第20話 気づき
俺は何で誤魔化したのだろう、コンビニから出た途端に気付いた。
俺は黙々と歩く雪菜の横を歩きながら、そんなことを考えていた。
気になって仕方がなかった。冷静に考えるとおかしかった。
なぜ俺は誤魔化したのか。
そこまでする必要ないじゃないか。
よくよく考えると、雪菜がどんなことを言ったとしても関係ない。
好きな人がいると言ったら応援してあげればいいし、怒ったら悪友として笑ってあげればいい。
とにかくどんな言葉が出てこようと、友達である俺には関係がないはずだ。
上は半袖、下はスカートの雪菜をちらりと見る。
すると雪菜はこちらを見て小首を傾げた。
白銀髪の髪がユラユラと揺らしながら、ピンク色の唇を半月状に歪める。
涼しげな表情で、柔らかそうな頬を歪め、まるでどうかしたと言いたげなその表情を見て、俺はドキッとした。
意味が分からないであろう雪菜は距離を更に近づけるので、ハンドクリームかなにかのいい匂いが鼻を刺激して、俺の脳も刺激される。
少し下を見れば平均より大きな胸が少しだけユラユラと動いているし、さらに下をみれば細いがムチッとした太ももが露になっている。
「和人くん。えっちね」
「え!? なんでかな……」
「だって私の体を見ていたもの」
真横にいれば流石に気が付くものらしい。
とにかく言い訳をしなければいけない俺は、ファッションについて語ることにした。
「スカート姿を見るのは初めてだから、慣れなくて」
「超美少女のスカート姿だものね、興奮するのも当然よ」
「た、たしかに……」
俺がそう言うと雪菜は、再び首を傾げた。
「和人くん大丈夫かしら? 今日は暑いようだから」
俺を心配してくれているようだが、全然全く違うんだ雪菜。
隣を歩いている雪菜をもう一度みて、俺は首を振った。
「いや大丈夫(大丈夫じゃない)、なんでもない(なんてこった今まで気が付かなかったなんて)」
感情による『気付き』は唐突に押し寄せてくる。
夏のような暑さで頭がイカレタのかと思ったけれど、雪菜を見てすぐに違うと分かった。
雪菜を見るとドキドキするんだ。
ただ単純に雪菜を見るとドキドキするんだ。
知り合ってから3年間、俺は雪菜のことが好きだったけれど、それは友達としての好きだ。
そう感じてきたし思っていたけど、違った。
俺は雪菜が好きなんだ。
雪菜といると一番安心した。
真横でニコニコと微笑んでいる雪菜が一番好きなんだ。
比較することでしか気づけなかった自分が格好悪いけど、もうどうすることもできない。
「ここよ」
雪菜は立ち止まった。
ここまでわずか数秒。
俺はコーラを一気に飲み干すことで夢から覚めることにし、次に開き直ることにした。




