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第18話 日常

4月25日日曜日。

俺は今、早朝から自室でMMOゲームをやっている。

異常気象とパソコンの排熱のせいで熱くなった部屋で、俺は黙々とMMOゲームをやっている。

窓を開けているので外からが楽しそうな声が聞こえてくるが、俺はMMOゲームをやっている。


これが普段の俺の生活なわけで、ようやく厄介ごとから解放されたと思っていたわけだが、なぜか妙に寂しい。


結局、奈留の自己納得後はライングループは全く動かずに数週経ったことになる。

学校で奈留がこちらを見ていることが何度かあったり、須藤とも話したりするが、全て学校内で完結しているのだ。

桜華ともRINEで話すこともたまにあるけれど、あれから何の動きもない。


それに雪菜とも相変わらずの関係性だ。


つまり、俺は元の生活へと戻ったことになる。

念願のゲーム三昧がやってきたことになるけれど、何故だか虚無だ。


「和人!? お前、はやくキャラ動かしやがれ!」


そう言うのは、俺のネットフレンドでありリアルフレンドでもある幸喜こうき

幸喜は別な学校に進学したからなかなか会えないが、ネットの中では頻繁に会話している。


「あ! お前! キャラ死んでんぞ! おいこら!」

「あーごめんごめん」

「ごめんごめんじゃないって! どうした? 最近のお前何か変だぞ」

「まぁ色々あってな」


俺は再びマウスを握りキャラを動かす。


「例のあれか? 可愛い女の子たちとの感動の出会いってか。それとも雪菜さんか?」

「PKするぞ」

「こわ! でも羨ましいぞ。昔からお前の周りには変人が多いからあまり近付きたくないけど、可愛い女の子との接点だけは多いからな」

「ディスってるのか、リスペクトしてるのか」

「あ! バフしてくれバフ 死んでしまう。はやく!」

「あーはいはい」


俺は幸喜が操作しているキャラクターにてんこ盛りバフをかける。


「はい俺最強。俺tueeeeeee!!」


そう言いながら周りの雑魚を倒していく幸喜。


「おいそこ! ふっざけんなてめー! 俺tueeeしてないでお前はボスを攻撃しろよ」


ボイスチャットに参加していたことを忘れていたので、急な暴言に驚く俺と幸喜。

しかし幸喜は動じることなく、雑魚を狩り続けている。


「雑魚は任せろ!! そいつは任せた!!」


臭いセリフを吐いた幸喜はボイスチャットから離脱すると、


「んで? おまえはこの高貴な空間から離れようって事か?」

「どこが高貴かわからないけど、あと俺はMMOを止めるつもりはないぞ」

「ほうならなぜ悩む。ゲームと女ァ! ゲーム女両道ッ!」

「おまえふざけてるのか」

「ふざけてなどない。普通にリアル充実してもいいじゃないか」

「根暗引きこもりゲーマーの俺が自分から声をかけて、つまり積極的になれと!?」

「そういうことぉー! 『面白いことは待っててもやってこないんだってね』 あー俺tueee!!」

「でも接点がほぼない相手だ。それに俺はチョロインんが――」

「――気にするな! さあ行け!!! 進め! ネット充の悲劇から変われ! くよくよするな!! オタ臭い現実を変えてやれ!!」


呆れた俺はキーボードから手を放し、溜息をついた。

幸喜は勢いだけで物事がなんとかなると考える。

幸喜曰く、俺がみんなを誘えば解決だと、しかもたった今だ。


でも……


「なんかよくわからないけど、俺行ってくる」


なぜか俺は、幸喜の猪突猛進的な考え方に飲み込まれていた。

そう、俺の脳みそは幸喜の超音波によって洗脳されたのだ。


俺はゲームのタブを右クリックすると、幸喜に別れの挨拶をする。


「じゃあ、行ってくる」

「ちょ、ちょっと待った!! この戦いが終わってからだよな? レアドロはつき合えよ……?」

「……」


結局、俺は幸喜のレアドロップアイテムの収集を手伝うことになったのだ。

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