表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月光風靡 ヤミノシズク  作者: 青紙 ノエ
Sanguisorba 期待
5/13

狼人族の証タトゥ


 FLOS高等学習院への挨拶が終わった二日後。

 ロキシリアとイデュイアは初登校を始める。


 日本では高校での編入生や転入生は、ほぼ無いに等しい中に現れた二人。

 しかも彼之森之国よりの外国人という事もあり、目立つことは間違いなさそうだ・・・。



 FLOS高等学習院、学園長室。


「初めまして、ロキシリアくんのクラスを担任している片桐だ。宜しくな」

「初めまして、こちらこそ宜しくです」


「初めまして、イデュイアさんのクラス担任の森です。宜しくね」

「初めまして」


 イデュイアは少し不機嫌なようだ。

 実は今朝、ロキシリアが寝坊をしたことが原因のようである。


「それではお二人さん。担任と一緒にクラスへと向かって下さいね。それから放課後は帰宅前に必ずここへ顔を出して下さい。これは私の日本国の管理下としての職務なので協力して下さいね?」

 

「はい」

 ロキシリアとイデュイアは声を揃えて返事をした。


 そして学園長室を後にした二人はお互いの教室へと向かう・・・。



「なあ村沢、お前の母親って村沢 花音だろ? 俺と村沢はこの高校の同級生でさ、アイツは相変わらず小さくて、ギャーギャー騒いでいるのか?」

「アハハハハ! 全くその通りですよ! 今朝もイデュイアと口喧嘩をしてましたね!」

「やっぱりそうか! アイツも黙っていれば淑女なんだけどな、アイツは一言一言が辛辣だからな・・・」

「片桐先生、母さんをわかってますね。あの人、俺とイデュイアの前で葵と喧嘩してそのまま離婚しましたからね」

「はぁ!? 葵って望月 葵か?」

「そうかぁ。あの二人が結婚したとは・・・」

「いやいや、離婚しましたよ?」

「あっあぁ・・・」


 一方、イデュイアは・・・。


「村沢さん、律さんのお姉さんの家で暮らしているんでしょ?」

「ええ、そうですわね」

「その、律先輩とは会うことってある?」

「森先生は律の後輩でいらっしゃるの?」

「ええ。実は私もこの高校の卒業生でね、律先輩とは同じバスケットボール部にいたの。律先輩はカッコ良かったのよ」

「うふふ。そうでしたの? 今の律は残念な変態女子ですよ?」

「えっ? 変態女子?」

「用もないのに家に来て、ロキの寝顔をコソコソとのぞいたり、ロキのシャワー中をスリガラス越しにジーッと見ている変態さんですわよ?」

「はぁ!? まさか!?」

「残念ながら、そのまさかですわ」


 森は立ち止まり、放心状態となってしまった・・・。




   〜・〜・〜・〜




 休み時間。


「なあ村沢、日本語がめちゃくちゃ上手いな。勉強を頑張ったんだな」

 話しかけてきたのはロキシリアの前に座る、宮部(みやべ) 順一(じゅんいち)

「ありがとう。俺も姉さんも色々な国に行くから、そこそこ話せるように教育は受けていたんだ。でも、日本の地理と歴史は世界で一番難しいよ。特に地名だね。漢字が難しすぎるよ」

「あはは。漢字は日本人でも難しいぜ。漢字の検定試験があるくらいだからね」

「俺に漢字検定試験は無理だな・・・」


「初めまして、村沢くん。私は浜田(はまだ) 波瑠(はる)、宜しくね」

「ハル? 綺麗な名前だね。素敵です。俺は村沢 ロキシリア・フェンダー。宜しくね」

「ィヤだぁ。綺麗なんて初めて言われたんだけど! 嬉しいんだけど!」


「ところで、村沢は兄弟はいるの?」

「俺はフェンダー家の三男。この前の戦で、両親と兄さんたちは死んだから、今は俺が家督を継いでいる」

「ご、ごめん! 知らなかったとはいえ、申し訳ないことを聞いた・・・」

「順一、気にしないで。死んだのは俺の家族だけじゃないよ。今はトランセルヴェニアの血筋は絶滅危惧種だよ」


「ねぇ、お姉さんが二年生にいるんでしょ? どんな人?」

 波瑠が興味津々な表情をして聞いてきた。

「イデュイア・エピフォン。フェンダー家の親族で俺の大事な人だよ。綺麗な人だけど、ちょっと残念なところもあるかな」

「本当のお姉さんじゃないの?」

「フェンダー家とエピフォン家はトランセルヴェニア王の血筋でね、お互いに家族みたいなものだよ。公爵家って意味はわかるかな?」


「ヒョー! 貴族かよ!?」

 

 順一と波留は ヒョー! と言うところから声を揃えた。


「今の時代に爵位なんてないよ。今はルーナニア領だからね」

 まさか彼之森之国(トランセルヴェニア)が戦闘民族とか、リュカスの民が狼人族なんて言えないよな・・・。


「ねえ村沢くん。私は原野(はらの) 美梨(みり)。クラス委員長だよ」

「初めまして」

「その、言いづらいんだけど。手首から模様が見えるけど・・・」


 どうやら狼人族のタトゥに気がついたみたいだ。


「あぁ・・・これは部族の証で、出生と同時に彫られるんだ。左手首から左胸まで彫られている。なるべく目に付かないようにするよ。今日は許してもらえるかな?」

「ご、ごめん。私ったら興味本位で・・・本当にごめんなさい・・・」


 何? 

 そんな恐縮することか?

 

 

 その後、原野クラス委員長の計らいで、ロキシリアの故郷、家族のことは聞かない事にしようとなったようだ。

 

 いや、小声で結託をされても聞こえていますよー?

 狼人族の聴覚を舐めるなっての!

 


  








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ