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勇者、不在。〜俺の国だけ勇者がいないので、俺が暗躍する事にした。〜  作者: 片桐 りのん
対リロテット国編

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第4話 ハンギャクノ、ジカン。

 ハレトは『勇者』のいるテントの前へ訪れた。

 ここ数日夜明けまで見張りをしているからなのか、彼らの顔は酷く疲れている様子だった。

 指揮官が目の前に来るまで、全く気付く気配が無かった。

 そんな彼らに、ラースとして話しかける。

――貴様ら、随分と疲れている面をしているではないか。

 声を聞いて見張りの兵士たちは怯えた表情で、

「も、申し訳ありません指揮官どの!」

 対してラースは甘い言葉を投げる。

――私は『勇者』と少し話がある、席を外せ。

――明日の朝まで来るな。

 眠気に脳を支配された兵士たちは喜んだ様子で自分のテントまで走って行った。


 遂に『勇者』と対面する時が来た。

 さぁ、ケリをつけに行こうか。




 テントに中を覗ける程度の穴を開ける。

 剣と鎧は近くの椅子に立て掛けてあった。

 肝心の『勇者』は――


 立っている、しかも上裸。

 何があった?

 聞き耳を立てる。

「いい加減、諦めなよぉ」

 『勇者』が言う。

「いや…来ないで…」

 若い女の声?

 『勇者』の奥を見る。

 そこには、汚れている薄い服を着た少女。

 首輪を付けており、近くの椅子に鎖を繋がれていた。

 ハレト、刹那の思考。


 侮蔑が、憎悪が、憤怒が脳を埋め尽くす。

 彼は様々な感情を殺し、行動に移る。

 殺すべき『畜生』に向けて。


「ぼく、やさしいからさぁ、」

「大人しく抱かれ――」

 畜生がそう言って襲おうとした瞬間だった。

――勇者様。

 悪夢の時間を切り裂く一声。

「なにぃ、今いい所なのにさぁ…」

 畜生は、ブヒュブヒュと息を荒くする。

――あの、急用のお話が。

 優しくもはっきりとした声で言う。

「早く要件を言ってよぉ」

 畜生は呆れた様子だった。

 それに対し手招きしながら、

――少し耳打ちを。

「何なの、もぉ〜」

 畜生は疑う様子もなく、苛立ちを表しながら近づいていった。

 その目は少女の方を見ている。

 少女は怯え、椅子の後ろに身を隠していた。

 ハレトは『勇者』の耳に左手を当て、

 一言。




――「堕ちろ、腐れ外道が。」


 瞬きする間も無かった。

 宙を飛ぶ『勇者』の首。

 血が滴る右手の剣。

 力なく地面に倒れ落ちる胴体。


 それはアスタリア帝国を苦しめていた豚の、呆気ない最期だった。

 ハレトは高らかに笑う。

 それは『勇者』の末路に対してか、無念を残し死んでいった鎮魂の意なのか、今から始まる反乱の狼煙か。

 その答えはハレト自身も分からない。

 ただただ、清々しい気分だった。


 剣についた血をテーブルクロスで拭く。

 ハレトは剣を鞘に戻して、テントから出ようとした。

「ま…待って」

 ハレトは忘れていた、少女の存在を。

 彼女は椅子を伝って立ち上がり、ハレトの方へ近づいてくる。

 しかし、鎖によって椅子の方向に引き戻される。

 ハレトは考える。

――ここで生かしておいて、何か利益があるのか…?

――俺の行動を他の奴らにいう可能性は…?

 思考が脳内を巡る。

 少女は、ハレトへ縋ろうと手を伸ばす。

 神に救いを求める子供のように。


「おねがい、助けて…!」


 思い出す。

 なぜ、『勇者』を殺そうと思ったのか。

 『勇者』によって苦しめられている人を助ける為ではないのか?

 この少女も救うべき者ではないのか…?

 なら、するべき事は決まってる。


 ハレトは静かに少女へ近づいていく。

 その手には剣が握られていた。

 少女は、手を組み目を閉じる。

 まるで、己の命運を彼に委ねるように。

 剣を頭上まで上げ、振り下ろす。




 私は目を開ける。

 首輪が床に落ちていた。

 見上げると、手を差し伸べる青髪の少年。

 表情はとても穏やかで。

 心を照らす一筋の光のようで。

 彼は優しく微笑み、そして言った。


「さぁ、行こう!」


 迷わず彼の手を掴む。

 少し冷たい彼の手、暖かくなる私の心。

 もう誰にも縛られない。

――彼のために生きる。

 そう心に決めた。


 箱庭から2羽の鳥が飛び立った。

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