第7話 経験人数30人!?
トーンダウンした真剣な声でそう言う須藤だが、俺の脳内は?マークで埋め尽くされた。
しかし考える暇もなく、須藤は奈留の口を抑えながら続ける。
「惚れ症候群。中学からかな、奈留が惚れやすくなったの。中学2年の始業式に2人と付き合って、その翌日に振った。夏には、合計5人と付き合ったけど、長く持たなかった。結局3年間で付き合った人数は、30人だ。奈留曰く、ちょっとしたことでキュンとするらしいけど、俺には惚れないのにな。とにかく、惚れやすい奈留だけど、和人っち」
「な、なに」
「残酷に、惨めに振られたことが原因で、和人っちが好きになったらしい。そして当然だけど、そんな男はこれまでにいない。だって奈留はかわいいから」
須藤はそういい奈留から口を話すと、奈留は須藤の頭を叩いた。
「そんなわけあるかっ!」
そりゃー、そう。
そしてもしそんな恥ずかしい過去があって、それを人前で言われたら……俺だったら3日は学校に行けない。
というか、かわいいというところは否定しないのか。
奈留は首を横に振ると、
「嘘だからね!」
「分かってるって。振ったのに好きになる女の子なんていないことくらい」
「いや、本当だって! 奈留を振ったの和人っちくらいだから!」
なんだろう、ディスられてるような気がする。じゃなくて、ディスられている。
「30人と付き合ったってとこも嘘くさいでしょー! 和人くん!」
「いや一昨日、自分で話してたと思うけど」
「あははは……なんのことかな……」
目がキョロキョロと動いていることを、指摘するべきかと考えていると、雪菜が先に口を開いた。
「経験人数30人じゃなかったかしら」
「雪菜さん!? それは酷いんじゃないかな?」
桜華はフォローをするが、奈留は気にもしていないらしい。
大きな声で「ち・が・う」と言った。
「経験人数じゃなくて! 付き合った人数! 嘘じゃないから、膜だってあるもん……あっ……」
どうして俺の周りには、変な女しかいないのだろう。
恥じらいない女の子からそんなことを聞いちゃっても、意味を持たない言語になるわけで。
しかし同時に想像もしてしまう。
顔を真っ赤に染めている奈留を見ていると、余計に気になる。
生理現象が憎い。
「まぁ、さっきの言葉は忘れよ!」
気まずい空気が漂う中、桜華はパンと手を叩いた。
「でも奈留ちゃん。もうちょっと交際する人は選んだ方がいいんじゃないかな?」
流石は桜華だ。
俺も頷いておこう。
俺だって一目ぼれすることくらいあるけど、簡単に告白なんてしない。
なおさら奈留は、女の子なんだ。
惚れやすくても我慢したほうがいいと思う。
「それはそう、だなー」
「元気(須藤)は黙ってて。いつも女の子と遊んでるくせに」
「俺には、本命がいるからできるんだってー! 付き合ってもないしさー! 奈留は、もうちょっと自分を大切にしようぜ」
須藤のギャップ発言に、奈留は恥ずかしそうに顔をそむけた。
うん、そういう恥じらいが女の子らしくて素敵。
じゃなくて、須藤って女好きだけど真面だった。
教室ではそういう感じが全くないから、意外だ。
「奈留さんは、どういうチョロインなのかしら? 私は消しゴム拾われただけで、胸がときめくビッチなのだけど」
「……だからチョロくないもん!」
どうやら「もん」が口癖らしい。
「それが分からないんだよなぁー……さっきもいったけどよ、振られて好きになったことは一回も無いんだよ。俺に話もしないし。だからさ」
須藤は悲しそうに奈留を見ていた。
そして須藤の言いたいこともなんとなく伝わってきた。
きっと須藤は、奈留が惚れやすいことに悩んでいるから手助けしてほしいと言いたいのだろう、多分。
今の奈留は、悲惨に振られたときの俺みたいだ。
俯きがちで、何かを隠している感じがする。
俺の場合は、中学時代、糞女とずっと同じクラスで馬鹿にされていた過去がある。
奈留にもそういう過去があるのかもしれない。
だとすれば、なおさら親しい人には話せないよな……
「わかった。俺も協力するよ」
「つまり付き合ってくれるのか?」
「それは俺が奈留さんのことが好きじゃないから無理だけど、惚れやすいのを直すのは手助けすることはできるかも。出来るかは分からないけど」
「私も手伝うよ!」
「じゃあ私も手伝うわ」
「私の意思をわすれてない!? 私は惚れやすくて問題ないとおもってるし。というか、また振られてるし! むかつくー!」
じゃじゃ馬のように飛び跳ねそうな奈留。
「こないだだって、なんか違うとか言ってたろー。その前は、好きってなんだろとかいってたし」
「そ、それは……だって、惚れちゃったんだもん」
「言質ね」
冷酷な眼差しで奈留を見つめる雪菜は、吹雪の中獲物を睨みつけている美少女狩人のようだ。
「……ッ! あーもう分かったって! あーもう、和人くんがいるのに、私のイメージ最悪じゃん。元気に頼むんじゃなかったー」
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