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第13話 氷解

「仲が良いと気づかない事もあるんじゃないかしら?」


俺は雪菜の言葉を聞いて、3日前を思いだした。

河川敷でのことだ。

恥ずかしいことに学校では見ることができない超特別なモードを見てしまった俺は、自らの心に秘めていたことも暴露して……

なぜか握手することになり……

黙って帰宅することになったあの河川敷での出来事。


目をキョロキョロしたくなるのを必死に抑えて、ストローを咥える。

仲が良いと気づかないとは、どういう意味だろう。

もしかしてあの握手は好きという雪菜なりの表現であり、それに気づいていないって事だろうか。


「あーたしかにそれはあるかもだね!」

「ええ。距離が近すぎてお互いに兄弟のような関係だと錯覚する例のあれよ」

「例のあれ……?」

「そう、例のあれ。端的にいうと、兄弟で肉肉しい関係になるということね」

「雪菜ちゃん!? ダメだよそんなこと言ったら! 男の子もいるんだし!」


いやいやいや、ない。

絶対にあり得ない……はずだ。

そう、俺と雪菜の関係はなんというか兄弟のような感覚だ。

最近はやりの義妹とか、義弟とかそういう感じの関係。

俺だけがさっきのような馬鹿なことを考えていたら、チョロイン倫理協会会長的にも、友人としても最悪だ。


「あんさーそっちも興味深いんだけどー、かずとっちが神妙な面持ちで固まっているだよね。どうしたん」

「かずとくん?」


目の前に何か揺れているものが見える。

俺はハッとしてその揺れている物を中心視野で捉えると、それは須藤の手だった。


「どうしたん。もしかして思い当たる何かあったのか?」


鋭い……。

須藤はたまに妙に感がいい。

おそらくここにいる雪菜や桜華のような、超女らしい女の子よりも須藤は感がいい。

俺にもその鋭さを分けてほしいと、今回の雪菜の発言を聞いて思うわけだが、それは置いておいて、雪菜がジトっとした目で見ているので、俺はゆっくりと首を振った。

きっと雪菜もあの河川敷のことを考えているのだろう。

氷のような冷たい微笑みは、きっと『言わないよね』と言っているようなので、俺は今度は首を縦に振った。


「和人くんの挙動がなんかおかしい……大丈夫? 具合悪い?」


やっぱり桜華さんは、性格までもがいい。


「大丈夫。ただ少し考えていたんだ」

「どういう事かしら和人くん」

「いや違くて、奈留は恋愛好きなタイプでコミュニけーション能力も高い。気づかないなんてことがあるのかって」

「なるほど。たしかにそのとおりね。私たちのように、影の存在じゃないわね」


顎に手を当てて考え込んでいる雪菜を見て俺はホッとした。

あんなに悩んでいるんだ。少なくとも、何か意図があって発言したわけではない。


「ごめんさっぱりわからない! 結局どういうことなんだ?」


須藤は頭をクシャっとし、周りを見渡した。


「たぶん最初のまとめに戻っているんだと思うよ須藤くん」

「桜華ちゃんマジあたまいいー! ごめんなんだっけか。あ! いや待って! 思いだした!」


須藤はハッとした表情で、


「親しい人とは恋愛対象にならないってことだったような!」

「あとは、奈留さんは容姿と性格も気にしていないようね」

「ここから見えてくることが一つだけある」

「奈留ちゃんは、何かしらの理由で親しい人を恋愛対象から省いているってことだよね?」

「うん。その理由が分ったら、解決できるんじゃないかって」


俺がそう言った途端、須藤は目をギラギラ輝かせながら親指を立てた。


「ナイス!! ありがとみんな! なんというか奈留がかずとっちに惚れてくれてよかった」


そう言われるとなんだか照れるから止めてほしいかも。


「近い距離にいると逆に深く突っ込みたくなかったのかもしれないなぁー」

「それってどこに何を突っ込むのかしら」

「……え!? ゆ、ゆきなさん!?」


須藤は雪菜を見て顔を赤く染めた。

雪菜を見ると、氷の表情ではなく小悪魔的な表情で見つめ返して、少しだけ舌をだした。

俺はその憎たらしいほどに整っている顔をみて、なぜかイライラするのではなく、ただ小さく溜息をついた。

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