勝った戦争だったが、結果として多くの国から良くも悪くも注目されてしまった。

 これからどうなるか分からないが、帝国は戦い続けるのだろう。

 帝国が滅ぶか、それとも世界を征服するまでか。

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