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水難の相

作者: 柴犬


 

「水難の相ですね」

「水難の相ですか」

「はい」



 そう僕に言ったのは見知らぬ自称怪しい占い師だった。

 多村市にある山に祭られた神社の一つ。

 その麓の駐車場横で占い師に会った。



「御兄さん怪しい占い師の占いしませんか?」


 等と言われた時は度肝を抜かれた。

 それは些細な事だ直ぐに理解した。



 その占い師を見れば。



 小さな白い布を被せた机の上でタロットカードを見る占い師。

 カンテラに照らされたカードを見ている姿を観察した。


 年齢は三十。


 髪の色は分からない。

 目は黒で肌色は黄色。

 典型的な日本人だと思う。

 上下ジャージ姿。



 頭部に紙袋をしていた。


 紙袋を。



 やべえ。


 怪しすぎる。


「……」


 自称怪しい占い師が頭に被った紙袋を取る。

 


 ぐっと。


 ぐ~~。



「……」



 自称怪しい占い師は被った紙袋を取られないようにする。


 ぐううううっ!



 静かな攻防。

 僕と占い師は紙袋を取り合う。


 しかしこの紙袋よく破れないな?



「「……」」



 疲れたので僕ら二人息を荒くする。


[さいなら」


 ムカついたんで帰ろうとした。

 

「待ってええええっ! 占いの代金を下さいっ!」

「見るからに詐欺師だろ? 払う金などない」

「もう一週間何も食べてないんですっ!」

「知るか」

「二千円……いやっ! 千円で良いんですっ!」

「断る」

「人でなしいいいいいいっ!」

「人聞きの悪い事を言うなっ!」

「お巡りさん此の人占いの代金を払いませんっ!」

「いい加減にしろっ!」

「では……こうしましよう」

「あん?」

「見料の半分は占いの行為の代金で」

「払わない」

「もう半分は当たった時に下さい」

「払うか」

「もし当たらなかったら無料ししますから」

「はらわん」


 ふらりと倒れる占い師。



 その場で土下座する


 

「百円で良いですので下さい」

「……」

 



 財布から百円を出すと遠くに投げる。

 それを無言で拾おうと全力疾走する占い師。



 このスキに逃げるか。



「食パンが食えるううううっ!」



 ……。




 さて。

 占い師が一応占ってくれたので教えてくれたことを思い出すか。


 水難の相。


 水に関する災難に遭うことを示しているものを意味し。

 災難。

 例えば、津波・大雨・洪水・溺死・沈没だろうか。


 水難の相が出ているからといって必ず水難に遭うというわけではない。

 自分で対策をしたり、水難除けの神社に行ってお祓いしてもらうといった方法がるらしい。


 ばかばかしいが。




 数日後。



 それは有る時の事だ。


 バイクで職安に行った時に転倒し膝を怪我した。

 雨上がりのマンホールで滑って怪我をしたのだ。



 ゴリッと。



 酷く痛かったが国民保険が無くそのまま我慢した。


 無職で貯金が少なく保険に払う金が勿体ないからだ。



 暫くすれば治るだろうと思い其のままでいた。

 膝の部分が内出血してる。

 何か酷く痛い。

 不味いな。



 一ヶ月後。




 風呂場で転んだ。


 膝が痛い。

 というか変な形に。


 あれ?



 風呂場?


 風呂。



 まさか水難はこれか?



 その日の夜神社に行った。


 麓の駐車場横で占い師に会うために。

 悔しいが占いが当たったので。



 目的の占い師に会うと事の顛末を話した。


「やはり当たりましたか」


 僕から千九百円を受け取ると頷く占い師。


「ああ~~風呂場で転んでしまい大変な思いをしたよ」

「ああ~~いや」

「何だ?」

「水難の相はそれです」


 占い師は僕の膝を指さす。


「膝に水が溜まってたので水難の相と言ってたんです」






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― 新着の感想 ―
>「膝に水が溜まってたので水難の相と言ってたんです」 うーん少し残念! 意図は分かる。実は漠然とした『水難の層』より具体的に『膝の水溜まりを予言か推測』していたという事の方がゾッとするのは。 ただ何…
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