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3、thieve


これ程までにクソッタレな事があるだろうか。

そう思いながら俺はイライラしながら帰宅する。

楓はあれだけ良い子なのに何故。

思いながら玄関を開けて顔を上げると。


「お兄ちゃん。お帰り」


そう声がしてきた。

俺は驚きながらその人物を見る。

中学生の義妹の...佐野島星空ほしぞらだった。


実は親父は再婚していた。

で。

美奈子母さんと俺は実は血が繋がってない。

星空は血が繋がった母親だが。


「どうしたんだ?珍しいな。こっちに今帰って来るとか」

「うん。実は文房具屋さんに寄ったから。だからその帰りかな」

「...そうだったのか」

「...お兄ちゃん。どうしたの?何だか複雑そうな顔をしているけど」

「ああ。まあ気にすんな。...せっかく帰って来たなら何処か行くか?今から飯食いにとか」

「うん」


そして俺達は笑み合う。

すると星空が少しだけ紅潮しているのに気が付いた。

俺は目をパチクリする。


「どうした?熱でもあるのか」

「え!?な、無いよ」


星空は髪の毛を揺らす程慌てながら否定する。

俺は目を回しているその姿にニヤッとする。

成程な。

コイツにももしかして彼氏が?

遂に出来たのかな。


「まあ寮生活だしな。そういう事もありえる」

「...え?何が?」

「彼氏が出来たか?」

「.....」

「...え?」

「まあ...うん。だね」

「え?」


訳が分からない。

何だか喜んだり落ち込んだり激しい。

そう思いながら居ると星空が俺を見てくる。


「お兄ちゃんはどう?彼女さんと上手くいってる?」

「あ、あ...ああ。そうだな」

「...?...どうしたの?」

「そうか。それ言ってないな。...実は浮気されてな。別れた」

「はへ!?」

「...そうだ。だから今はフリーだよ」


俺はそう言いながら苦笑する。

それから星空を見る。

星空は顔を赤くしていた。

え?、と思いながら俺は星空を見る。


「...どした?」

「ふ、フリーなの?」

「...そうだな。そこだけ?」

「い、いや」


そう言いながら星空は外方を向く。

それから慌ててから家の奥に入って行く。

俺は?を浮かべながらその姿を見届けながら俺も準備を始めた。



星空は可愛いと思う。

何故なら当たり前だが顔が似てないから可愛い。

俺以上にかなり容姿は完璧だと思う。

考えながら俺は玄関を閉める星空を見る。


「なあ。星空」

「うん?何?お兄ちゃん」

「...何で赤面していた?さっきは」

「デリカシーが無いね」

「...あ、すまん」


ジト目で睨まれた。

俺は汗をかきながら慌てる。

すると星空はジト目を止めてから前を向く。


「お兄ちゃん。私はね。...お兄ちゃんが心配だった」

「...何が心配なんだ?」

「私と同じ目に遭っているから」

「...お前以上に大変じゃないよ。俺は」

「...」


あの日。

星空が俺の家に初めて来た日を思い出す。

その星空は俺に決して懐かなかった。

何故か。


俺達は赤の他人。

それから家族の関係が壊れると思っていたから、だ。


その為に俺に絶対に関わらず。

亡くなった親父にも懐かなかった。

だけどそれが切り替わったきっかけがあった。

それは...星空が自らの父親の遺影を撫でてから泣いていた時だった。


「...懐かしい記憶だな」

「...そうだね。あの時は懐かなかったから。貴方に」

「そうだな。だけどそれだけお前も大変だったからな」

「...その半年後だったね。康介さん死んだの」

「そうだな」


視界があれほど黒一色で...消え去ったのは初めてだった。

親父が死んでから、だ。

そしてそれは第一段階から第二段階の俺達の仲良くなる入り口となった。

その日の葬式以降。

星空は俺に対して思う所があった様で打ち明けてくれた。


「私は大変じゃないよ。お兄ちゃん。やっぱりお兄ちゃんだよ。大変なのは。失った時の時間の差は違うから」

「言ってもお前の親父さんも即死だったじゃないか」

「トラックに衝突されて...ね。側面。...居眠り運転だったから」

「...そうだな」

「...でもね。お兄ちゃん。人によって悲しみは違う」

「?」

「だから私が悲しみを乗り越えても。貴方は乗り越えてない可能性がある」

「それは...」


自然と足が止まる。

それから俺は複雑な顔で星空を見る。

星空はヘアピンを。

父親から貰ったとされる幼児用のヘアピンを持つ。

そして壊れかかっているその大切な、貴重なヘアピンを何を思ったか俺の髪の毛に触れてかき分けて頭に着けてくれた。


「...お兄ちゃん。私ね」

「...」

「私、お兄ちゃんは弱いって思う」

「...ああ」

「だけどそれは悪い意味じゃない。泣いて良いんだよ」

「...有難うな。星空。だけど俺は男だ。泣かない」


そして俺の髪の毛を留めたヘアピンを外す。

それから几帳面に星空の髪の毛を結う為に膝を曲げた。

すると視界が一緒になった。

世界が重なった気がした。


「...ねえ。お兄ちゃん」

「あ?...どうした?」

「...唇同士のキスってどんな味?」

「...は?」


それから俺の両頬を左右の手で掴んだ星空。

次の瞬間、俺の唇は彼女の唇と重なっていた。

は。

甘い味が、とかじゃないが。

空間が止まった気がした。


「...は!!!!?」

「あ、ゴメン。アハハ。膝が曲がっていて姿勢が丁度良かったからつい」

「...な、何を」

「...私。お兄ちゃんが好きなの。異性として。昔から狙っていた」

「は?!」


俺はあまりのショックに真っ赤になって尻餅をつく。

それからその手を星空が掴んで立たせてくれた。

身長差が10センチぐらい違うが。

彼女は俺に微笑んだ。

まるで同列の身長の様に思える感じで、だ。

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