Slaggingルガット
郊外にあるアウトレットモール。そこに到着した、村沢 花音とロキシリアとイデュイア。
駐車場からエレベーターへと向かう途中に、嫌な気配を感じるロキシリアとイデュイア。
イデュイアは我慢できないような表情でロキシリアに何かを伝えた・・・。
アウトレットモールに到着した三人は一階にある屋外の広場へと向かった。
広い空間にはたくさんのキッチンカーが並んでいる。
トルコアイスの売り場の前では、アイスをなかなか渡さないムーヴを披露している。
そのムーヴを見ている人たちも、微笑ましくその光景を見ていた。
村沢家の三人はその反対側へ行きケバブのキッチンカーへと向かった。
「ねえ母さん」
「なんですか?」
「俺、ケバブより醤油がいい。あそこの海鮮丼」
「はいはい。それじゃロキくんはそっちね? イアちゃんはケバブでいい?」
「そうね・・・。私は隣の、台湾風 特盛り唐揚げ炒飯が食べたいわ」
「オイオイ! それでいいのか女子!?」
「あの程度でしたら完食できますわよ? 母さんのストマックは情けないのね。ふふ・・・」
「私だって楽勝よ? なんなら勝負する?」
あぁ・・・。また始まった・・・。
「二人とも、自分が好きなのを食べなよ。母さんもイアの挑発に乗らないで。イアも母さんと仲良くね?」
「だって母さん、小さくて子供みたいなんだもん。可愛くてツイからかっちゃうのよね」
花音はイアに可愛いと言われ、満更でもない様子だ。
その後、それぞれに昼食を買い、テーブルに着く三人。
イアの目の前にある、台湾風 特盛り唐揚げ炒飯は一際、目立っていた。
「いただきまーす!」
三人で声を合わせ、食べ始める。
「いつも思うけど、イアちゃんもロキくんも食べ方が綺麗よね。海外の人ってガヤガヤ話しながら食べてるイメージなんだけど」
「それはフェンダー家とエピフォン家は貴族だからですわ。と言っても今はルーナニアの領地になったしまったから、今では平民と同じだけど」
「貴族って?」
「先々代のトランセルヴェニア王の娘が私の祖母。その弟がロキの祖父ですわ」
「えっと・・・」
母さんは空を見上げて考えている。
「Duke。俺たちは公爵家の息子と娘だよ」
「でもね、ロキは男三人の末っ子だから話し方がこんな感じなのよ」
「イアだって末っ子じゃん・・・」
もしかして、この子達にとって我が家は大丈夫かしら? もしかして家政婦やメイドとかと暮らしていたのかしら・・・。
「母さん? 一応言っておくけど、家政婦とかは雇っていなかったよ。トランセルヴェニアは五十年以上前に無くなっているからね。ルーナニアになってからは俺たちも平民と同じ。母さんがご飯を作ったり、父さんも領主として働いていたよ」
「そうなの?」
「日本だって今は領主制じゃないでしょ?」
「確かにそうね・・・」
そんな話をしていると、隣のテーブルに座る男性から話しかけられた。
「すみません、村沢くんだよね」
「はい、そうですが?」
ずいぶん若そうだな。俺と同い年くらいかな?
「突然でゴメン。俺、村沢くんの隣のクラスの内本 潔。こっちは妹の葉」
「そうなの? ここら辺に住んでいるの?」
「違う違う。葉がここに来たいって言うから、家族で来たんだ。親は二人で買い物をしているよ。家は学校の近く、泉区だよ」
「俺も泉区だよ。ご近所さんだったんだね」
ロキシリアと内本が話をしている横で、花音・イデュイア・内本 葉は三竦み状態で見つめ合っている。
「葉さん、初めまして。あなたのお兄さんの同級生で村沢 ロキシリア・フェンダーです。こちらは姉の村沢 イデュイア・エピフォン。そして母の花音です」
そう言って俺は葉さんに手を差し出した。
葉さんが俺と握手をしようとしたその時、俺の手を跳ね除け、母さんが葉さんの手を握った。
「初めまして葉ちゃんって言うの? どんな字を書くの?」
「は? えっ? えっと、葉っぱの葉です・・・」
「そう、可愛い名前ね」
母さんとの話が終わり、俺が手を差し出そうとした時、今度はイアが俺の手を跳ね除け、葉さんの手を握った。
「初めまして、私はイデュイアですわ。日本人には言いづらいでしょうから、イアでいいわ」
「は、はい。イアさん、私も葉と呼んでください」
「オッケー葉! それじゃ急ぐんで、私たちはこれで。バーイ!」
「バ、バーイ・・・」
葉さんは呆気に取られたのか、小声で返事をした。
「ゴメン、キーヨ! また学校で!」
花音とイデュイアに手を引かれ、その場を去る村沢ファミリー。
足早に歩くイデュイアは花音に気が付かれないように、ロキシリアに小声で話す。
「ロキ、一番おくのテーブルに居たわね」
「うん」
「あの家族の車のナンバーを調べて報告よ」
「近かったらいいなぁ・・・」