第25話 チョロインはチョロいとは限らない
河川敷を黙々と歩いていると、奈留の言葉がフラッシュバックする。
あまり思いだしたくない言葉なので、そのシーンを脳の端っこに追いやろうとしても、無駄なようで、俺はついに追いやることを諦めた。
あーーーと叫びながら河川敷を駆け抜けたい気持ちになるのを抑えて、俺は近くにあったベンチに腰掛ける。
「自分自身の問題じゃないかよ」
通りかかる人が怪訝そうに俺をチラ見してきたけど、人の目なんて気にしない。俺はそう呟いていた。
俺は最低だ。
近くにいると気づかないことが多いという雪菜の発言は、俺にも向けられていたことを知っていたというのに、知らないふりをしていた。
正確に言うならば、知ったのはつい最近だけど、言い訳はするもんじゃないよな。
俺は最低だ。
俺はずっと『チョロイン』を言い訳にして逃げているだけだった。
全ての女の人をチョロいと一般化して、過去の心の傷から逃げているだけだった。
チョロいってなんだ?
例えば傘を貸しただけで惚れたら、その子は浮気性ということなのか?
例えば幼馴染と言うだけで惚れたら、そいつは浮気性なのか?
例えば振られたことで逆に惚れたら、その子は浮気性なのか?
例えば消しゴムを貸しただけで惚れたら、その子は浮気性ということなのか?
それは違う。チョロく惚れたから、他の男にもチョロく惚れるだろうという断定は間違っている。全て殻に閉じこもりたいがための言い訳だ。
つまり、イケメンでもないやつにチョロく惚れるやつは、おかしい。
だからチョロいやつは、あっちにいったりそっちにいったり、サキュバスのように小悪魔的に男を翻弄する存在だという言い訳だ。
なんて馬鹿だったのだろう。
今すぐにでもタイムスリップして、昔の自分と入れ替わりたい気分だ。
今日起こった雪菜との出来事は、奈留の言うとおり全部自分が悪い。
雪菜にあんな行動をさせてしまったというのに、俺は変な言い訳をしてしまった。
雪菜は目にゴミが入っていたと言っていたけど、あの言葉は嘘で、泣いていたに違いない。
心臓がキュッと締まり、不快なざわつきに胸を支配される。
それに奈留にも悪いことをした。
雪菜が好きだと本当は気付いていたのに、ずっと軽く断るばかりで、真摯に向き合ってこなかった。
どうせからかっているのだろう、そう思っていた。
全て自分自身の問題で、雪菜とはもう元の悪友にすら戻れないかもしれない。
でも全部自分が悪いのだから、それは仕方がないことだ。
仕方がないことだけど、自分自身の殻を破り本心を伝えないといけない。
それが、せめてもの罪滅ぼし。
俺は太ももや頬を何度も叩いた。
またしても通りかかる人が怪訝そうにチラ見してきたけど、気にしない。
こうでもしないと動けそうにない。
いつまでも楓との過去に囚われていては、破滅だ。
奈留と同じ様に、俺も前に歩き始めなければいけない。
最後に太ももを拳でおもいっきり叩き、俺は立ち上がることにした。




