第9.5話 雪菜自宅にて(サブストーリー)
家に帰った私は、すぐさまベッドに飛び込んだ。
布団がもふっと全身を包みこむ。
「恥ずかしすぎて死ぬ! なんで気づかなかったの」
委員会活動で消しゴムを忘れた私に、影が薄かった私に、消しゴムをくれた和人くん。
当時、自分で言うのもあれだけど私はモテていた。
だからクラスの女子から虐められたことが原因で、私に話しかけてくる人は少なかった。
それなのに何事もなかったかのような顔で、私に接してくれた。
私はその時から和人くんが大好きだった。
もちろん好きの理由は、友達としてだったけど……
「あーあーあー!」
今日の出来事を思い出し、それを消し去りたいから必死で唸るけど、次から次へと記憶が蘇る。
「なんで早く気づかなかったのだろう。自由に遊べばいいって」
「学校の外で一番の友達と遊べたのに!」
バンバンと布団を叩く。
昔から私は人間関係が苦手だ。
今回だって気付くのが遅かった原因が、それだろう。
「そうじゃない!」
一番問題なのが、和人くんに素の自分を見せてしまったこと。
正直、ウザイと思われていないか心配。
もちろん和人くんがそんな人じゃないと分かっているけど、心配性な私にとっては一大事だ。
「明日、どんな顔して会えばいいんだろ……それに……あの握手……」
和人くんと握手した瞬間、気付いてしまった。
もしかして私は、和人くんのことが友達としてじゃなくて、異性として好きじゃないかってことに。
だから私は、これまで和人くんを避けていたのかもしれない。
そうすれば傷つくことはないし、疎遠になることもない。
和人くんも似た様なことを言っていたけど、私の理由とは異なると思う。
だって和人くんは、桜華さんのことが好きなのだから。
じゃあ、私はどうすればいいの?
和人くんの恋を成熟させるために、何もしない。
それが正解だと思うし、そうするつもり。
だけど……もしもっと早く気付いていたら……結末は違ったかもしれない……
「重症だね……」
こんなことを考えると、ますます憂鬱になる。
少し体が重くなってきたので私は、電気を消して無心で目を瞑ることにした。
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