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落語【声劇台本書き起こし】

落語声劇「将棋の殿様」

作者: 霧夜シオン
掲載日:2024/12/20


落語声劇「将棋(しょうぎ)の殿様」


台本化:霧夜(きりや)シオン@吟囁亭喃咄(ぎんじょうていなんとつ)


所要時間:約40分


必要演者数:3名

      (0:0:3)

      (3:0:0)【性別準拠人数比率】

      (2:1:0)

      (1:2:0)

      (0:3:0)


※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。

よって性別は全て不問とさせていただきます。

(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)


※当台本は元となった落語を声劇として成立させるために大筋は元の作品

 に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。

 それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。



●登場人物


殿様:殿様シリーズの落語でおなじみ、周りを我がままで振り回す困った

   殿様。


三太夫(さんだゆう):大名家(だいみょうけ)の家老(かろう)。フルネームは田中三太夫(たなかさんだゆう)。

    どこの家にもいる、口うるさい老人である。

    殿様の所業(しょぎょう)を聞き、隠居(いんきょ)の身でありながら実力をもって殿様を

    諫(いさ)めようと将棋(しょうぎ)の勝負を挑む。


家来1:名もない殿様の家来その1。

    しかしセリフ数は殿様と並んで多い。

    如何様(いかさま)ばっかりする殿様のせいで散々な目に。


家来2:名もない殿様の家来その2。

    家来1・殿様に次いでセリフが多い。

    如何様(いかさま)ばっかりする殿様のせいで散々な目に。


語り:雰囲気を大事に。




●配役例


殿様:

家来1・三太夫・枕:

家来2・語り:




※枕はどちらかが適宜(てきぎ)兼(か)ねてください。

※SEを使える場合は、台詞に合わせて将棋の駒を打つSEを入れると

 良いかと思います。



枕:みなさんは、小さい頃にゲームや遊びをしていて、自分が不利になっ

  たり負けそうになると、突然作った自分ルールを言いだして自分の

  勝ちにしてしまう、そんな相手に出会ったことはありませんか?

  江戸の昔、戦国が終わり太平の御代(みよ)となったこの時代、お大名(だいみょう)などと

  いうものも、ずいぶんわがままなものでございました。

  その当時の上下関係は絶対であったため、殿様の言うことは

  ご無理ごもっとも、白いものを黒いものだと決めつけられても、

  さようでございますと、こう言わねばならないような時代でした。

  戦(いくさ)の無い世の中ともなりますと、領地の経営は家来(けらい)たちがやってくれ

  るわけですから、殿様などはやることが無い。

  どうも面白(おもしろ)くないと日々退屈していた、ある国のお大名(だいみょう)がいまして。


殿様:これ、みなの者。

   予(よ)は幼少(ようしょう)の頃に将棋(しょうぎ)を覚えたが、その方たちは将棋(しょうぎ)を指(さ)すか?


家来1:ははっ、駒(こま)の動きくらいは存じておりまする。


殿様:さようか。

   では予(よ)の相手をいたせ。


家来1:は、とてもお相手と言うわけには参りませぬが、お稽古(けいこ)をひとつ

    、お願いいたしとうござります。


殿様:うむ、では将棋盤(しょうぎばん)をこれへ持て。


家来1:ははっ。


語り:将棋盤(しょうぎばん)と申しましても、我々一般庶民が縁台将棋(えんだいしょうぎ)で使っているよう

   な、真っ黒に変色して筋(すじ)が分からなくなってたり、駒(こま)が足りなくて

   代わりに服のボタンを「これが香車(きょうしゃ)の代わりだ」なんてやってるよ

   うなのとはわけが違います。天面(てんめん)、木口(こぐち)、木端(こば)が揃(そろ)って柾目(まさめ)が最上(さいじょう)

   のちゃんと四つ足(あし)が着いた、ご立派なものが運ばれて参ります。


家来1:殿、将棋盤(しょうぎばん)にございます。


殿様:うむ。

   これ、早く駒(こま)を並べよ。


家来1:はっ、それがしのはもう並べましてございます。


殿様:そのほうが並べ終わっておっても、

   予(よ)の駒(こま)が並べられておらぬではないか。


家来1:っこ、これは恐れ入りました。


語り:自分で並べた方が早いのにご家来にやらせる。

   まこと我儘(わがまま)なものにございます。


家来1:あ、そうであった。

    殿にうかがいまする。


殿様:?なんじゃ?


家来:よく下(しもじも)々では振(ふ)り駒(ごま)と申して、

   この歩(ふ)を持って、金(きん)か歩(ふ)かと訊(たず)ねまする。

   仮に殿が金(きん)であると申され、これを振(ふ)って金(きん)が出れば殿が先手(せんて)、

   歩(ふ)が出ればそれがしの先手(せんて)となります。

   いかがいたしましょうや?


殿様:おぉさようか。

   先へ出るのと後から出るのとではどちらが有利か?


家来1:それは先の方が得にござりまする。


殿様:うむ、では予(よ)が先に参る。


家来1:【つぶやく】

    あ、振(ふ)り駒(ごま)はしないと…。


    は、ははっ。


殿様:ふうむ、この角(かく)と申すものは、陣地におっては誠(まこと)にだらしのない

   ものだが、ひとたび敵の陣地へ入って成(な)ると馬になり、縦横(じゅうおう)に動け

   る。

   それゆえ、まずこの角(かく)の道を塞(ふさ)ぐ歩(ふ)を動かしてやるのが定石(じょうせき)と聞い

   ておるが、どうじゃ?


家来1:ははっ、いかにも。

    碁(ご)には碁(ご)の定石(じょうせき)がございます。

    将棋(しょうぎ)にも将棋(しょうぎ)の定石(じょうせき)があるものでございまして、

    角(かく)の道から出るのは法にかなっておると存じます。


殿様:うむ、そうか。


家来1:ではそれがしは歩(ふ)を取りまして、この方から出る事に…。


殿様:うむ、さようか。

   では、これへこう参るぞ。


家来1:むむ、殿は手順が出来ておりますので、

    誠(まこと)にどうも…こちらも指(さ)しにくうござります。

    恐れ入りまする。


殿様:これこれ、いちいち頭を下げるでない。

   よいから早(はよ)ういたせ。

   では…ここへ参るぞ。


家来1:ははっ。

    誠(まこと)に殿はご上達(じょうたつ)でござります。

    恐れ入りまする。


殿様:頭を下げるなと申しておるであろう。

   いちいち敵方(てきがた)を褒(ほ)める奴があるか。

   …うん?

   あ、待て待て。

   これ、その歩(ふ)を取ってはならんぞ。

   その歩(ふ)は取ってはならん。


家来1:いえ、殿の金(きん)が上がりましたので、此度(こたび)はそれがしがこの歩(ふ)を

    取ってーー


殿様:【↑の語尾に喰い気味に】

   いや、そのほうの手番(てばん)であってもそれは取ってはならん。


家来1:いや、それがしのーー


殿様:【↑の語尾に喰い気味に】

   いや、そのほうの手番(てばん)であるが、その歩(ふ)を取られては予(よ)が不都合(ふつごう)で

   ある。

   よって他の手をいたせ。


家来1:は…さようでございますか。

    これは恐れ入ります。

    それではやることがございませんので。、端(はし)の歩(ふ)を動かして…。


殿様:うん、さようか。

   ふふ…では予(よ)がこの歩(ふ)」を…。

   誠(まこと)に都合(つごう)が良い。


家来1:……はは…ごもっともでございまする。


殿様:これ、いちいちそのようにな、

   首をかしげて考えておるようでは戦(いくさ)は勝てぬぞ。

   よいか、下手(へた)な考えは休むに似たりと申すぞ。


   …むむ?

   これは、いつの間にそのほうの飛車(ひしゃ)が予(よ)の陣地へ入って参った?

   辺(あた)りの駒(こま)を取るとは…けしからん。


家来1:は、この飛車(ひしゃ)は艱難辛苦(かんなんしんく)いたしまして、ようやく敵の陣地へと

    入りましたものでござります。

    なにとぞご憐憫(れんびん)のお沙汰(さた)をもちまして、この飛車(ひしゃ)だけはこのまま

    据(す)え置きを願いとうございます。


殿様:いや、けしからん。

   いかにそのほうが嘆願(たんがん)に及(およ)ぼうと、みだりに予(よ)の陣地へは行って

   参るとは…。


   いや待て待て、そのほうがさように嘆願(たんがん)いたすのであれば、

   何か知恵を授(さず)けようか。しばらく待て。


   【二拍】


   よし、ならばかようにいたそう。

   そのほうの飛車(ひしゃ)を助けてつかわす代わりに、見よ、予(よ)の飛車(ひしゃ)が

   これにうずくまっておる。

   予(よ)の飛車(ひしゃ)をそのほうの陣地に成(な)り込ませれば、

   そのほうの飛車(ひしゃ)は助けてつかわす。

   その代わり、当分動かしては相(あい)ならぬぞ。


家来1:は…ではそれがしの飛車(ひしゃ)をお助け下さいますのに、

    殿の飛車(ひしゃ)がそれがしの陣地に成(な)り込みますので。

    しかしながら、ここにそれがしの金銀(きんぎん)がございまするが、

    それを飛び越えて参られましては、誠(まこと)に迷惑に存じますが。


殿様:なに、分からぬ奴だ。

   そのほうの飛車(ひしゃ)を助けつかわす代わりに、予(よ)の飛車(ひしゃ)が成(な)り込むのじゃ

   。金銀(きんぎん)のおる所を飛び越しても差し支(つか)えあるまいが。


家来1:いや、駒(こま)を飛び越して参るのは飛び将棋(しょうぎ)の他(ほか)にないと心得(こころえ)ますが

    …。


殿様:なに、飛び越えてはならぬと申すか。

   では予(よ)の駒(こま)はそちらへ参る事は出来ぬではないか。

   参る事ができぬとあらば、そのほうの飛車(ひしゃ)を助けつかわすこと、

   相(あい)ならぬ!

   飛び越えられぬとあれば、その金銀(きんぎん)は目障(めざわ)りじゃ。

   取り片付けい!


家来1:……恐れ入ります。

    それでは、こちらの方へ…。


殿様:待て待て、その駒(こま)はこちらへ渡せ。

   よし、それでは予(よ)の飛車(ひしゃ)がここへ成(な)り込んで…、

   王手(おうて)じゃ!


家来1:…恐れ入りましてござります。


殿様:ははは、そのほうは弱いのう。

   さぁ次の者、参れ!


家来2:しからばそれがしめが。


殿様:おお、そのほうか。

   うむ、では参るぞ!


   【二拍】


   ふうむ、なかなか粘(ねば)るの。


家来2:ではそれがしはこの金(きん)を動かしまする。


殿様:む、いかんいかん、そこへ置かれては予(よ)の桂馬(けいま)が取られてしまうで

   はないか!


家来2:戦場(いくさば)は非情にござりまするゆえ。


殿様:ならばこうするまでじゃ!


家来2:!?

    殿、そこは桂馬(けいま)の動けるところではございませぬが…。


殿様:何を申す!

   予の桂馬(けいま)は名馬であるゆえ、五つ六つ飛ぶのはあたりまえじゃ!

   …何ぞ、不服(ふふく)かの?


家来2:は、はは…。


殿様:よし、ここへ銀を打てば…どうじゃ、もう一手(いって)で王手(おうて)ぞ。

   ははは。


家来2:【声を落としてつぶやく】

    しめた!角(かく)の道が開いた!


    では、それがしはこの角(かく)をここへ動かしまして…王手(おうて)でござる。


殿様:!?な、なんじゃと!?

   !しまった、その道が開いておったか…!


家来2:さて、殿、もはや王はいずれへも参れませぬぞ。


殿様:ぐ、ぐぬぬぬ…!


家来1:【声を落として】

    おおお、あの如何様(いかさま)だらけの中、よくぞここまで…!


家来2:殿、投了(とうりょう)なされまするか?


殿様:ぬぬぬ…!


   【つぶやく】

   !そうじゃ!


   ははは、これで予(よ)の王を追い詰めたつもりかの?


家来2:しからばいずれへ動かしまするか?


殿様:それはの…こうじゃ!

   ははは、これぞ王将の八艘(はっそう)飛びじゃ!


家来1:【声を落として】

    んなっ、そ、そんなバカな…!

    自分の王将を盤面(ばんめん)から取りのけた…!?


家来2:ッ…!

    王将に、逃げられましては、勝負に、なりませぬな…。


殿様:ははは、そうであろう!

   それゆえ、予(よ)の勝ちじゃ!


家来2:…。


家来1:【声を落として】

    な、なんたる事だ…。


殿様:さあ、次じゃ、次の者参れ!

   はははは!


語り:その後もこんなんばっかりです。

   もちろん家来たちが勝てるわけがない。

   ちょっと自分が不利になるとすぐに相手の駒(こま)を飛び越したり、

   あるいは取り払え!などと命じたりする。

   どんな名人が立ち向かったってこれじゃ負けてしまいます。

   殿様が将棋(しょうぎ)に凝(こ)りだしてから数日、城内の詰(つ)めの間にて。


家来1:あぁ、つまらぬ事になった…。


家来2:その顔から察するに、ご同輩(どうはい)はまた、殿に将棋(しょうぎ)の手合(てあ)いを挑(いど)まれ

    たのか?


家来1:うむ…、そろそろお飽(あ)きになるかと思うたのだが、

    一向にお飽(あ)きにならん…。


家来2:その事よ。

    いや、それがしも昨日な、父上に相談いたしたのだが、

    やはりお相手申さなければなるまい、それがご奉公(ほうこう)だと言われて

    のう…。


家来1:確かにそうではあるが…いや、弱りましたな…。


家来2:うむ…。

    殿にはもはやお目覚めのようで、ちと覗(のぞ)いたのだが…、

    もう将棋盤(しょうぎばん)が出ておった。


家来1:あぁ…そうでござるか…。

    となると、もうそろそろお出ましでござろうか。


家来2:いや、まだしばし早(はよ)うござろう。


殿様:これ、話し声がいたすが、一同参ったか?

   これへ参れ!


家来1:!…お呼び込みだ。


家来2:むむ、では御前(ごぜん)へ参ろう。


    殿、うるわしきご尊顔(そんがん)を拝(はい)し、恐悦至極(きょうえつしごく)に存(ぞん)じ奉(たてまつ)りまする。


殿様:あぁ、さような事はどうでもよい。

   本日も将棋(しょうぎ)を指(さ)すが…、そのほうどもは負けると頭ばかり下げ、

   すぐ引っ込む事を考えておるが、そのような事ではとても上達(じょうたつ)は

   いたさぬぞ。


家来1:【声を落としてつぶやく】

    …お飛び越えだの、お取り払いで上達(じょうたつ)とは…。


家来2:【声を落として】

    しっ、聞こえるぞ!


殿様:そこでな、予(よ)はひと工夫(くふう)いたした。

   そのほう共(ども)の将棋上達(しょうぎじょうたつ)の為、勝敗にこの鉄扇(てっせん)を賭(け)ける事にいたした

   ぞ!


家来1:ッなっ!!?


家来2:て、鉄扇(てっせん)…にござりまするか。


殿様:そうじゃ!

   将棋(しょうぎ)に勝った者は、この鉄扇(てっせん)で相手のつむりを打つという事にいた

   すぞ!

   どうじゃ、奨励(しょうれい)のためにかような事を考えたのだぞ!


家来1:…では、将棋(しょうぎ)に勝った者はその鉄扇(てっせん)で、相手のつむりを打つと。


家来2:仮にそれがし共が勝ちましたる折(おり)は、その鉄扇(てっせん)を拝借(はいしゃく)いたし、

    殿のおつむりを打っても良いと、かようにおおせられまするので

    。


殿様:勝負の事じゃ。

   遠慮のう打てい。


家来1:叩(たた)きましても、お叱(しか)りはありませぬか?


殿様:そうじゃ、武士に二言(にごん)はない。


家来2:では、その儀(ぎ)を一同の者に聞かせますゆえ、しばしご猶予(ゆうよ)を。


家来1:おのおの方(がた)、聞かれたか。

    今度から将棋(しょうぎ)の勝負に鉄扇(てっせん)を賭(か)けると、殿がおおせだ。

    勝負に勝ったる折(おり)は、あの鉄扇(てっせん)で殿のつむりを叩(たた)く事ができるの

    じゃ。


家来2:…無理じゃな。勝てようはずがない。


家来1:何を申される。

    我らが本気でやれば、殿なぞは赤子の手をひねる様なものでは

    ござらぬか。造作(ぞうさ)もない。


家来2:それは互いにまともに指(さ)したらの話、現実にはそう参るま

    い。

    お飛び越しだのお取り払いなどやられては、とても勝つ見込みは

    ない。


家来1:しかし、此度(こたび)からは鉄扇(てっせん)がかかってござる。

    さような事はござるまいかと。


家来2:いや、この儀(ぎ)については一応、確かめた方が良かろう。


家来1:むむ、そう申されるならばお訊(たず)ねいたそう。


    殿にお伺(うかが)い奉(たてまつ)ります。


殿様:なんじゃ?


家来1:鉄扇(てっせん)の儀(ぎ)は承知つかまつりましたが、

    仮に勝負いたしましたとて、鉄扇(てっせん)がかかっております。


家来2:されどいつものように、お飛び越し、またはお取り払いなどが

    あるのでございましょうや?


殿様:おお、念の入(い)った訊(たず)ねようであるな。

   うむ、不都合(ふつごう)な場合は、それもあると心得(こころえ)よ。


家来2:【声を落として】

    ッ…、おのおの方(がた)、やはりございますぞ。

    これでは到底(とうてい)我らに勝ち目はあり申さぬ。


家来1:うむ…ではご同輩(どうはい)から殿に。


家来2:いやいやご貴殿(きでん)から。


家来1:遠慮めさるな。


家来2:いやいや遠慮いたす。


家来1:いやここは、ぜひ、ご同輩(どうはい)から!


家来2:っさ、さようか…で、ではそれがしから先に…。


語り:なんておっかなびっくり将棋盤(しょうぎばん)へ向かいます。

   結局これまでの事に、ただ鉄扇叩(てっせんたた)きの罰則(ばっそく)が加わっただけ。

   あっという間に負けてしまいます。


殿様:ははは、予(よ)の勝ちじゃな!

   さあ約束じゃ、つむりをこれへ!


家来2:う…は、ははっ…。

    な、なにとぞ、お手柔(てやわ)らかに…。


殿様:いやそうはいかぬぞ。

   このくらいなら辛抱(しんぼう)がしよいなどと申すようでは、上達(じょうたつ)はいたさぬ

   ぞ。とても辛抱(しんぼう)ができんと思うから上達(じょうたつ)もいたすのだ。

   容赦(ようしゃ)なく打つゆえ、さよう心得(こころえ)よ。

   もそっとつむりを前へ出せい。

   むんッ!

   【打ち据えるSEあれば】


家来2:~~~~ッッッッ!!!

    …あ…ありがたき、幸せ…。


殿様:どうじゃ!

   まずは一人抜き、さあ、次の者参れ!


語り:なんにもありがたい事なんてありゃしません。

   歯を食いしばって痛みをこらえながら御前(ごぜん)を下がるご家来。

   まるで剣術の稽古(けいこ)でもするかのようにポカポカポカポカと、

   如何様(いかさま)で勝ち続けて鉄扇(てっせん)で叩(たた)きまくる。

   こんなのが何日も続いたもんですからもうたまりません。

   ご家来衆(けらいしゅ)の頭はもう見るのも痛々しいほどのコブだらけでございま

   す。


家来1:いや…どうも実にくだらぬ事が流行(はや)ったものだ…。


家来2:その事でござる。

    はて、ご貴殿(きでん)のつむりには、コブが一つも無いように見受けられ

    るが…?


家来1:何を申される。無いどころではござらぬ。

    それがし、昨夜は城に宿直(とのい)で詰めておってな、

    ひたすら殿のお相手をいたしておった。


家来2:えっ…という事は、ご貴殿(きでん)一人で…!?


家来1:いかにも。

    他に代わる者がおるわけでなし、それがし一人でお相手し、

    …そして打たれ続けておった。

    よくよくご覧あれ。

    コブとコブが地続(じつづ)きになってしまっての、

    つむりが膨(ふく)れ上がっておるのはコブのせいでござるよ…。


家来2:な、なるほど…そう申されてみれば確かに、頭の恰好(かっこう)がおかしゅ

    うござるな。

    それに顔色もすぐれぬようでござるが…。


家来1:うむ…どうもいつもと異(こと)なって気分が悪(わる)うござる。

    これはコブ傷心(しょうしん)でござろうな…。


語り:いやもう大変な騒ぎであります。

   そんな中、この一件はすでに隠居(いんきょ)して病(やまい)の身を養(やしな)っている、

   田中三太夫(たなかさんだゆう)という老人の耳に入りました。

   どこの大名家(だいみょうけ)にも必ず一人はいる、ご意見番(いけんばん)と言われて

   殿様に煙(けむ)たがられる存在、徳川家の大久保彦左衛門(おおくぼひこざえもん)のようなもので

   す。


三太夫:これはいかん…病(やまい)の身なれど、城へ参って殿をお諫(いさ)めせねば…。

    このままでは当家(とうけ)を出奔(しゅっぽん)する者も出てこよう…。


    城へ参るのも久方(ひさかた)ぶりじゃの…。

    !!?これ、そのほう、頭がコブだらけではないか。

    一体(いったい)いかがしたのだ?


家来2:こ、これはご老体(ろうたい)。

    いや、実は最近、殿が将棋(しょうぎ)に凝(こ)っておられまして…。


家来1:それゆえ、我らが将棋(しょうぎ)のお相手をつかまつるのですが、

    その勝敗に鉄扇(てっせん)を賭(か)けておるのです。


家来2:勝負に負けた者が鉄扇(てっせん)で頭を打たれると、こういうわけでござい

    まして…。


三太夫:ほう、そうであったか。

    それは面白(おもしろ)いの。

    さだめし、殿にもたくさんのコブができたことであろう。


家来2:い、いえ…。

    殿には一つのコブもござり申さぬ…。


三太夫:なに、一つもないと?

    すると何じゃ、そのほう達が勝っても打てず、殿だけが打つとい

    うような片手落(かたてお)ちであるのか?


家来2:そういうわけではございませぬが…。


三太夫:ふうむ、それはおかしいの。

    将棋(しょうぎ)は殿のご幼少(ようしょう)のみぎり、拙者(せっしゃ)がお教え申した。

    じゃがさして上達(じょうたつ)はされなんだ。

    そのほうらがよほど下手(へた)なのかの?


家来2:い、いえ、実は…。


家来1:殿におかれましては、普段の将棋(しょうぎ)とはいささか異(こと)なる打ち方を

    されますもので…。


語り:普段は口うるさい老人であってもこの場は救いの仏。

   殿様に面と向かってずけずけものを言えるのは、この人をおいて

   他になし。

   家来たちはここぞとばかり、殿様の普段の将棋(しょうぎ)の打ちようを三太夫(さんだゆう)

   に事細(ことこま)かに伝えます。


三太夫:ふうむ、なるほどの。

    そのような事では、どうやっても勝てぬのは道理(どうり)じゃ。

    よし、しからば本日は拙者(せっしゃ)が殿のお相手をつかまつろう。


家来2:えっ、ご、ご老体(ろうたい)が?


三太夫:うむ、殿をお負(ま)かせ申して、鉄扇(てっせん)にて殿のおつむりを打とうぞ。

    そのほうらの仇討ちをいたそう。

    いざ、参られい。


    【二拍】


    殿、隠居(いんきょ)の田中三太夫(たなかさんだゆう)、殿にお目通(めどお)りいたしたく、

    まかり越してござります!


殿様:【声を落として】

   うっ、じ、爺(じい)か…。


   うむ、これへちこう参れ!


三太夫:はは。


    殿におかれましては、いつもながら麗(うるわ)しきご尊顔(そんがん)を拝(はい)し、

    恐悦至極(きょうえつしごく)に存(ぞん)じ上げ奉(たてまつ)りまする。


殿様:う、うむ。

   病(やまい)と聞いておったがどうじゃ、体は平癒(へいゆ)いたしたか?


三太夫:いえ、平癒(へいゆ)とまでは参りませぬが本日は気分も良く、

    殿のお顔を拝(はい)さんものとまかり出(い)でましてござりまする。


殿様:うむ、そうであったか。


三太夫:次の間(ま)にて若侍(わかざむらい)どもより伺(うかが)いましたが、

    殿におかれましては将棋(しょうぎ)を催(もよお)されているとの由(よし)。


殿様:…そうじゃ。

   また意見か?

   予(よ)が将棋(しょうぎ)を指しては悪いのか?


三太夫:さにあらず、決して悪いことはござりませぬ。

    将棋(しょうぎ)は兵法軍学(へいほうぐんがく)から割り出した畳(たたみ)の上の戦(いくさ)、

    まことに結構(けっこう)なことにござります。

    その勝敗に鉄扇(てっせん)を賭(か)けまして、勝った者が相手のつむりを打つ、

    これまた面白(おもしろ)い趣向(しゅこう)と存(ぞん)じます。


    …しかしながら。


殿様:っな、なんじゃ?


三太夫:見受けまするに、殿には一つもコブが見られぬ由(よし)。

    さぞ、将棋(しょうぎ)のお手前(おてまえ)が上達(じょうたつ)いたしたものと、存じまする。


殿様:っははは…そうじゃ、みな、相手にならぬのでのう。


家来2:【声を落として】

    くっ…!


三太夫:そこで本日は、若侍(わかざむらい)どもの仇討(あだう)ちをいたそうかと。

    年寄りの冷や水と思(おぼ)し召(め)されましょうが、

    この爺(じい)めがお相手つかまつり、あわよくば殿のおつむりを、

    鉄扇(てっせん)を拝借(はいしゃく)いたして打たんものと心得(こころえ)まする。


殿様:いやいやいやいかん。

   もし予(よ)が勝った場合、年寄りを打つは不愍(ふびん)でな。

   若い者が良い。


三太夫:これはしたり、みずから仇討(あだう)ちを買って出ましたものゆえ、

    お気づかいは無用にござります。

    それに、たとえ殿が爺(じい)の頭をお打ちになりましても、

    殿のご柔弱(にゅうじゃく)な腕では、このやかん頭は容易(ようい)にへこみませぬゆえ。

    よしんば、この頭がへこむようなお手前(てまえ)ならば、

    これに勝(まさ)る喜びはござりませぬ。


家来2:【声を落としてつぶやく】

    さ、さすがはご意見番(いけんばん)…!

    我らにはここまで殿に申し上げることなどできぬ…!


三太夫:たとえここで頭を砕かれ倒れましょうとも、武士の本懐(ほんかい)でござり

    まするゆえ、遠慮のうお打ち遊ばしませ。


殿様:む、むぅ…!

   しからば遠慮なく打つぞ、良いな!


三太夫:ご存分(ぞんぶん)に。


殿様:誰ぞ、将棋盤(しょうぎばん)をもてい!


家来1:ははっ!


    【二拍】


    【声を落として】

    これは、どっちが勝っても面白(おもしろ)い事になるぞ…!


殿様:あぁこれ、早(はよ)う駒(こま)を並べよ。


三太夫:並べておりまする。


殿様:予(よ)のが並べられておらぬではないか。


三太夫:これはしたり、将棋(しょうぎ)の駒(こま)を並べるのは陣を築(きず)くのに同じこと。

    味方の陣(じん)を敵に築(きず)かせるという法はござりませぬ。

    殿ご自身でおやり遊ばしませ。


殿様:~~っよい、自分で並べられるわ…!


家来1:おおお、殿が初めて自分で駒(こま)を並べておる…!


殿様:では、予(よ)が先手(せんて)二枚ーー


三太夫:【↑の語尾に喰い気味に】

    これはしたり、下手(したて)が先に決まっておりまする。


殿様:~~っむむ…。


   この角(かく)の道を開けるのは将棋(しょうぎ)の法にかなうと申すでな、

   いつもこの角道(かくみち)から開ける事にいたしておる。


家来2:【声を落として】

    確かに定石(じょうせき)は定石(じょうせき)、だがご老体(ろうたい)相手では…。


三太夫:下手(したて)は、角道(かくみち)から出るものでござればーー


殿様:~~いちいち下手(したて)下手(したて)と申すな…!

   しかし、爺(じい)は打つのが速いの。


三太夫:戦をいたすのにいちいち考えておるようでは、

    とても勝つことはできませぬ。

    さて、これをこういたしまして…。


殿様:【↑の語尾に喰い気味に】

   おぉ待て、その手を上げよ。

   その桂馬(けいま)を取ってはならん、ならんぞ。


家来1:【声を落として】

    !!

    始まった…お飛び越し、お取り払い…!


家来2:【声を落として】

    これをやられてはまず勝てぬ…。


家来1:あのやかん頭がプーッと膨(ふく)らむのも面白(おもしろ)いぞ。


家来2:うむ、ともあれ、我らは高みの見物(けんぶつ)と参ろう。


殿様:それを取られては予(よ)の不都合(ふつごう)である。

   ゆえに取ってはならん。


三太夫:これは異(い)なことをおおせられる。

    敵の不利は味方の有利、味方が不利は敵の有利でござります。

    敵が不利であるからと言って、これを取らぬというような事は

    できませぬ。

    これはいただく事にいたしまする。


殿様:っじ、爺(じい)、そのほう、予(よ)の言葉に背(そむ)いても取ると申すのか。


三太夫:お言葉に背(そむ)くと申されましては恐れ入ります。

    爺(じい)めは老衰(ろうすい)いたしておりまするゆえ、すぐお答えもなりませぬが…。


家来2:【声を落として】

    ま、まさに一触即発(いっしょくそくはつ)…!


家来1:【声を落として】

    手に汗を握るとは…このことか…!


家来2:【声を落として】

    ご老体(ろうたい)…どう切り抜けられる…?


三太夫:…ふむ、考えがつきました。

    殿、この歩(ふ)と申すものは盤上(ばんじょう)でいちばん身分軽き者、

    これは雑兵(ぞうひょう)、足軽(あしがる)と申すべきものでござる。

    それに対して桂馬(けいま)はお馬廻(うままわ)り、一騎当千(いっきとうせん)の侍(さむらい)にござりまする。

    それに立ち向かって相手の首級(しゅきゅう)をあげましたるは、

    誠(まこと)にあっぱれな奴にござります。

    帰陣(きじん)のうえは、士分(しぶん)に取り立てつかわそうと存じておりまする。


家来2:こ、これは…!


家来1:ちゃ、ちゃんと話に筋(すじ)が通っている…。


家来2:さすがは年(とし)の功(こう)でござる…!


三太夫:しかるにそれを、敵の大将がとやかく申したからと言って、

    これを取らずにいると言うわけには参りませぬ。

    武士たる者、たとえこのままお手討(てう)ちになりましょうとも、

    この桂馬(けいま)を取らざるうちは、この座(ざ)は立ちませぬ。


殿様:~~ッッわかったわかった!

   そう理屈(りくつ)を申すでないわ…!

   よいよい、取れ!


三太夫:取れとおおせが無くとも、これはもういただく桂馬(けいま)にござりま

    すれば、頂戴(ちょうだい)をいたします。


殿様:~~むむむ…ならば、飛車を…!

   ッ!


家来1:【声を落として】

    あっ、あれは…!


家来2:【声を落として】

    出た!お飛び越し…ッッ!!?


三太夫:【声を落としてつぶやく】

    やれやれ、これが件(くだん)の飛び越しか。

    まったく…我がままにお育ち遊ばされたものだ…。

    ッ。


殿様:!

   これはけしからん!

   これ、爺(じい)といえども無礼(ぶれい)であろう!


家来2:【声を落として】

    と、殿の…飛車(ひしゃ)を、投げ返した…!?



三太夫:無礼(ぶれい)とは恐れ入りまするな。

    殿もお分かりのはずでございましょう。

    ここには金銀(きんぎん)がござります。

    それを飛び越して敵陣(てきじん)に入りこむとは何事(なにごと)でございまするか。


    盤上(ばんじょう)において金銀(きんぎん)は城壁(じょうへき)を固(かた)め、王将の前後(ぜんご)を護衛(ごえい)いたす者。

    かたや飛車(ひしゃ)は、盤上(ばんじょう)において軍師とも申すべき、立派(りっぱ)な大将に

    ござる。

    いやしくもその大将たる者が、軍略(ぐんりゃく)・陣法(じんぽう)をわきまえず、

    卑怯(ひきょう)にも道無(みちな)きところを飛び越えてくるとは言語道断(ごんごどうだん)!

    一刀両断(いっとうりょうだん)に斬り捨てようかと存(ぞん)じましたが、かような者を斬って

    は刀の穢(けが)れと考え直し、不憫(ふびん)をもってお返し申しました。


家来2:【声を落として】

    聞き申したか!

    さすがはご老体(ろうたい)じゃ…!


家来1:【声を落として】

    こ、このままいけば殿に勝つやもしれぬぞ…!


家来2:【声を落として】

    さあ殿、いかに出られる…!?


三太夫:ご異存(いぞん)あらばお返し下され。

    首をあげて軍門(ぐんもん)の血祭(ちまつ)りにいたしましょうぞ。


殿様:~~ッッよいよい!


   …そこに金銀(きんぎん)が無ければ良いのだがな。

   

三太夫:【無視して】

    さて、ではこれをかような事にいたしまして…、

    王手(おうて)にございまする。


殿様:むむむ、王手(おうて)じゃと……!!


三太夫:…殿にお訊(たず)ねいたしまする。

    敵軍が城壁(じょうへき)まで攻め寄せておるに策もなく、

    ただただ戦うは大将たる者の振(ふ)る舞(ま)いにござりませぬ。

    およそ知恵ある大将たる者は、戦(いくさ)の勝敗が三日以前に分かるよう

    でなくては、一国一城(いっこくいちじょう)の主(あるじ)とは申せませぬ。


殿様:む…。


三太夫:時としては城壁間際(じょうへきまぎわ)まで引きつけ、一気に打って出て勝ちを得る

    事もございますが、策(さく)もなく城の奥に控(ひか)えおるは、

    さだめしバカ大将か、間抜(まぬ)け大将と申せましょう。


殿様:な、な、な…!


家来1:【声を落として】

    な、なんという詰め方…!


家来2:【声を落として】

    さすがでござる…!


三太夫:いわゆる雪隠詰(せっちんづ)めになるまで逃げ惑(まど)い苦しむなどとは、

    言語道断(ごんごどうだん)にござりまする。


殿様:も、申すに事欠(ことか)いて、ば、バカ大将じゃと…!

   むっ?そこに金(きん)を打ったか。

   ッ予(よ)の参るところが、ない…。


三太夫:…ない、と申されますと?


殿様:…~~負けだ…。


三太夫:どちらが?


殿様:皮肉(ひにく)な事を申すな。

   …予(よ)の負けじゃ…ッ。


家来1:【声を落として】

    おおお、ご老体(ろうたい)が勝った…!!


家来2:【声を落として】

    うむむ、胸がすくようじゃ…!

    それがしもご老体(ろうたい)にあやかりたいものだ…。


三太夫:では、爺(じい)めの勝ちでござりまするな。

    このやかん頭がへこまずに済(す)みましたわい。

    では、お約束通り鉄扇(てっせん)をご拝借(はいしゃく)いたしまして…


殿様:もうよいッ…。


三太夫:良くはござりませぬ。

    武士の一言(いちごん)、金鉄(きんてつ)の如(ごと)しと申しまする。

    ではご拝借(はいしゃく)。


    【二、三度振っている】


    なるほど、手頃(てごろ)な鉄扇(てっせん)でござりますな。

    爺(じい)めは壮年(そうねん)のころ、一刀流(いっとうりゅう)片手打(かたてう)ちが得手(えて)でございましてな。


    【気合いをいれている】

    むんッ!!


    やあッ!!


    やあぁーーーッッ!!!


殿様:っこ、これ、最後に気合(きあい)をかけるな…!


三太夫:では殿、おつむりをどうぞ。


殿様:う、うむ…。


家来2:【声を落として】

    ほ、本当に打つつもりでござろうか…!


家来1:【声を落として】

    しかし、ここで打たねば殿は懲(こ)りられまい…。


語り:いくら武士の一言(いちごん)だの、武士に二言(にごん)は無いだのと申しましても、

   まさかに本気で殿様の頭を打てるわけがありません。

   三太夫(さんだゆう)さん、わざと手元(てもと)を狂わして膝(ひざ)のところをビシリ、と

   打ちすえました。

   老(お)いたりとはいえ、腕の立つ人間に叩(たた)かれたのです。

   たまったものではありません。


殿様:ッッッッ~~づぅぅうう~~~ッッッ!!!!


家来1:【声を落として】

    おお! 膝(ひざ)を!


家来2:【声を落として】

    本気で打つわけにはいかぬとはいえ、まさに武士の情け…!


三太夫:いやはやこれは、年はとりたくないものでござるな。

    手元(てもと)が狂いましてござります。

    あらためて、打ち直しを…


殿様:【↑の語尾に喰い気味に】

   ッそ、その儀(ぎ)には及ばぬ!!


   ええぃそのほうら、何を笑って見ておるか!

   早く将棋盤(しょうぎばん)を取り片づけぃ!

   いや、焼き捨ててしまえぃ!


   明日より将棋(しょうぎ)を指(さ)す者は、切腹(せっぷく)を申しつくるぞ!!




終劇




参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)



柳家小さん(五代目)




※用語解説


如何様:イカサマ。


宿直:とのい。当時における夜勤、寝ずの番。


下手:へた、ではなく、したて。棋力(きりょく)が相手より下の者。

   対義語:上手・うわて。





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