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月光風靡 ヤミノシズク  作者: 青紙 ノエ
Freesia refracta 始まり
2/13

親愛姉イデュイア

 俺は望月 ロキシリアという名前らしい。

 この名で呼ばれてから、朧げながら記憶が蘇りつつある。

 

 ところで俺の服はどこにいってしまったのだろう・・・。

 だってさ。

 村沢がね。

 俺のロマンをチラチラ見るんだよね・・・。





 ベッドの上に散らかった俺の服。

 ちなみにだが、パンツはビリビリに破けている。

 ○ンチが漏れそうだったのか?

 とりあえず俺はシャワールームに行き、血を洗い流してから服を着ることにした。


「あの、望月さん。シャワーををされている間に、私は下着を買って来ます」

「お手数ですが、よろしくお願い致します」


 村沢は手に持った安っぽいブリーフケースを窓際の棚に置き、部屋を後にした。

 俺って望月だっけ?

 俺はシャワールームに入り、身体中に付着した自分の血を洗い流す。

 そして、じわじわと記憶が蘇る。


 ロキシリア・フェンダー


 そうだ! これが俺の名前だ!

 父さんと母さんは・・・。ルガットからイデュイアを守るため・・・にって?

 そうだ! イデュイアは?

 

 俺は濡れた体のままシャワールームから飛び出した。


「ちょっとロキ!」


 部屋には村沢と見たことのある女。その女が俺をロキと呼ぶ。


 イデュイアだ!


「会いたかったです。生きていたのですね? イデュイア姉さん!」


 俺は裸のままイデュイアに抱きついた。


「やめろロキ! 離れろバカ! 服ぐらい着ないか!」


「姉さん!」

 尚も抱き付く俺に、姉さんは俺の横腹にワンパンを入れた。


「この変態が!」

「ヴッ!」

 うずくまる俺。

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・



 村沢が買ってきた下着と服を着た俺。

 部屋の片隅にあった折り畳まれたテーブルを開き、俺は村沢に今の状況を説明してもらうことになった。


「村沢さんからの説明の前に、まずはロキの気持ち悪い敬語をやめてもらいましょう。いいわよね?」

「ええ。重鎮との会談以外では結構です」

 

 あれ? 村沢が普通に話せているぞ?


「それじゃロキ。ステータスの言語で日本語の標準を選んで」

「かしこまりました」


 ステータス・オープンからの言語 ー 標準っと。 ん? Y W・YM?


「YW・YMって何?」

「ヤングウィメンとヤングマン。ロキの年齢で表示されるからね。間違ってもYW・・・」

「ねぇ、イデュイアお姉様!」


 パコーン!

 冗談のつもりで設定をYWにしたところ、俺は中身の入ったペットボトルで殴られた。


「さっさとやれ!」

「へーい・・・」



 気持ち悪い丁寧語から、言語ー標準 YMとなった俺。

 やっと村沢からの説明が始まった。


「まずは私の自己紹介を致します。私は村沢 (りつ)。この施設の衛生看護師と文官を任されてます」


 最初のオドオドとした感じが全くなくなっているな。てか、村沢って家名だったのか。


「おそらくですが、望月・・・えっとロキシリアさんも記憶が戻って来ていると思います。いかがですか?」

「うん。戻ってるよ」


 16歳らしい話し方にイデュイアと律は微笑んでいる。


「そして残念ですが、ロキシリアさんのご両親は・・・」

「うん・・・。ルガットの爪が首を・・・見えていたよ・・・」


 俺がそこまで言うと、イデュイアが俺の頭を抱きしめてくれた。


「それで、イデュイアさんとロキシリアさんは日本で暮らしてもらうことになります。残念ですが、彼之森之国(トランセルヴェニア)はルガットに征服されました」


「律、聞いてもいい?」

「私たちを望月と呼ぶのは?」


 そうそう、それそれ!

 ナイスだイデュイア。


「あなたたち二人は私の姉夫婦が引き取ることになったの。二人とも、まだ未成年でしょ? 国からの援助もあるから気にしないで生活をしてね」


 俺とイデュイアは顔を見合わせた。


「ああ、それとね。ここからが大事な話。あなたたち二人は全世界で初めて転移のワープゲートで彼之森之国(トランセルヴェニア)から来たの。記憶の混濁はそのせい。だからこの施設にはこれからも何回か来てもらうことになるけど」

「私たちはまたワープゲートに入るの?」

「違う違う! 経過診察よ。ただ、あなた達はリュコスの民だから、身体能力の検査はさせてね?」


 不安そうに聞くイデュイアに対して、律は優しく受け答えしてくれている。

 

「ねえ律。話は変わるけど何で律は最初、オドオドしていたの?」

 俺はずっと聞きたかった事を律に問う。


「だって・・・あなた・・・裸だったじゃない・・・」

 律は顔を背けながら言った。

「ロキ・・・最低ね・・・」


 イデュイアはそう言って、呆れたように長いため息を吐いた。







 

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