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第8話 二人で歩く河川敷

「……ッ! あーもう分かったって! あーもう、和人くんがいるのに、私のイメージ最悪じゃん。元気に頼むんじゃなかったー」


 奈留は大きなため息をついた。


「でも本当に断られて好きになったの?」

「うん。桜華ちゃんはそういうことない?」

「え? 私は、ちょっとごめん、ないかな」

「そっか、そうだよね。なんで私って惚れやすいんだろ。実はさ、結構困ってる感じあるかも」


 という奈留は、慌てて手を顔の前で振った。


「でも今回はガチというか、そんな気がするのも本当!」


 当然そんな話を信用するほどお人好しではないので、俺は無視をする。


「何が問題でそうなったのか分かる?」

「え、ひど! 無視しないでよ!」


 今の話を聞いたら猶更俺の傷がうずくだろ。

 俺は顔色を変えずにいると、奈留は続けた。


「最初に好きになった男の子とは、中学2年のとき。春休み中に部活で見かけたの。それでかっこいいなって。あとその人モテてたんだよね。だからなおさらかっこよく見えて」


 なるほど。

 女子にありがちな原因じゃないか。

 以前、女子はどんな人に惚れるか、インターネットで調べたことがある。

 複数のサイトで、人気がある人に女子は惹かれるということが書かれていた。

 奈留もおそらく、例に漏れず、女子的な性質を持っているのだろう。


 なぜかイライラする俺は、溜息を吐き出したくなるのを我慢して、ストローを咥えた。

 炭酸が喉に染みわたる。

 このために生きていると言っても過言ではない!


 燃料を補給した俺は、怪訝そうに見ている奈留を再び見た。


「それってつまり、その言い方悪いけど、人気でカッコいい人が好きなんじゃ。つまりビッチ的な……?」


 半径5メートルの空間が凍り付いた、気がした。

 こんなことを言う人間では無いが、正直奈留だったら大丈夫な気がしてストレートに言いすぎたか。

 最近色々な人との距離が近くて、逆に距離感がバグってしまったらしい。


 しかし当の本人は、笑いながら首を横に振った。


「ないない~! だって和人くんのこと好きになってるもん」


 悪びれもなくそう言う奈留を睨みつけたくなる。

 ここにある炭酸飲料水を顔面にかけてやろうか。

 俺がそう思ったとき、桜華の柔らかい声が聞こえてきて、我に返った。


「共通点がないってことは、まずそこから調べなくちゃいけないと思うけど、皆はどう思う?」


 ニッコリ笑顔で俺を見ている桜華。

 俺はその顔を凝視していると、新たな声が聞こえてくる。


「俺はなぁーもうそれをしてるんだけどさ、桜華たちがやれば何か発見できるかもしれないし、賛成」

「私は自分自身がチョロインだから、そもそもよく分からないわ」


 俺はどうだろう?

 正直に言って、もっと深いところに原因はありそうだけど、医者にかかるときもまずは外側から様子を確認する。

 ありじゃないか?


 俺は首を縦に振った。


「じゃあ、週明け、皆で奈留ちゃんのことを尾行および調査しましょう!」

「え!? なにそれ!? なんか私が実験体みたいじゃん!」


 顔を赤らめて首をブンブンと横に振る奈留。

 改めて見ると、カースト上位臭がすごいする。

 髪は黒髪になったが、化粧の技術力、匂い、振る舞いが、もうそれなんだ。

 はっきり言って、照れ臭そうにしている奈留はかなりかわいかった。

 もちろん好きになったとかそう言う意味じゃなくて、高校生として完成度が高いというか、女子力が高いというか、とにかくそんな感じだ。


「変わった事はもちろんしないよ。安心して奈留ちゃん」

「なんか安心できないんですけど!」

「まぁ、とにかくだな。手伝ってくれるって言うんだ。いいじゃんかー」

「私は、別に、うーん……」

「奈留さんがどんな人を気になるのか、学校で起こっていることを報告してもらおう」

「それははずいって! なにその羞恥プレイ! というか、和人くんなんか楽しんでない?」

「それは、ない」


 正直に言うと、少しだけ楽しかった。

 なぜだろう、そういう時ってあるだろ。

 今がまさにそれだ。


「私は楽しいな! みんなといると楽しいよ」

「それはそうだなー。正直合わない組み合わせだけどよぉー。なんか相性は良くね的な」

「それある! わかる~! なんかねー、なんかなんだよねー!」


『なんか』ってなんだよ!?

 なんてことを突っ込む気にはなれなかった。

 多分自分自身も少しだけそう思っていたからだろう。


「名残惜しいけど、ごめん私は先に帰るね。用事があるの」


 桜華は続ける。


「ちょっと親との用事があって!」

「分かった。じゃあ、俺らも解散しますか」

「そうだね~」

「じゃあとりあえず、週明けに学校でまた話しましょう」


 桜華の合図で、変なメンバーによる昼食会は終わった。

 その後、桜華、須藤、奈留が西中学の方向に向かって言った。

 どうやら3人は、同じ中学出身だったらしい。


 そして俺と雪菜も同じ中学出身なわけで、帰り道も同じなわけで。

 ここまで来たのに、別々に帰るのも甚だおかしいわけで。


 俺たちは今、河川敷沿いを歩いている。

 まだ4月だから散りかかっている桜が河川敷沿いに並んでいて、春の陽光が暖かい。

 不思議な空間だった。

 一人ならば別に大したことがない河川敷だけど、雪菜がいるとまた別な空間になるような感じがする。


 この時期の気温にしては高いようで暑いし、湿度が高いモワモワとした空気感が鼻孔刺激する。

 しかし同時に冬のような肌寒い風が全身を刺激する。


 俺は横にいるはずの雪菜をちらりと見ると、雪菜もこちらを見た。


「なんかムズムズするわね」

「学校外で話したことはなかったからな。課外活動のときも別々だったし」

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