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第3話 奈留の告白

「自称ゆるい女とそれを飼いならす男がいるみたいな、そういう感じの!?」


 終わった。

 高校生活終了のお知らせ。

 彼女できない惨めな高校生活を送り、超絶美少女雪菜さんのからかいでさらに疲弊することに。

 もはや言葉を濁しても意味なし。

 というか濁してくれたのはいいが、余計に酷くなっている気がする。


『ゆるい女を飼いならす男』とか響きが最悪じゃないか。

 グッバイ将来の彼女候補。


「なるほど。興味深いわね」

「いやどこが!」

「私たちゆるゆるの関係でしょ。学校の中ではくっつきあっているけど、実は冷めた関係」

「たしかにゆるい『友達』関係だけどさ! これじゃ変態カップルみたいじゃないか」


 フフッと笑う雪菜。

 どこが面白いのだろう。

 俺からしてみたら人生一番の危機だが、雪菜から見たら笑えるのだろうか。

 そういえば、考えたこともなかったが、雪菜に好きな人はいるのか。

 好きな人がいない、もしくは付き合う気がないから、楽しそうなんだろう。


「ま、まぁ。関係はなんとなくわかったかも?」


 今の噂話を聞いて納得できたのかこいつは。

 どう考えても、最低最悪の物件だと思うのだが、俺の感覚が間違っているのか。


 その話は置いておいて、分かったことが二つある。

 青葉奈留は、正真正銘のチョロインだ。

 いや、チョロインをとおりこして、ビッチと呼んでもいいかもしれない、心の中だけで。


 もう一つは、確実に奈留は何かを隠している。

 イケメン好きな顔をしているのに、俺に告白してくるなんて隕石が地球に50個衝突してもありえない。

 ここがゲームの世界なら話は別だが、残念ながらここは現実だ。

 しかも青葉奈留は、確実にかわいい、ここが一番の問題だ。


「でも、それなら私と付き合ってほしいな」

「つまり、すぐに付き合う淫乱えっちチョロインってことね」


 いや待て待て。

 状況を複雑にしないでほしい。

 淫乱……なんだっけ。

 とにかく意味が分からないので、俺は雪菜の二の腕をつねる。


「あっ……ん」


 ダメだコイツ……

 奈留は困惑した表情で俺たちを見ていた。

 それは、そう。

 それはそうだけど、必死に頭をフル回転させている俺って実はすごいんじゃないか。


「でもさ、それならなおさら大丈夫だよね? 私さ、実はその『チョロイン?』だと思うんだよね。中学のときは30人と付き合ったし、高校入学してまだ1週間なのにもう先輩に惚れちゃって、結局付き合ったし……別れたけど」

「……ん?」

「聞いて! それでね、噂をきいたときに、ゆる友になれると思って。もちろん、付き合うってことは、ね。和人くんにも利点があるよ♡ 魅力的でしょ!?」


 なるほどなるほど……全くもって意味不明!!

 なぜその思考プロセスにいたってのか、全くもって意味不明。

 交際経験31人、ってことか。


 とんでもないビッチじゃないか。

 見た目がそうだから、付き合っていましたよオーラは出ていたけれど、正直ドン引きだ。

 ダメだ駄目だ、古傷が痛む。

 RPGでいうのなら、勇者に寝取られること間違いなし。


「全く、意味が分からない!」

「私も分からなかったわ。チョロイン亜種なのはわかったけれど。和人くんと付き合っても、いいことないと思うの。それと、和人くんの好きなタイプを知ってるかしら?」


 さり気なくディスるのをやめてくれ。

 それと、複雑になりそうな情報を勝手に話すんじゃない。

 俺は、口を開こうとしたが、雪菜は制止した。

 めずらしく真剣な表情をしているので、口が勝手に閉じていく。


「タイプ!?」

「そう、タイプ」

「ゆるゆるな子が好きなんじゃないの?」


 まだそれ使うんだ。

 ダメだ。もうついていけそうにない。


 雪菜は、鼻で笑う。


「和人くんはね、処女で、従順で大人しい女の子がすきなの」

「……え?」

「和人くんはチョロ男じゃないから、私たちみたいなチョロインのルールを適用すべきではないと思うの」


 雪菜は、真剣な表情をしていた。

 さっきまでのゆるゆるな会話が嘘みたいだ。

 この空間は、間違いなく少しおかしかった。

 明かに空気が重い。

 そして恥ずかしい、余計なことを言うんじゃない。


「もしかして、雪菜ちゃんがチョロいとか、好きとか言ってたの嘘だったり……する?」

「真面目に答えるのなら、私たちの関係は、友達だわ」

「そう言う人が好きかと思って……」


 奈留は目を伏せ、口を開く。


「今の嘘だと言ったら信じてくれる? 合わせただけだったり……?」


 か細い声。

 その様子を見て、心臓が少し痛む。

 そんな様子を見せられたら、まるで俺が悪いみたいだ。


 人は外見によらず、なのか……。

 申し訳なさ過ぎて、奈留の顔を見れない。


「なんで、俺のことを?」

「恥ずかしいけどタイプだったんだ」


 一目惚れ。

 信じられることではないし、即告白なんてチョロいことには変わりない。

 しかし俺も誠意は見せなければいけない。


「俺はその、なんというか、重い感じなんだ。すまん……」

「振られた……??」

「なんか言った?」


 あまりにも小さすぎて聞き取れなかった。

 雪菜も聞き取れていないようで、下を向いている奈留を怪訝そうに見つめていた。


「ううん。なんでもない!」


 奈留はそう言うと、スマホを机の上に出した。


「でも、連絡先くらはいいいでしょ?」

「え、あ、うん」


 俺は言われるがままにスマホを差し出す。

 女の子とのQRコード登録は初めてだ。


「だけど、正直に言うけど、奈留さんを好きになることはないと思う」

「どうして?」


 俺は清楚な女の子が好みだ。

 ゲームで言えば、ずっと主人公の隣にいるようなタイプ。

 聖女のように優しく包容力があり、処女の女の子が好きなんだ。

 古傷のせいで……

 と言いたいが、流石に気持ち悪いので内心に留めてこく。


「俺はその、恋愛が得意じゃない感じの人が好きというか。長くじっくりと――」

「ねっとり絡み合うように」

「それは雪菜だけだろ」


 ニヤリと笑いながら髪を肩から降ろした雪菜。

 溜息が出る。


「まぁ、そういう感じ……」


 そこまで言ったとこで、奈留が手首の輪っかを肌にパシンパシンと当てていることに気づいた。


「ムカつくっ!!」


 なぜか睨まれた。

 奈留はブレザーを脱ぐと、腕を伸ばした。


「どう、この匂い?」

「え? ファッションビルのような匂いがする」

「そうでしょ、私と付き合えばこの匂いに包まれるんだよ? そりゃー雪菜さんのようにかわいくないけど、付き合ってないんだし、ね」


 その感覚が苦手なのだけど。

 匂いで言うのなら、石鹸やシャンプーの香り漂う女の子が好きだ。

 しかしだからと言って、むっとしている奈留を刺激するのは最悪なので、俺は黙ることにした。

 すると奈留は大きく息を吸う。


「むかつくうう!! 和人くんなんて好きじゃないし! 私がモテて気持ち良くなりたかっただけだし!」

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