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月光風靡 ヤミノシズク  作者: 青紙 ノエ
Sanguisorba 期待
7/13

憂虞な心アビス

 

 村沢 (りつ)が働く国立医療研究センター。

 今日の律は遅番の為、十三時からの昼休憩となっていた。


 食堂の隅で携帯を見ながら、のんびりと過ごす律。


 ロキくん、勉強とかみんなについて行けているのかな・・・。友達とかできたのかな・・・。イアちゃん、ロキくんにベッタリだから、クラスメイトとか引いちゃうんじゃないかな・・・。イアちゃん・・・ったく、羨ましすぎる!


 律は人気の少ない食堂で一人、ロキに対して気持ち悪いことを考えていた。

 その時、律の携帯に着信が入る。


 ロキくん!?

 いやだぁ・・・。何だろう・・・。

 こんな時間に。


 律は着信に反応せず、わざと10コール程待つ。そして、あたかも忙しかったように電話に出た。


「ロキくん? 律だよ」

「やぁ律。今、お話しできる?」

「大丈夫よ」

 ロキくんならいつでも大丈夫だけどね。

「今日さ、覚醒したルガットを見つけたよ」

「へぇ・・・。はぁ!?」


 律が大声を出した。


「律、声がでかいよ? 耳が痛いよ」

「ごめん。で? どこで見つけたの?」

「高校だよ。多分、組織があると思うから帰りにヤっとくね」


 ブビ ツーーー


 自分が言いたいことを言ったら電話を切るんかーい!


「ヤっとくって・・・まったく、あの子は・・・」


 もう・・・ウエに報告しなくちゃ。


 律は自分の部屋に戻り、上層部に暗号を送った。




   〜・〜・〜・〜




 放課後、学園長室。


「聞きましたよ。イデュイアさんのクラスの前沢さんですか・・・」

「昨夜、行方不明の人がいたはずですわ。人を食べた後の匂いがプンプンしたもの」

 イデュイアが呆れたように言う。

「あれは一人や二人じゃないよ。結構な人数だよ。コムーネがあるよ。昨日の今日だから今夜はただの集会だね。全員やっとくね」


「はぁ・・・。この学園にルガットがいたなんて・・・」

 二人からの報告に学園長は深いため息をつきながら頭を抱えていた。


「それではお二人さん。ルガットたちの集会場所がわかったら、GPS信号をお願いしますね」


「はい」

「はーい」




   〜・〜・〜・〜


 


 村沢家。


「母さん、夕飯後にちょっと出かけてくるね」

「どこに行くのロキ」

「イアとゲームをするんだ」

「ゲームって? ゲーセン?」


 花音が不安そうな顔をしている。


「私とロキで、狩のゲーム」


 イデュイアの一言で花音は察した。

 ルガットだ。

 この子たちは今夜、ルガットを殺しに行くんだ。


 母国で死にかけたのに・・・。

 

「ちゃんと帰ってくるのよ? 約束よ?」


「はい」

「はーい」




   〜・〜・〜・〜




 夜半前、とある商業施設。


 普段はイベントなどを行う施設だろう。昨夜、拉致された食されていない人間が数人いる。

 およそ五十体ほどのルガットがその人間たちを囲んでいる。


 三下であろうルガットが人間の女の髪を掴んだ。

 声にならない悲鳴をあげる人間の女。

 その女の悲鳴を聞き、ゲラゲラ笑うルガットたち。


 気配を消し、天上の梁からそれを見るロキシリアとイデュイア。

「楽しそうね・・・」

「ヤルなら一気にやればいいのに・・・」

「それもどうかと思うわよ?」

 イデュイアは鼻で笑いながら言う。

「あ、居たよ。イアのお友達」

 ロキシリアはバカにしたように言う。

「友達じゃないわよ!」

 ロキシリアは頭を軽く叩かれた。

「あ、始まるみたいだね」


 ルガットの一人が拡声器を持って出てきた。


「何あのトランペットみたいなの。ウケるんだけど!」

「シッ!」

 ロキシリアは今度はグーで叩かれた。


「娘の通う学校で犬を発見した! 男と女だ! みんな! 犬は美味いらしいぞ!」


 歓喜の雄叫びが場内に響き渡る。


「ヤダァ。美味しいんだって」

「イアは美味しそう」

 ロキシリアはそう言ってイデュイアの頬をペロっと舐めた。

「もぉ、バカ」


 イデュイアがそう言った途端にロキシリアは急降下を始めた。


 着地と同時に持っていたミスリルの短剣でルガットの首を跳ね飛ばした。

 ゴロゴロと転がるその顔は楽しそうな顔をしている。


「楽しく死ねてよかったね」


 次に人間の女の髪を持つルガットの首を落とす。

 首を落とされ、人間の女は解放された。


 その後もロキシリアは次々とルガットの首を切り落とす。

 拡声器を持つルガットが大声で何かを叫んでいる。

 声が大き過ぎるのか、拡声器はハウリングを起こし、言葉になっていない。

 その間にも次々と倒れていくルガット。


 飛び散る鮮血・・・。

 ヒュンッと音がするたびに転がっていくルガットの頭。

 ボトッ、ボトッと首の落ちる音は囚われた人間たちにまで恐怖を与えた。

 人間たちはその場で座り込み、ルガットの返り血を浴びて、驚愕の表情をしている。

 阿鼻叫喚という言葉が日本にはあるそうだが、まったく日本人はうまいことを言うものだ。


 イデュイアはというと、拡声器を持つルガットの足を切り落としていた。

 その横で座り込み、後退りする少女。前沢 朱莉(あかり)だ。


「殺さないで・・・」

 震える声で懇願する前沢。


「オマエら、日本の犬になったのか? 本当の犬だな! あははは!」

 拡声器を持つ男が息巻いている。


「イア、こっちは終わったよ」

「ご苦労様」

「あ、前沢じゃん。ハハッ! お漏らししてるじゃん? ダッセーな!」


「ごめんなさい・・・」

 前沢が震えながら謝っている。

 その間にもイアは拡声器のルガットの足と腕を関節ごとに切り落としている。

 イアのミスリルの短剣がヒュンっと鳴るたびに体の面積を減らしていく拡声器を持つルガット


「ねえ前沢さん。コイツどこまで小さくすれば死ぬかしら?」

「もうやめて! この人お父さんなの!」

 前沢がイデュイアに懇願する。


「前沢、ルガットって人間の脚から引きちぎって食べていくんだろ?」

 ロキシリアは前沢の足首を切り落とした。

 

 声にならない悲痛の叫びが場内に響き渡る。


「ごめんなさい・・・」


 次にヒュンっと鳴ると前沢の右腕が床に落ちた。

 叫び声が響き渡る。

 拡声器ルガットはというと、イデュイアに首を落とされたようだ。

 おそらく飽きてしまったのだろう・・・。


「ねえ前沢さん。あなたに聞きたいことがあるの」

「ごめんなさい・・・」

 前沢の意識は飛ぶ寸前だ。


「ごめんなさいじゃないのよ? アナタに聞きたいことがあるのよ?」

「ごめんなさい・・・」


「イア、もういい? 飽きたんだけど・・・」

「そうね・・・」


 ロキシリアが前沢の首を切り落とした。

 噴き出る鮮血がロキシリアに降りかかる。


「もう、ロキったらルガットの血で真っ赤じゃない・・・」

「イアは全然ヤってないから血を浴びてないんだよ!」

「フフッ。別にいいじゃない? ロキは真っ赤なトマトみたいで可愛いわよ」


 

 その後、公安警察が突入してきた。

 囚われた人間を病院に搬送し、商業施設の清掃が始まる。


 ロキシリアとイデュイアは腫れ物を扱うように護送車で自宅まで搬送をされた。







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