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オール電化マン現る

Oh!オール電化!

夜のとばりが降りた街に、奇妙な二つの影が忍び寄っていた。一方は、背を丸めて歩く奇妙な男。男が喉を鳴らすたび、「キョーッ、キョッ、キョッ、キョッ」と不気味な笑い声が闇に響く。


もう一方は、男の横を忙しなく行ったり来たりする一匹の犬。舌をだらりと垂らし、激しい息遣いで「けーけー、けーけー」と鳴き続けている。パンティングと言い、汗をかけない犬などの体温調節法だ。


男の名は「キョキョキョのキョー太郎」、犬の名は「ケケケのケー太郎」。彼らは、世の中に電気製品が増えすぎたことに憤る、自称「アナログ主義者」だ。


彼らが次に狙いを定めたのは、この街に新しく引っ越してきた男、「オール電化マン」だった。 全身をサイボーグ化。要するにオール電化している。


ピンポーン。


キョー太郎がオール電化マンの家のインターホンを押す。


「キョッ、キョッ、キョッ、キョッ。オール電化マンはいるかい?」


ドアが開くと、そこに立っていたのは、全身をコードとコンセントで飾り立てた奇妙な男。その額には、「IH」と大きく書かれている。


「私がオール電化マンだ。何の用だね?」


「キョーッ、キョッ、キョッ、キョッ。お前のその電気にまみれた生活、やめさせに来たのさ!」


そう叫ぶと、キョー太郎はケケケのケー太郎と共に、オール電化マンに襲いかかった。


「はっはっは!この私にケンカを売るとはいい度胸だ。まずはウォーミングアップだ!」

オール電化マンは、腰に差していたフライパンを手に取り、額の「IH」マークに当てると、瞬く間に赤く熱し始めた。


「くらえ!IHアタック!」


熱いフライパンが、キョー太郎の顔めがけて振り下ろされる。


キョー太郎はひらりと身をかわし、ケケケのケー太郎はオール電化マンの足元を走り回り、彼を撹乱した。


「キョーッ、キョッ、キョッ、キョッ!その程度の攻撃でこの俺がやられるとでも思ったか!」


キョー太郎の挑発に、オール電化マンは顔をゆがませた。


「舐めるな!ここからは本気だ!」


オール電化マンは両手を前に突き出す。彼の背後にある電子レンジが、ゴウンという不気味な音を立てて起動した。


「マイクロ波攻撃!」


目に見えない強力な電磁波が、キョー太郎とケー太郎に襲いかかる。

キョー太郎は熱さと痺れに苦しみ、ケー太郎は「キャイン」と悲鳴をあげながら、その場にうずくまってしまった。


「これで終わりか?いや、まだだ」 オール電化マンはさらに攻撃を続けた。右手にミキサー、左手にはアース配線が電気過多で光る。


「ミキサーハリケーン!」


手のミキサー刃が高速で回転し、キョー太郎とケー太郎の体をかき混ぜようと襲いかかる。


さらに、アース配線から放たれた電気が、二人の体にビリビリと衝撃を与えた。 キョー太郎は歯を食いしばり、最後の力を振り絞った。


「キョーッ、キョッ、キョッ、キョッ!オール電化マン、お前は便利な電気に頼りすぎだ!そのせいで、人としての温かみを忘れている!」


キョー太郎の言葉に、オール電化マンは一瞬動きを止めた。その隙を見逃さず、キョー太郎はケー太郎を抱きかかえ、その場から逃げ出した。


「待て!キョー太郎!ケー太郎!」


オール電化マンの叫びが、夜の闇にむなしく響く。 キョー太郎とケー太郎は、二度とオール電化マンの前に姿を現すことはなかった。

しかし、それ以来、オール電化マンは電子レンジやIHコンロを使うたびに、キョー太郎の不気味な笑い声とケー太郎の切ない息遣いが聞こえるような気がして、ふと手を止めるようになったという。 便利な電気と、忘れ去られたアナログの温かさ。その二つを思い出したオール電化マンであった。

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