※用語・設定辞典(第2章終了時点)
※注意事項
・6万8千字あります
・1章末の用語も大半が2章末の状況に合わせて更新されています
・2章に関する相当程度のネタバレを含んでいます
・本編で出ていない情報(作者設定情報)が漏れ出ている可能性があります
・本編の記載と矛盾している場合はこちらが優先されるため、ご指摘頂けるととても助かります
・単語検索による辞書的な活用法を推奨
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□迷宮システム関係
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○迷宮/迷宮領域/領域
迷宮核を得て迷宮領主が誕生することで、その者を中心に構築される、ある一定の法則によって支配された領域。
主人公であれば【エイリアン使い】、その他【人体使い】や【水源使い】など、その権能を表す【○○使い】という語によって表現される、現実や自然の摂理を捻じ曲げた固有の法則とルールによって支配されている。
あらゆる迷宮では、こうした領域の維持のために資源としての"魔素"と"命素"が必要とされており、また、どのような権能が現れるかは、迷宮領主となった者自身の「世界認識」に大きな影響を受ける。それは「限定的全知」とすら呼ばれるほどの強力な支配力であり、「世界内世界」と称されるほどに相互に異なる仕組みとなる。
*領域定義
迷宮領主の技能【領域定義】は、ある程度迷宮領域をコントロール(変形)することができる。
自身を中心とした周囲数メートルを半径とした球状の領域が、迷宮領主と「領域」そのものとの間に働くリンクとして知覚され、その意識と認識に応じて大小に拡大変形が可能。ただし、あまり激しく広げたり縮めたりすると、指数関数的に保有魔素と保有命素が減少していくこととなる。
なお、【領域】として【定義】可能な総面積は、2章末時点(副伯級)では技能レベル×1平方キロメートルである。
*領域転移
迷宮領主の技能【領域転移】は、自身の領域内におけるほぼ制限の無い自由な移動を可能としている。ただしその機序は他の【転移】魔法あるいは現象と異なり、まず「出現先」に"裂け目"を構築するのと非常に近い銀色の靄が立ち込め、転移者(迷宮領主及びその付属物と同行者)が出現するのに十分な空間があることを走査してから、靄に包まれた転移者(達)が、「出現先」に現れるという機序を取る。
この結果、ほぼ【転移事故】が起きることは無いが、発動が非常に遅く時間もかかる代物であり、迷宮闘争などで活用されることが想定された技能ではないとされている。
*一時的領域
眷属もまた迷宮システムの一部であるため、その掌握した地点もまた迷宮"内"として取り扱われる。
ただし、これは基本的には「一時的領域」という位置づけとなる。
○迷宮核
【闇世】と【人世】を繋ぐ「世界の罅/異界の裂け目」から流れ込む"魔素"や"命素"は、そのままでは【闇世】の自然現象や世界法則に適合しない力の塊である。
これを【闇世】を維持するための力に変換する装置が迷宮核であり、迷宮領主となる者の体内に同化することによって、その者の「世界認識」を吸い上げて【○○使い】の力に昇華させ、固有独自の法則に支配された領域を形成させる力をも持つ。
吸入され変換された"魔素"と"命素"は、こうして創り出された迷宮領域の固有の法則や、その下で生存する眷属達を維持するための燃料ともなっている。
なお、"異界の裂け目"が「不活性化」されない限りは、何らかの原因によって迷宮核が失われた場合は、やがて【黒き神】の介入によって、新たなものが"異界の裂け目"の近くに生み出される。
*不活性化
迷宮領主が自らの意思によって迷宮核を"閉じる"ことで、休眠状態に入らせること。この際、魔素と命素の変換機能は即座に停止する。
手軽だが、準備無しで実行すれば迷宮経済が混乱することは必至であり、場合によっては【闇世】全体への裏切り行為である審判されかねない。
○迷宮領主
迷宮核を体内(心臓)に取り込むことで、自らの「世界認識」に応じた独自固有なる【○○使い】として表現される権能に基づいた、一定の法則に支配された迷宮領域を形成する存在。
迷宮核によって【闇世】に適合する形に変換された"魔素"と"命素"を資源として、その領域を保ち、独自の法則下に眷属や施設を擁して"迷宮経済"を循環させるが、迷宮領主となった時点で、元の種族は改変され、寿命の制約からも外れた【闇世】の使徒となる。
その役割は【闇世】の存続のために"世界の罅"が呼吸することによって"魔素"と"命素"を取り込む仕組みの防衛者であり、【闇世】の神々が【人世】の神々と争うための尖兵。
このため、その役割を放棄するような行動――具体的には迷宮核を遠く持ち逃げするような行為は【闇世】そのものに対する重大な裏切りであるとされ、最高司祭である"界巫"による追討令を受けることとなる。
かつては組織化された一団となって【人世】側の諸勢力と激しく争っていたが、物語時点では、【闇世】全体で、迷宮領主同士が互いに力と謀略の限りを尽くして相争う戦国の世となっている。
*爵位/爵位権限
迷宮領主は、その誕生初期には【人世】と【闇世】に分かれた神々の争いの尖兵であり、特に劣勢側であった【闇世】において一団として組織化された存在であった。
このため、最高司祭である"界巫"を最上位とした指揮系統が存在しており、より強く力ある者に与えられる様々な「特権」が、その活躍や貢献度に応じて解禁されていく仕組みを取っている。この解禁の度合いを示し、迷宮領主としての格を表す指標が「爵位」であり、下記の通り。
・最上級:界巫(いわゆる"魔王")
・上級 :公爵、大公
・中上級:侯爵
・中級 :伯爵、上級伯
・下級 :郷爵、副伯
「爵位」は、例えば自らに属する"裂け目"の操作に関する権限だけではなく、迷宮領主同士が相互に情報を交換するための共有意識界に存在する――主人公曰く「【闇世】Wiki」における閲覧権限、編集権限などの判定にも活用されていることから、これを「爵位権限」と呼ぶ。
*情報閲覧
迷宮領主による基本的な『種族技能』であり、条件を満たした対象に関する、世界法則下において与えられた様々な「情報」を知覚することができる。
主人公【エイリアン使い】の場合、元の世界における「ゲーム」における各種パラメータの集合体として「ステータスウィンドウ」等の形態で表れるものであるが、他の迷宮領主達においても同様であるかは、2章末現在、詳細未出である。
主人公に限れば、2章末現在、次の通りのルールに従って対象の【情報】が閲覧される。
【情報閲覧:弱】が通るのは次の場合
1.迷宮の【領域】内で発動するか、対象が自らの迷宮の眷属・従徒であること。
→ 【眷属技能点付与】が技能レベルMAXである場合は、眷属の技能テーブルまで見れる。
2.対象が眷属化可能な生物か、従徒化可能な程度の知性を持つ種族であること。
→ 「一時領域」であれば、相手の「名前」「種族」「職業」「位階」「状態」が分かる。
→ 完全な【領域】内であれば、迷宮外の生物であっても【情報閲覧:弱】は技能テーブル以外に通る。
→ 【情報閲覧:弱】が技能レベルMAXである場合は、領域内の対象のステータス・技能テーブル詳細まで見れる。
3.迷宮の【領域】外であり、対象が他の迷宮の所属または神の加護者である場合は、相手方の【情報隠蔽】系または【加護】系技能との対抗ロール。
*副職業
迷宮領主の爵位が副伯となった際に解禁される「職業」。
最下級の郷爵は、この意味で迷宮領主としての"生き方"に専念するよう動機づけられていると言える。
○迷宮眷属/眷属
迷宮領主がその世界認識によって構築した【○○使い】と現される「権能」によって、迷宮領域と迷宮経済を構成する一要素として生み出した、その迷宮の法則に服す形で維持される生命にして尖兵たる存在達。
例えば【エイリアン使い】であれば、"幼蟲"から様々な形状の姿に"進化"し、また【樹木使い】であれば"種"から芽吹くことで様々な個体へと成長する……という形で、その種類や生存法則は千差万別。ただし、共通のルールとして、その生成と維持には"魔素"と"命素"が資源として不可欠。
こうして誕生する眷属達は、迷宮法則の下で迷宮領主を頂点とした指揮系統・ルールに則って活動し、主に迷宮の防衛と拡張、外敵の排除や時には外部への侵略などを担う基本単位となっている。
*存在昇格
眷属が、その服する迷宮の法則に従って、より上位に強大化または専門化した存在に変化すること。
例えば【エイリアン使い】であれば、『因子』を取り込むことで、異なる役割を果たすための形態へと変異する。
*眷属心話
迷宮領主による基本的な『種族技能』であり、基本的に自らの迷宮に属する眷属及び従徒に対して、その心の中で念じた意思を空間を越えて言語等の形で伝達するテレパシー能力。
2章末時点で、主人公の能力・爵位では【闇世】において半径2kmの距離で、"異界の裂け目"を越えない限りにおいて意思の疎通が可能。
なお、眷属同士もまたこのテレパシー能力を行使できるが、特別な役割を持った眷属によって中継されない限りはあくまでも迷宮領主自身を介したものとなる。
また、一定の条件下では、他の迷宮領主等によって"盗聴"される恐れが示唆されており、「情報戦」の次元においては、【眷属心話】技能に頼らないその迷宮独自の通信手段の確立が基本となっている。
○迷宮施設/施設
迷宮領主がその世界認識によって構築した【○○使い】と現される「権能」によって、迷宮と迷宮経済を構成する一要素として生み出した、その迷宮の法則に服す形で維持される一定の機能を有した装置、または場所にして小領域。
眷属との違いは、必ずしも物質的な身体を与えられている場合に限られず、基本的に不動であり、時に概念的に、迷宮内のその場所やその小領域に存在して、より細分化された一定の迷宮法則上の効果や権能を発揮・発動させるものを指す場合が多い。
ただし、この差は相対的なものである場合も多く、一定の能力や役割を有した眷属達が集まる「場」が、迷宮領主によって『施設』と認識されて成立する場合も多い。
○迷宮従徒/従徒
元々はその迷宮の法則に服していなかった者が、自ら服属を求め、その意思を迷宮領主によって承諾された時に、この者はその迷宮の新たな迷宮従徒となる。
彼らは後天的に迷宮の法則に属する力や権能を与えられることで、眷属や施設に次ぐ形でその迷宮の一部に加わる。それがどのような形を取るかは、【○○使い】という表現によって表される迷宮ごとの固有法則・経済の在り方によって変わってくるが、一般的には、迷宮領主が眷属や施設を生み出し、指揮し、操る機序やその過程、迷宮経済の一部などの管理管制を補助する存在となる場合が多い。
なお、従徒から離脱することは、その迷宮に特別な法則が無い限りは本人の自由意志によっており、迷宮の情報や与えられた権能の一部を持ち逃げされてしまうこともあり得る。
*従徒献上・眷属(従徒)下賜ルール
迷宮領主に対し、従徒は自らの持つ"知識"を選択的に共有することができる。
また同様に、迷宮領主もまた自らの持つ"知識"や情報を選択的に従徒や眷属に与えることができる。
*迷宮従徒への干渉ルール
迷宮領主は、従徒や眷属の『技能』や『職業』に干渉することができる。(『称号』は不可能)。
特に『技能』については"点振り"を行うことができ、『職業』については、もし「未設定」であった場合、その選択候補の一覧を見ることも、そこから選択することも、さらに選択設定後に一定期間を経て変更することも可能。
ただし、2章末時点ではこれらが主人公のみの特権であるのか、他の迷宮領主達にも当然に可能であると知られているかは判明していない。
○迷宮経済
迷宮の維持において、その独自の法則と秩序が"魔素"と"命素"の消費によって成り立っていることから、これらを基本とする各要素・各資源を数値化して、経営的観点からその収支の循環と運営に焦点を当てた概念。
如何なる固有法則に基づく迷宮であっても、、その根源には"魔素"と"命素"の取り込みから利用までの過程が存在している。
この点を客観的に分析することで、自身の迷宮についてはその効率化と合理化を展開させ、敵対する者の迷宮については、その弱点を突いて破壊と寸断による無力化の方策を検討することができるようになる。
*命素欠乏・魔素欠乏
迷宮経済において魔素と命素の収支が赤字となった場合、これらの資源を必要とする「全て」の法則・眷属・施設が欠乏状態に陥って同時に停止すること。言うまでもなく危機的な状況であり、早急に「間引き」等によって収支を改善しなければ、わずかな手勢や機能さえも働かせることのできない絶対的な無防備状態であることを晒すこととなる「状態」。
*裂け目移動問題/領域リセット問題
迷宮の中心となる迷宮核が【人世】から魔素と命素を吸入し、【闇世】に適合した魔素と命素に変換する機能を帯びていることから、特に、吸入される側となる【人世】における"裂け目"の位置は迷宮経済に多大な影響を与える。
具体的には、"裂け目"そのものを移動させた場合、【人世】から【闇世】に流れ込む魔素と命素の量と性質が大きく変動することにより、保全的に、【領域】の設定がリセットされてしまう。これは迷宮経済が混乱に陥ることを意味しており、ある意味で"裂け目"そのものの移動に関する制約ともなっている。
○迷宮抗争/迷宮闘争
迷宮領主同士の本格的な争いを指す。
それは独自の迷宮経済同士の衝突という形を取ることとなり、互いの固有法則がぶつかり合って相食らい形を取るが、主に「眷属戦」「領域戦」「情報戦」という3つの段階から成る。
*眷属戦
【○○使い】によって表される、その迷宮によって生み出された生命にして尖兵たる存在同士の闘争。眷属の種類や性質は多分にそれぞれの迷宮領主の「世界認識」の影響を受けており、相性差や法則差が如実に現れやすい。
*領域戦
迷宮領主同士の迷宮経済の衝突の一場面であり、眷属戦と異なり、その固有法則に基づいた【領域】の広げ方の違いや相性差によっては一方的な展開となることもあり得る。
これに競り負けて【領域】を減らされた側は、迷宮経済に大きなダメージを負った場合は最悪「魔素欠乏・命素欠乏」に陥るリスクもあり、結果的に眷属戦における長期的な抵抗が厳しいものとなっていく。必ずしも「迷宮闘争=眷属戦」ではないことを示す重要な段階。
*情報戦
それぞれの独自の世界認識に基づく固有法則同士が衝突する迷宮闘争において、眷属戦あるいは領域戦における彼我の性質・実力・特性とそこから導き出される相性差に関する分析は迷宮領主にとって最重要のものである。
何故ならば、「世界認識」によって迷宮が変化・成長するという性質上、仮にある時点である要素について敵対者には不利であったとしても、その法則の仕組みを理解さえすれば、迷宮領主は自らの迷宮法則を、ある程度、その要素に対抗可能な形で指向付けて変容させることができるからである。
例えば【蟲使い】が【樹木使い】の独自の情報通信システムに対して、それを乗っ取ることができる眷属を生み出した例などが挙げられる。
このため、迷宮闘争には必ず熾烈な「情報戦」の段階があり、他の段階が進行していたとしても、後から対抗札を創造するという意味でも、情報戦の重要性は終始損なわれることはない。
こうした「情報」を得るための手段についても、迷宮領主ごとの権能と法則による独自の形態が発露していることから、まさに前哨戦の段階から既に迷宮法則同士の衝突は始まっていると言うことができる。
*相性戦
以上、眷属戦から情報線をひっくるめて、迷宮間の闘争には「相性」が存在している。
その所以は、迷宮そのものが迷宮領主自身の「世界認識」によって、時にかなり極端なシステムを有したものとなりがちであるため、そのシステム同士の"かみ合わせ"によっては一方的な展開となることも珍しくはないためである。
故に、この「相性戦」での有利を取り、不利を先んじて潰すための「情報戦」こそ、長く生き残ってきた者にほど最重要視されている。
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□エイリアン迷宮関係
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○報いを揺籃する異星窟
迷宮領主【エイリアン使い】オーマが支配する迷宮の真名。
1章末にて、【闇世】の実力者たる迷宮領主達の会合の中で宣言する形で自ら命名した。
"異星"に「エイリアン」のニュアンスを表しつつ、この迷宮を訪れる全ての者に、その者が成したことと望むことに対する応報を与えるという「世界認識」によって構築された迷宮であることを示している。この意味において、眷属たる「エイリアン」達はその変異(進化)において強烈な「役割」への希求を内在する本質として抱えていると同時に、従徒として【異星窟】に加わった者達は、誰もが、エイリアン達と大なり小なり交わり関わって連携していかねばならないことが仄めかされている。
○エイリアン関係
*進化・進化系統図
【エイリアン使い】の本質は、エイリアン達の強烈な役割への希求と、その役割を満たすための急激かつ強烈なまでの変異にある。
それは、常の自然・生態法則であれば、何百何千の世代を経て徐々に自然選択される形で「進化」すべきものが、あたかも「一代」で実現されるかの如くの荒々しさであり、生命の冒涜的なまでの容赦の無さが体現されたものであり、故に「変異」と呼称すべきものが「進化」として"認識"されている。
こうした「進化」の系譜が、オーマの【情報閲覧】技能と【因子の解析】技能の組み合わせによって"最適化"された結果、表示されるようになった樹状図が「進化系統図」である。
*因子
【エイリアン使い】の独自法則たる"進化"の核となる要素。
迷宮領主オーマが望む「役割」が、それを成すために必要な"現象"として整理・解釈されることで、その「設計図」として、『因子』と書いて『ジーン』と読ませる形で現されている。
すなわち【エイリアン使い】は、遭遇し見定めた現象を、その現象を再現するための概念・法則的な「設計図」として『因子』の形で定義し、これを各エイリアン達に注ぎ込んで組み合わせることで、彼らをそれぞれの役割に応じて「進化」させていくことをこそ、その迷宮法則の根幹としている。
なお【人世】の魔法学における「属性」との対応については、魔法学の項を参照。
*名付き
【エイリアン使い】オーマにより、群体性に基づく集団的連携能力をこそ基礎とする"名無し"のエイリアン達の中にあって、あえて指揮個体として"名付け"を行われ、個別的な自我を有するようになった個体達。
独自の『称号』を獲得するなどの恩恵を受け、同系統の他個体よりも強大化する傾向が強いが、全てのエイリアンを"名付き"にすることは逆に全固体を再び没個性化させかねないものであると主人公に認識されている。
2章末現在、誕生している者ではギリシア文字では「アルファ」から「ニュー」、その他「ジェミニ」と「ヤヌス」が存在している。各詳細は「登場人物の紹介」を参照。
*三連星
"名付き"達のうち、「ゼータ、イータ、シータ」から成る"名付き"同士の連携能力を高め、それをエイリアン全体の群体知性にフィードバックすることを目的として『称号』を得るように誘導された3個体。詳細は「登場人物の紹介」を参照。
*亜種化/遷亜
進化しない程度に、しかし『因子』に表される一定の現象を取り込むことで、基本的にはそのエイリアンの系統でありながら、付加的派生的な能力を得ること、または与えられること。
狭義には、エイリアン種族技能である【遷亜】を通して付加的な『因子』を与えられて変異することを言うが、広義には、他の技能による組み合わせや時にエイリアン同士の組み合わせなどで特別な役割を担うように調整されたものを指すこともある。
*煉因強化
エイリアン=ファンガル系統『煉因腫』により生み出される、技能にも因子法則にもよらない、独自の各種生態的強化を成す小変異。
エイリアンの種ごとに、異なる個体を少しずつ解析することで、徐々に強化項目が発見されまた強化可能な値が増大していくが、そのためには魔素と命素だけではなく煉因腫によって要求される様々な有機的・無機的な素材が必要となる。
2章末時点では【遷亜】と併用できない問題点が存在しており、水面下で少しずつ研究開発は進められているものの、劇的に活用されてはいない。
*天恵
あらゆるエイリアンの最初期の形態である『幼蟲』のみが、上2種の強化と引き換えに得ることのできる強化。
この技能を取得すれば、収支プラスとなる追加の技能点を得ることができる強力な効果であるが、2章末現在、これを活かすためには【遷亜】または『煉因強化』によって得られる能力と、追加で得た技能点によって伸ばすべき技能の比較が必要であり、トリレンマが成立してしまっている。
*装備型エイリアン
エイリアン達のうち、主にエイリアン=ファンガル種などにおいて、他のエイリアン等に「装備」されることで共同してその実力を発揮し、役割を担うようになった者達の有り様を示す表現。
例えば『触肢茸』が難所を移動するための追加の「腕」となったり、『鶴翼茸』が文字通りの"翼"となって一時的な飛行能力を与えるパターンなどが登場している。
さらに2章末現在、一部の遠隔攻撃手段を持つエイリアン=ビースト種についても、技能【矮小化】や煉因強化【脚部退化】などを併用することで「射撃武器」と化すことができる運用法が検討されている。
*擬装部隊
【エイリアン使い】が【人世】に眷属を送るに当たって、他の生物に融合する能を持つエイリアン=シンビオンサーや、この種の存在から発言したエイリアン=パラサイトの系統に『擬装』因子や『隠形』因子などで【遷亜】したことで隠密性を高めた眷属部隊。
主に『脱皮労役蟲』や『表裏走狗蟲』などから成り、普段は【人世】の生物に擬態して監視や調査や探索の任を担っている。
*臓漿照か玉/恐慌爆弾
エイリアン=ファンガル系統『臓漿嚢』によって生み出された臓漿の内側に様々な劇物・兵器転用物・エイリアン個体すらをも詰め込んで射出する際に用いられた表現。
文字通りにその爆裂の際には内容物をあらゆる意味でぶちまけて射出先を爆撃するだけでなく、ぶちまけられた臓漿自体の対エイリアン強化、対敵対者弱化を同時に展開できることから、制圧という観点において凄まじい猛威を振るった"活用"法。
○素材・資源
*魔石・命石
【エイリアン使い】においては、エイリアン=ファンガル系統『凝素茸』によって生成される魔素と命素の結晶化物。
迷宮経済の基礎的資源としての価値は純粋な魔素・命素と大きく変わらないが、持ち運びができること、生成物であるため産出量が【領域】の収入よりも大きいこと、【人世】において高価値商品として取り扱うことができる可能性があることなどが注目されている。
その生成効率は非常に高く、1章では【エイリアン使い】が誕生したばかりの郷爵でありながら、【樹木使い】リッケルが大公に多大な借款を負ってようやく整えて襲来しきた戦力に対抗するほどの迷宮経済を整える基盤となった。
なお、【樹木使い】においても『魔素吸い花』『命素汲み花』という同系統の役割を持つ眷属が存在しているが、この形態で魔素と命素を保全できる能が【エイリアン使い】に特有のものであるか、ある程度迷宮領主達にとって共通の方式であるかどうかは、2章末時点では詳細未出。
*属性結晶(属性魔石)
【エイリアン使い】においては、エイリアン=ファンガル系統『属性砲撃茸』と『属性障壁茸』が、その属性砲撃効果または属性障壁効果を発動するための核として利用する「結晶体」を指す。
この「結晶体」の成分は、彼らの進化前のファンガル系統である『凝素茸』が生成する「魔石」と同一であり、無属性の「魔石」と入れ替えた場合、上記2種が割り当てられている「属性」によって染めることによって量産可能であることが判明。2章において、オーマによる【火の魔石】という「一石を投じる」行為の原因となった。
*浸魔根・浸命蔦/浸透根蔦
【エイリアン使い】の"裂け目"が、【人世】側においては森林の中にあったことから、"裂け目"を越えて伸びてきた植物が魔素と命素に浸された結果誕生した特別な魔法素材。
2章末時点では、リュグルソゥム家が利用する「杖」や、エイリアン=ビースト系統『一ツ目雀』の魔法能力を高めるための素材として活用されており、グウィースによる増産が試みられている。
*レイバー煉瓦
労役蟲が吐き出す【凝固液】を、主に洞窟掘削の過程で生じた土塊や岩礫と混ぜて作った直方体のブロック。
主に地上部の簡素な建築物・構造物を建築する際に利用されている。
*エイリアン建材
掘削によって生じた岩礫を細かく砕いてから粘土と混ぜ合わせ、噴酸蛆などによる【強酸】によって繊維レベルにまで分解され、漂白された樹木片やらと一定の割合で混ぜ込まれ、仕上げに【凝固液】によって固められた基本的な建築用素材。より強靭な建築物や工作物を建築する際に利用されている。
【強酸】によって溶けやすい性質から、隠し通路や奇襲通路、罠を隠す迷宮坑道内の壁や仕切りなどにも活用されている。
*エイリアン糸
労役蟲の亜種『裁縫労役蟲』が技能【精密操作:凝固液】によって、いわば糸状に【凝固液】を吐き出し、操ることができるようになったものを糸状に固めたもの。量産が進められ、【異星窟】の内装において徐々に活用が増えている。
*強化エイリアン魔力糸
極限まで細く伸ばした臓漿と上記の"エイリアン糸"を混合した素材。
ダリドが【彫刻操像士】としての力を発揮する際に活用した、魔力を通すことで操ることのできる強靭な"糸"。
*エイリアン研磨剤
噴酸蛆の"酸"を水で十数倍に希釈し、垂酩茸から分泌された成分を一定割合で混ぜた液状体。
『エイリアン建材』が【強酸】によって溶けやすい性質を利用して、ピカピカに研磨するために活用される。
*形成不全
『最果ての島』に先住していた小醜鬼達が、【エイリアン使い】オーマに敗れてその被支配種族となった際、エイリアン=ファンガル系統『代胎嚢』によって促成される際に、一定割合で発生するようになった劣化・零落個体。
"おおむね小醜鬼"と評される、不気味の谷じみた「そうであるがそうでない」不安定な状態として表現されており、畸形であることが珍しくないだけでなく、一般的に知性が野生動物以下にまで落ちている。これらを有効活用すべく、ル・ベリが【弔いの魔眼】によって"死の経験"を多重に与えることで強制的に「種族経験」と「知能」を高め、一定の"使い物"とすることに成功しているが……。
*人皮魔法陣
【人世】の宗教組織【人攫い教団】の指導層である『墨法師』達から剥ぎ取った、彼らの主家【騙し絵】家の【空間】魔法の魔法陣が体皮に直接彫り込まれた入れ墨型の魔法陣。
迷宮領主の【領域】能力と相互作用させることで、独自の【転移】技術を行使することができるようになったことが判明したため、主に襲撃してきた【人攫い教団】の信徒達を迎撃する際に回収が重視された"資源"。
ただし、迷宮領主オーマの倫理観から、積極的に増産する試みは行われておらず、2章においては、ここぞという場面で投入する貴重な魔導具として扱われた。
*ゴブ皮魔法陣
小醜鬼が人間種にかなり近い種族である、という事から、リュグルソゥム一族とル・ベリの共同研究によって生み出された、上記「人皮魔法陣」の劣化コピー。
倫理問題を解決しつつ【転移】技術を【エイリアン使い】がより安価に利用するための鍵たる技術として、その安定的な大量生産や損耗を押さえた効果的な利用法の研究が重点的に進められている素材。
○副脳蟲関係
*共鳴心域
迷宮領主本人が中継者となる【眷属心話】の最大の問題点は、眷属のタイプによっては共通の"言語"によって意思疎通ができないこと。特に、エイリアン達はその存在の有り様を含めて、極めて抽象的で概念的なイメージの共感覚的集合体としてしか、たとえ【眷属心話】を通しても主人公オーマと意思疎通をすることができなかった。
これを解決したのが、情報通信・意思疎通・分析特化たるエイリアン=ブレイン系統の副脳蟲達であり、彼らの基本技能である【共鳴心域】はこうした「エイリアン語」を主オーマ及び人間種たる他の従徒達と相互に"翻訳"するだけでなく、エイリアン同士の【心話】による連携においても中枢的な情報センターとしての役割を担うことで、飛躍的に【エイリアン使い】の力を高めている。
特に、ただの群体本能的な知性に基づく連携に過ぎなかった集団行動を、明確な意思の疎通と相互作用による一体的な"共鳴"のレベルにまで高めており、その実力は【樹木使い】が複数の従徒達を駆使して行っていた戦術戦略管制を容易に「圧迫」するほどのものであった。
*部下きゅぴ
【エイリアン使い】オーマが、この名を名乗る以前の「元の世界」の己自身の記憶と"認識"から抽出する形で生み出した、いわば分身に近い存在である特別な副脳蟲達と異なり、副脳蟲自身によって新たに生み出された「部下としての副脳蟲」達を表す言葉。
個体数が制限されていることと、副脳蟲達には及ばない低度の知性のみを有していることから、これが本来設計されていたであろう【エイリアン使い】の情報共有種の知能レベルであったことが示唆されている。
*X機掌位/きゅぴきゅぴ包囲殲滅円陣)
【眷属心話】及びその拡張能力である【共鳴心域】が"裂け目"をまたいで【人世】と【闇世】の間では直接通らないため、迷宮としての意思疎通と情報共有に一定の難がある状態を解消すべく、副脳蟲達が編み出した儀式。部下きゅぴにも実行可能。
それは"裂け目"を挟んで、手(触手)を繋いだ数体の副脳蟲がぐるぐると回転することで、擬似的な「世界反復横跳び」を行うものであり、次々に副脳蟲同士を介して2つの世界でそれぞれ受け取った情報を、リレー方式で次の副脳蟲に伝達することにより、可能な限りタイムラグを消去する形で両界の迷宮全所属者の間で【共鳴心域】を形成する必殺の殺法である。
*代理行使/代行行使
副脳蟲たる6体はただの眷属ではなく、従徒であると同時にオーマの分身に近い存在であるため、一部の迷宮領主技能を代理行使することができる。
*きゅーぴーえす
オーマの技能【精密計測】と【情報閲覧】が"最適化"されて生まれた地点記憶能力が副脳蟲達の【共鳴心域】と組み合わさった結果、概念的な3次元モデルの「地図」がほぼ正確な座標と共に【共鳴心域】の領域内に展開されており、さながら電脳時代の電波的地図案内者の如く、直接オーマや他のエイリアン、従徒達の脳内で移動経路を案内することができる。
○主人公オーマの能力関係
*黒穿
1章で『最果ての島』に流れ着き、小醜鬼レレー氏族の長が使っていたものをオーマが接収した黒い槍。
非常に古い古代語による紋様が刻まれており、魔法だけでなく、迷宮領主としての能力もまた通す力があることが判明した謎めいた装備であるが、その詳細や来歴は未だ不明。
*火葬槍術士
【エイリアン使い】オーマが副伯に昇爵した際に選択候補として現れ、2章末現在も引き続き就任している職業。
特殊な【火】の技を扱い、呪詛に対抗する手段を持つ。2章末においては、単なる属性論に限られない様々な種類の【火】を、オーマの記憶にあるそれごと束ねて【氷凱竜】の劣化意識体を殲滅する力を発したが、それ以上に【悲劇察知】の技能によって、オーマに己が対峙していくこととなる様々な物語の展開を報せる装置として存在感を発揮している。
*勁絡辮
【エイリアン使い】オーマが『ルフェアの血裔(魔人)』として取得した【異形】。
一見、後頭部から長く伸ばしおろした辮髪のように見えるが、その内部は脳に直結していると思われる神経の束である。
自らの眷属たるエイリアン達と接続するためのものであることが示唆されているが、2章末時点ではその詳細については未出。
○下位組織・勢力圏等
*ハンベルス魔石鉱山
【人攫い教団】の支部であった『ハンベルス鉱山支部』の成れの果て。
全体が【転移事故】に巻き込まれる形で崩落し、さらに持ち込まれていた大量の【火の魔石】と【空間】魔法的な意味で同化・融合されており、【エイリアン使い】による『ハンベルス鉱山支部』への襲撃の証拠隠滅と、【騙し絵】家に【闇世】からの攻撃という真実を見誤らせるつつ"裂け目"に誘引することを兼ねた一手として誕生した。
*新生リュグルソゥム家
【輝水晶王国】第13位頭顱侯【皆哲】のリュグルソゥム家が誅滅された後、生き残った兄妹ルクとミシェールは【エイリアン使い】の下に落ち延びてその傘下に降った。
『疾時ノ咒笛』と呼ばれる、寿命が約30分の1にまで縮められる呪詛によって次代への存続が絶望的であった中、エイリアン=ファンガル『代胎嚢』による小醜鬼達の「促成」という知見が解決策になるかもしれないと示唆されたことで、二人が自ら望んでその実験台となった結果、リュグルソゥム家秘技術『止まり木』による精神の超高速成長と代胎嚢による肉体の高速成長が完全に噛み合う。
この結果、リュグルソゥム家は人種(オゼニク人)でありながら、通常の人間とは全く異なる肉体と精神の成長過程を経る存在となり、さらにそれは【エイリアン使い】の力と法則の中にあることが前提のものとなった。
この意味において、誅滅される前のリュグルソゥム家とは、血統は連続していても存在としては根底で変化してしまった部分がある――と【エイリアン使い】オーマにも、そしてこの「促成」によって誕生した次代ダリド・キルメ兄妹自身に"認識"されており、実質的に彼らは「新生リュグルソゥム家」と呼ぶべき存在として活動していると言える。
・疾時ノ咒笛
リュグルソゥム家の侯邸で隠し部屋に逃げ込んだルクとミシェールを襲った《驫?》色の存在により、打ち込まれた強烈な呪詛。
寿命を約30分の1にまで縮める呪詛であり、首の周りを覆う赤黒い紋様の広がりとして、その残りの刻限が表現されている。魔法学的対処でも、オーマの【エイリアン使い】として思いつく限りの対処によっても、聖女リシュリーによっても解呪することはできなかったが、『末子国』最高指導者である『聖守』の力と同質のものであることが2章末において明らかとなった。
*珍獣売り
元『ハンベルス鉱山支部』の支部長であり、"名付き"エイリアンのヤヌスとジェミニとそれぞれ融合したゼイモントとメルドットを『擬装部隊』として【人世】ヘレンセル村に送り込むに当たって、リュグルソゥム一家が考案した「カバーストーリー」。
『次兄国』帰りの「珍しい動植物」を売る商人という体で【闇世】の『最果ての島』の動植物を堂々と持ち込み、オーマがヘレンセル村にスムーズに入り込んで信用を獲得する足がかりを得ることに大いに役立った。
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□技能点・位階上昇システム関係
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○技能
その技能の"名称"によって表される、ある一定・一連の期待される効果を、その技能を有する者に、才能や恩寵、後天的に付加される固有の異能に近いものという形で与えることで、それが役立つ場面では他の者と比べて格段に「生きやすく」するという超常の法則。
決して無ければ生きられないということは一切無いが、あれば確実に、その技能については「楽」になることが最低保証される程度の存在。
2章末時点においても、主人公オーマはこれを「ゲームのスキルシステム」のような形で「認識」することができているが、他の者達、少なくとも迷宮領主ではない存在は技能の存在を明示的に「認識」できてはおらず、また、他の迷宮領主達に関しても、【エイリアン使い】オーマのようなはっきりとしたパラメータ表示的な形式では「認識」されていない可能性が強く示唆されている。
また【人世】においても、大国の上位支配階級でもあったリュグルソゥム家クラスでさえも、世界に明確にこうした「仕組み」が存在するという確証は持っていなかった。(経験的に"傾向"を薄々感じていた側面はあるにせよ)
*ゼロスキル
技能点を振らずとも、「取得可」状態のままでありながら一定の効果が発揮されること。
その技能のルートに対する本人の意識と生き方を誘導することで、本人努力による"点振り"に誘導するための仕掛けであることが示唆されている。
*身体知
技能によらず、その種族または生物種が本来的に持っている機能としての能力。
例えば、エイリアンはそもそもその身体構造上、技能無しでも【おぞましき咆哮」を放つことができる。
ゼロスキルにはこの「身体知」と相乗するタイプのものがあり、知性種ではないただの生物であっても、よりその「種族」的な生き方に誘導する効果があることが示唆されている。
*【心得】系統技能
主に人間種の職業の大半に存在する技能系列。
【○○の心得】【〇〇の極意】【○○の真髄】【○○の秘奥】と発展していく。
2章において、この技能系列が高い者ほど同年齢かつ同職業の他者よりも「位階と"自然点振り"率が高め」である、という傾向が見受けられたことから、これの正体と本質はその者の「生き方」そのものを思考と意識レベルで強烈に誘導するものであることが示唆されている。
明かそうものならば、知性ある種としての自由意志そのものを根底から否定しかねない事実であるため、この気付きについて、オーマは配下達に一部を明かしつつもその取扱について慎重を期している。
*【加護】系統技能
主に人間種の種族の大半に存在する技能系列。
特に【人世】の知性種族のものは【守護神の選定】【守護神の眼差し】【守護神の加護】【守護神の契約】【守護神の依代】として発展しており、【闇世】の迷宮領主の強力な権能である【情報閲覧】に対する対抗技能であることが明らかとなった。
○技能テーブル
技能は基本的に、1つずつ全く新しいものが取得されるであるだとか、条件を満たすことで随時出現する形式ではなく、あらかじめ『種族』『職業』『称号』(そして例外的なものである『継承』)といった事項に紐づいた、数種類から数十種類程度のパッケージ化された「技能群」という形で与えられている。
これが可視化されたものを「技能テーブル」と主人公オーマは呼称しているが、ある技能が前提となって上位の技能に派生していくというツリー構造となっている事から、得意なことがより得意になっていく、という作用によって無意識下には強烈な生き方の誘導装置となっていることが示唆されている。
○技能点
技能を成長させる要素であり、以下の条件で与えられる「点数」。
・位階が1上昇するごとに、知性種であれば3点。その他の生物種であれば2点。
これは迷宮眷属含むが、ただし主人公の認識が変化した"名付き"は知性種扱いとなっている。
・初期技能点が存在する場合もある。
・『称号』か、または迷宮眷属か迷宮従徒であれば「従徒職」を得るごとに3点。
・迷宮領主が【眷属技能点付与】を取得していれば、MAX時、知性種に対しては「位階3ごとに1点」、その他に対しては「位階6ごとに1点」。
この点数が"振られる"ことによって、その技能が成長し、より高い効果を発揮するようになったり上位技能や派生技能の取得条件を満たすことができるようになる。
ただし、その「点振り」には以下のルールが存在する。
[点振りルール]
・その1:
「未振り」がある状態で、その技能を向上の意思と共に継続的に発動させていると、対応する技能に"点振り"されやすくなる。いわゆる"自然成長"的な現象であり、オーマが当初「熟練度システム」と誤解した部分であり、迷宮領主ではない存在(技能システムに一切無知な者達)であっても技能を成長させることができる唯一の機序。
・その2:
迷宮領主は、自分を含めた眷属や従徒に干渉して能動的に"点振り"できる。
・その3:
"神"は迷宮領主を含めて、生物に対して"点振り"を行うことができる。
これは、2章では特別な駒であることが示唆されている「リシュリー=ジーベリンゲル」という、非迷宮領主でありながら振り残しゼロという存在がオーマの前に現れたことによって示唆された。
点振りルール「その1」が存在しているにせよ、システムとして一般には知らされていない法則であるため、一般的に多くの者がその人生の秋日であっても"振り残し"ていることが2章時点で観察されている。
○種族
迷宮領主の技能【情報閲覧】によって観測される「ステータス」の中に、対象の属性を表す項目の一つとして表示されるパラメータ。
主にその対象が所属する、ある類似かつ共通の土台を有する一定の生物的・血縁的・遺伝的・地縁的・文化的または社会経済的な集団という意味での「種族」を表すものであるとオーマは考えている。
ただし「主族」「支族」「汎種」「侵種」といった語が存在すること。
オーマ自身が迷宮領主という"種族"であること。
種族そのものが変化した従徒ル・ベリや、"新"種族としてグウィースが誕生したこと。
さらには自らの眷属であるエイリアン達がまさに眼前で様々に種族をその技能テーブルごと変容させた事例が発生したこと。
などから、オーマは『認識の多数決』現象こそが「位階・技能点システム」を含めた一連のこの世界法則の根幹にあるという仮説を立てている。(後述)
*種族技能
ある「種族」が有する、その「種族」の特徴や存在を表現する形でパッケージ化された20~30の技能群。
種族が変化する際には、この技能群もまた変化元から派生するような形で変化することをオーマは観測した。
○職業
迷宮領主の技能【情報閲覧】によって観測される「ステータス」の中に、対象の属性を表す項目の一つとして表示されるパラメータ。
主にその者が、自身が属するある社会集団内において、どのような「役割」に就いているかを示すという意味での「職業」を表すものであるとオーマは考えている。
「種族」と比べれば、より変化、すなわち"転職"しやすいものである可能性が示唆されており、そのことは迷宮領主による従徒の職業選択介入において、一定期間経過後に「再選択」できることからも証されている。しかし、技能や種族の存在と同じく、非迷宮領主である者達にとってはその存在が明示的には認識されていない。
しかし、リュグルソゥム一家が『高等戦闘魔導師』が『職業』と化していることから気づいたように、ある社会における多数の人々に「それが職業である」と認識されることをトリガーとして「職業」は定義されあるいは発生し変容することが強く示唆されている。
*職業技能
ある「職業」が有する、その「職業」の役割や本質を表現する形でパッケージ化された20~30の技能群。
「転職」が発生(迷宮領主による"再選択"を含む)した際には、技能テーブルは新しいものに一新されるが、過去に技能点を1点でも振っていた技能については「継承技能」という形で残置され、引き続き技能点で成長させることも可能となっている。
*系統技能
「職業」が人間種にとっての社会的な役割などを示す概念であるのに対して、同様に、しかし異なる形での”社会性”という同種族内階級分担・役割分担を示す【エイリアン】達において、それが表現された技能群であり、職業技能テーブルの代替を成す。
なお、包含されている技能の数は、一般的な職業技能群よりも少ない傾向がある一方、「継承技能」という形で残置され、引き継がれるという点は共通している。
○称号
迷宮領主の技能である【情報閲覧】によって表示される「ステータス画面」の中に、その対象となった存在の属性を表す項目の一つとして表示されるパラメータ。
主にその者が、自身が属するある社会集団内において、「職業」とはまた異なる形で、他の者と異なりどのような特筆すべき特徴や役割を有しているか、を表すためのタグのようなもの。
2章におけるラシェット少年や行商人マクハードなどの観察を通して、オーマはこれがただ単に「生き方の小さな誘導」などという個人レベルの干渉ではなく、称号を与えている張本人(すなわち諸神)による「今後、世界で起きる事件や出来事」すなわち展開の"備忘録"であるという仮説を立てた。
*称号技能
ある「称号」が有することにより、その「称号」の意義や特質と適性を表現する形でパッケージ化された数個の小技能群。
○継承技能
「種族技能」や「職業技能」が、種族変化や転職によって一新された際に、以前の技能テーブルから"点振り"をしていた技能について残置させ、引き続きその効果をその者に及ぼす技能について包括している技能テーブル。
○位階/位階上昇
その「種族」らしい経験を積み重ねることで「種族経験」が積み重なり、位階を上昇させることで新たな技能点を与えるという仕組み。
この際に獲得される点数が「経験点」であり、例えば『迷宮領主』は「敵からの防衛」や「迷宮の拡張」などによって経験を得て位階を積み重ねることが観測されている。
また、この仕組みを含めて「技能=生き方の誘導装置」という仮説から、同様の機序が「職業」と「称号」についても存在するとオーマは考えているが、明確な検証は未出。
*位階年齢上限仮説/肉体年齢基準仮説
当初、オーマは位階は年齢によって上限を与えられると想定していた。
後の観察でこれは否定されたが、2章末時点では、グウィースやダリド・キルメの観察とヘレンセル村である程度多数のまとまったデータを得たことから、知性種において肉体年齢までは位階が上昇しやすく、それを越えた場合に経験点の獲得量が制限される(位階自体は上昇可能)仕組みになっているのではないかと想定している。
○「生き方の誘導」仮説
「位階・技能点システム」と「ステータス」上の社会的属性系のパラメータ(種族、職業など)の観察から、2章末時点で、オーマはこれらが本来の世界の自然法則(超常や魔法を含む)とは別に諸神によって"後付け"されたものであるとの疑念を抱いている。
たとえ無意識下でも、その「種族らしい」「職業らしい」「称号らしい」行動を取ることで、能力面における他者との比較優位を得ることができれば、人はより「そういう生き方」に誘導される上、【心得】系列技能によって思考さえもが誘導されている疑いがあるからである。
○「認識の多数決」仮説
「生き方の誘導」の核となる「そういう種族」「そういう職業」を形成する作用が「認識の多数決」である、とオーマは考えている。
特に【エイリアン使い】として、シースーアにおいてほぼ確実に己しかその存在を認識し定義できないであろう「エイリアン」などという存在について、その種族の分化が相次いだことから、同じ作用が人々の集団、つまりある一定の社会においても発生しているのではないか、という仮説に至っている。
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□世界設定
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■世界関係
○この世界/シースーア
諸神と総称される神々によって創造された世界。
【魔法学】における解釈では、それぞれの諸神が別個の「属性=世界の構成要素」を担当したとされる。
主人公オーマ/マ■■が、元の世界から迷い込み、イノリという名前の少女を探すこととなる本作の舞台。
○【人世】と【闇世】
かつて1つの世界として創成されたシースーアであったが、諸神が2派に分かれて相争った結果、【黒き神】が率いる一派が世界内世界として【闇世】を分離して生み出し、他方で分離された側は【人世】と呼ばれるようになった。
【黒き神】を頂点とする『九大神(ルーファ派)』は、自らに付き従う人々の子孫である『ルフェアの血裔』という種族を【闇世】に匿うと同時に、可能な限り彼らにとって元のシースーアに近い自然法則となるよう手を尽くしたとされるが、それでもなお【闇世】は極限の環境である。
○異界の裂け目/世界の罅
単に"裂け目"と呼ばれることも多い。
シースーアが【人世】と【闇世】が分かたれた際、可能な限り元のシースーアの自然法則に近づけるため、【人世】から足りない世界の構成要素を補うために"魔素"と"命素"を「呼吸」するために"裂け目"を生み出した。
【魔法学】の解釈では、これは半分の属性しか持たぬ『九大神』が【人世】側の諸神が担当する属性を強引に解釈し、模倣するためにそうしているのだと捉えられている。
実際に【闇世】では、そのまま吸入された魔素と命素は活用されず、【闇世】の法則に適合した魔素・命素に変換する装置として、迷宮核が必ず"裂け目"の傍に生み出されているが、これはルフェアの血裔(魔人)をして【異形】を発達させ、かつ「魔素・命素枯渇症」を発症させるという別の問題を生じさせている。
*裂け目の通過について
銀色の水面として表現される、この次元の断裂を通り抜けることで、意思ある存在は【人世】と【闇世】を相互に移動することができる。その機序は、【エイリアン使い】オーマが検証した結果、以下の通り。
・その"裂け目"を通って反対側の世界へ行く意思を持った状態で銀色の水面の触れる。
・本人の「通りたい」という認識と、そして「通したい」という認識に基づき、身につけている衣服など「通りたいと思う自分の一部」を含めて銀色の靄に包まれ、【領域転移】に似た機序で反対側の世界に転移することとなる。
・ただし、この「付属物認識ルール」は、迷宮領主の爵位権限による制限には優先しない。具体的には、生半可な小細工では眷属を下級爵位の迷宮領主が通すことは不可能。
※なお、オーマはこの際、副脳蟲という特殊な存在を「己の分身」であると自らの認識を上書きすることによって、上記制限を突破している。
○魔素・命素
【人世】と【闇世】に分かたれる以前からの世界の構成要素とされるものであり、世界法則そのものの根源をなす存在。
迷宮システムもまた、広く捉えればそうしたより大きな法則の利用のされ方の一つであるが、【闇世】においては迷宮領主が絶大な力を持っているため、その迷宮経済を成り立たせるための資源としての"魔素"と"命素"という理解が広く浸透している。
他方、【人世】では少なくとも『四兄弟国』領域において【魔法学(16属性論)】が権勢を誇っており、魔法の源は属性であって、その属性は魔素によって形成されるものと理解されており、命素はそもそも存在が認識されていないか理解されていない状態であることが判明している。
しかし、【聖戦】のラムゥダーイン家の秘技術である【生命】魔法の正体が『命素』の利用そのものであることが、迷宮領主の知識に触れたリュグルソゥム家によって暴かれており、必ずしも【人世】側が完全な無知であるわけでもないことが示唆されている。
○内なる魔素・内なる命素
『ルフェアの血裔』や【闇世】の生物が魔素・命素を吸入するために【異形】を得たのであれば、逆説的に【人世】では、そもそも体内で「内なる魔素」と「内なる命素」を練り上げる形で自ら自活することができていたのではないか、という気づきからオーマが得た視座。
ヘレンセルで治癒術士として活動する中で実際には【エイリアン使い】としての力も組み合わせてその実在を観測したが、魔導の大家リュグルソゥム家をしても直ちには気づけないほど【人世】の存在にとっては「当たり前」のことであった。
個体ごとに『丹田』の位置は大きく異なっているが、迷宮領主技能【魔素操作】【命素操作】によって影響を与えられることが判明している。
なお、ここで言う「魔素」と「命素」は元【人世】生物がその存続に必要な成分としてのものであるため、当然に【人世】の世界法則に服する、つまり【闇世】法則に変換される前の魔素と命素である。
■超常の法則関係
○超常/魔法(広義)
世界の根源的な構成要素であり、生きとし生けるものの「認識」に従う可能性が示唆されている"魔素"と"命素"の働きによって、眼前の自然法則を自在に塗り替え、現象を変容させる術そのものを指す言葉。
オーマ自身については、元の世界の思考に引きずられて「魔法」という言葉もこれに当てていたため、後述する「魔法(狭義)」と用語の混乱が起きるため、この意味での現象変容についてはさらに他の現象変容術を含めた概念として「超常」と呼称するのがふさわしい、と気づきつつある。
なお【闇世】においては、迷宮領主自身が魔素と命素を基礎とする【○○使い】という形で表現される独自固有の迷宮法則に支配された領域を擁することから、いずれもがほぼ「超常」という意味での現象の自在変容について理解していることが示唆されている。
○魔法学(16属性分類論)/魔法・魔術・魔導(狭義)
【人世】において、【人魔大戦】勃発の原因ともなった古代超帝国【黄昏の帝国】において勃興し、物語時点では東オルゼ地方の大国【輝水晶王国】(『長女国』)に引き継がれている支配的な学問であると共に技術である現象変容の術。法則を歪める外法であり、故に「魔」の法。
諸神による世界の創世神話の各記述から、それぞれの神が計16の属性を分担して世界の構成要素と成し、シースーアを生み出したとする捉え方であり、『神の似姿』たる人間種もまた、16の属性の組み合わせによって「魔法」を扱うことができるとする。
主人公オーマは自身の「認識の多数決」に基づいて、非常に強力な観念として【人世】全体(最低でも『四兄弟国』圏)に流布されたものである結果、これはこれで独自の力と現実変容の技の一体系を形成したものであると捉えており、それは技能においても【○属性適応】等の形で観察されている。
しかし、超常の本来の考え方に沿えば、魔法学もまた単なるその一つの形態に過ぎない。
*魔法学と因子
こうした【人世】の技術観念が「魔法・魔術・魔導」というオーマ自身の元の世界における用語のイメージと入り混じったことから、【エイリアン使い】の迷宮領主能力において現象を定義する単位である『因子』にまで逆流的に持ち込まれた結果、魔法学に対応するかのような16の『因子』が定義・解析されている。
ただし、実際の【魔法学】における属性魔法の利用と比較して「ずれ」が存在するなど、引き起こされる現象面において完全に対応はしていないことなどが強く示唆されている。
*魔法学と迷宮領主
【闇世】Wiki、つまり迷宮領主達が編集した各記述では「魔法"的"なもの=迷宮の力」と捉えるような記述が目立っている。
そもそも「超常の力」の主な使用者達が【闇世】の迷宮領主達や彼らが擁する迷宮そのものであることから、"【人世】の魔法"という狭い意味での「魔法」については、制限された理解であるとして一部の迷宮領主達には低く見られている概念であると示唆されている。(【人体使い】など)
*属性/属性分類
『火・風・水・土・雷・氷・闇・光・空間・精神・重力・混沌・活性・均衡・崩壊・死』から成る。
ただし、諸神との対応という点では【土】属性については重複が起きているが、その理由や詳細については未出。
*属性分類否定論
2章に登場した【魔導大学】の追放者サーグトルが傾倒していた最左の"異端"であり、彼の追放の直接の原因。
16の属性分類を否定し、魔法をより自由な概念として、自在な認識によって発動されるべきものとする思想であることが示唆されており、サーグトルはその今際に「属性分類とは人々の"認識"を檻の中に閉じ込めるため」であるという発想に至ったが、その当否は不明。
*魔法類似現象
『長女国』外、特に西オルゼの【西方諸族連合】の諸族が扱う様々な、魔法学の理論に必ずしもよらない超常の術については『魔法類似』という言葉で括られている。それでもあくまでも16属性に基づく説明が試みられており、例えば『呪詛』については【混沌】属性と【崩壊】属性によるものであるとされている。
これは、魔法学を上位においてあらゆる超常をその枠内に押し込めて解釈しようとする試みに他ならない。
*詠唱・魔法陣
魔法による効果を現実に発動させるためには、使用者がその魔法の"意味"を実際に自らの意思で展開しなければならない。
声帯から発される音に意味を乗せるというのが「詠唱」という手法であるが、魔法学ではこれだけに限られず、描かれた文字や幾何や象形にも自然法則や物理法則を塗り潰す現象を呼び出す機能があると捉えられていることから、こうした「魔法陣」という手法もまた、その重要な発動法として理解されている。
なお、2章において【エイリアン使い】オーマは、このことから「"文様"や"パターン"やその連続と変遷と転換という"文脈"」と着想し、眷属たるエイリアン達に地中を掘らせたり天空を飛行させたりした軌跡そのものを【魔法陣】と成した。
*察知系・感知系魔法/感知魔法
魔法の属性やその他の魔法類似現象の発動を知覚し、その位置や方角といった情報を特定するための魔法分類。
魔法学においては16属性論に縛られているが、技能としては、属性に縛られぬ多岐多様な【○○察知】【○○感知】というものが存在することに主人公オーマは気づいている。
*妨害魔法・対抗魔法
ターゲットとなる魔法が精密であり"異物"を流し込んだ際に劇的な機能不全を起こすものが『妨害魔法』であり、発動された魔法的効果(現象の変容)に対して完全に「逆の結果」を引き寄せる魔法によって打ち消してしまうことができれば、それは『対抗魔法』と定義される。
*均衡属性・崩壊属性
魔法学においても最も難解な概念であるとして理解されている属性。
2章時点では「乱れたものを均す」こと、そして「戻すとは異なること」が【均衡】属性の基本的な性質であると示されており、自然法則などにおける"正常な変遷"は【崩壊】属性ではない、ということが示されている。
これは濃淡としても捉えられており、例えば『呪詛』への対抗に【均衡】属性が有効とされているのは、指向付けられた害意ある現象を【均衡】属性によって散らすことができるとされているため。
なお【エイリアン使い】オーマの『因子』能力からの理解としては、『イリレティアの播種』グウィースが"ヌシ"として行使する「生命の循環」もまた【均衡】属性の解析に資している点が注目されている。
*活性属性と命素
迷宮領主の知識を得たことで、リュグルソゥム一族が示唆した視点。
【魔法学】における【活性】属性は【命素】と関係が非常に深い可能性があり、例えば【アケロスの健脚】という活性属性魔法が『武技』であるとする異説との関連や、魔法学そのものではない頭顱侯の秘匿技術ではあるが、【聖戦】のラムゥダーイン家が駆使する【生命】魔法との関連が指摘されている。(後述)
特に、命素の働きは「超常を抑制する超常」として、魔法においては人の欲望や信念を捉えて現実をそれぞれの属性に従って"上書き"していく作用であるのに対して、その作用を術者本人に逆流しないように抑える力であることにルク=フェルフ・リュグルソゥムが気づいたが、気づいた状況が状況であったためこの理論への本格的な検証は2章末の時点では未だ行われていない。
■その他の超常
○武技
【人世】において、魔法使いではないはずの一部の武人が扱う超常に半歩踏み込んだかのような現象変容をわずかに伴う術。
【アケロスの健脚】問題を惹起する一要素でもあったが、迷宮領主の知識を得たリュグルソゥム家により、命素がその作用の根源であることが強く示唆されている。
○神威
【人世】の諸神がその力の一端を地上のただ人を通して"再現"し、招来させる超常であり、その行使者は【聖人/聖女(長女国では"加護者")と呼ばれる。その行使に特化した特殊な職業が存在しているが、その詳細は未だ不明。(【聖言士】など)
2章では、【エイリアン使い】オーマが教父ナリッソの協力によって【闇世】で神威が発動された際の影響を実験したところ、『九大神』が緊急的に「対抗」する形で「介入」し、暴発によってその発動が妨害されることが観察された。
迷宮領主が神威の気配に対しても鋭敏であることが示されている一方で、2章末時点で、それを【闇世】に呼び込んだことが他の迷宮領主に察知されていたり、もしくは何らかの懲罰が発生するか否かについては不明。
○呪術
【氷海兵民】などの『四兄弟国』にまつろわぬ諸族が扱う魔法類似の総称的表現として用いられることが多い。
○呪詛
魔法学においては【崩壊】属性と【混沌】属性によって説明される、対象の身体や存在に対して直接重大なる変容を与える超常。
【エイリアン使い】の"世界認識"においては『因子』としても解析されている。
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□地理地形・都市など
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■闇世地形
○大陸/超大陸
【全き黒と静寂の神】が最初に異界の虚無に降り立った際に「全き世界よ在れ」と述べ、一握の土くれから生み出した広大なる真円の大地を基とする、【闇世】全体に形成された巨大な唯一大陸。
周囲を果てなき大海(超大海)が取り囲んでおり、極限の厳しい自然環境と自然法則によって包まれており、常人が開拓していくことはおろかただ生き延びていくことすら困難。迷宮領主でもない者達が住むことのできる地域は限られているが、それでも可能な限りシースーアの自然法則に近づける努力がなされたとされている。
○超大海
【全き黒と静寂の神】が最初に異界の虚無に降り立った際に「全き世界よ在れ」と述べ、一握の土くれから生み出した広大なる真円の大地を囲むように生み出された、【闇世】という球状世界の大半を覆う果てなき大海。
その裏側が何処へ通じているのか、いないのかも不明であるが、【気象使い】が「全ての空と海を支配する」と語られていることから、その関連性について主人公オーマは疑念を抱いている。
○ハルラーシ回廊
"大陸"を巨大な時計と見立てた際に、あたかも時計が19時35分を指した際に、長針と短針によって挟まれた鋭角の領域。
長針が「東壁」、短針が「西壁」となって、まるでえぐり取られたような断崖に挟まれた領域の底面であり、大陸中央部から南南西の海岸まで続く。ちょうど日本列島がすっぽりと入り込むかのような広大な地域であるが、数多くの『自治都市』を擁し、【闇世】では最大の人口密集地帯。
元は『生きている樹海』と呼ばれる領域が存在していたが、初代界巫である【城郭使い】クルジュナードにより引き起こされた【人魔大戦】の戦禍により、抉り取るように吹き飛ばされて形成された"回廊"であるが、詳細な経緯は2章末時点でも未出。
迷宮領主の集団である『励界派』が活動しており、また【五大公】の一角である【幻獣使い】が関心を寄せている地域でもある。
○生きている樹海
かつてハルラーシ回廊がハルラーシ回廊となる以前、迷宮に頼らぬ者達にとっての"最も安全な土地"と呼ばれた、かつてのハルラーシ回廊の中域部一帯を覆う、巨大な樹海。生半可な迷宮の侵入すらをも拒む極限の環境でありながら、『九大神』の恩寵によりあらゆる『ルフェアの血裔』にとって住みよい環境に"調整"された楽園の地であったと、今なお【闇世】の市井の民達の間の伝承にのみ残る言葉。
○最果ての島
"大陸"の南南西岸より、船で10日~2週間程度の距離にある絶海の孤島。
多頭竜蛇の縄張りとされており、長らく一顧だにされぬ未開地であり、放置されていた。
かつて"大陸"では殲滅されたはずの小醜鬼であったが、ゴゴーロという名前の氏族長がここへ辿り着き、その子孫が「11氏族」を形成していたが、物語の主人公であるオーマによる征服と支配を受け、【樹木使い】リッケルの撃退後はその【闇世】における主要な領域となった。
■闇世の諸都市
○潮幽霊のアモアス
ハルラーシ南西、沿岸の『自治都市』。
"幽霊船"の存在で知られるが、その法則を【死霊使い】に解読された"流刑船"が存在しており、リーデロットやソルファイドが最果ての島に向かう遠因となった。
○花盛りのカルスポー
『生きている樹海』を知る物達の子孫が多く住まう『自治都市』であり、かつて先代の【蟲使い】に支配されていた中で、後に【樹木使い】となるリッケルによって解放される。この際に、多くのカルスポーの民が【樹木使い】となったリッケルの下へ参じて、その従徒集団を形成した。
物語第1章では、偽りの降伏と最果ての島からの"大返し"による奇襲を画策したリッケルであったが、その敗北を察知した【人体使い】テルミト伯によって【樹木使い】としての本拠地の迷宮が陥落。先代の意思を受け継いで、カルスポー支配のための捲土重来を期していた【蟲使い】ワーウェールにより、制圧されることとなる。
*褪せ花病
自治都市『花盛りのカルスポー』において広まる疫病の一つ。
○リャハンデ
【死霊使い】ジャクシャソンと関係があることが示唆されている自治都市。
○ダフィドネ
【傀儡使い】レェパが調略を進める自治都市。
○ヤグラザルカ
【傀儡使い】レェパが調略を進める自治都市。
○逆さ傘のイディルピケル
【人体使い】テルミト伯の従徒であり作品である、エネムとゼイレが、出身地であると示唆している自治都市。
○ネバーラァル
【魔弾使い】グウィネィトが関心を示していることが示唆されている自治都市。
○陽炎のル・ベリ=エリュターレ
ル・ベリの母リーデロットの出身地であり、「ル・ベリ」の名前の由来となった自治都市。
なお、息子が致命的なまでに虐待されぬよう、小醜鬼風の名前でありながらも自身の『ルフェアの血裔』としてのルーツをいつか取り戻すことができるようにするために、この名前が選ばれた。
また、この自治都市で見る者の夢に現れる白い花が「グウィース」と呼ばれており、ル・ベリの"弟"グウィースの名として彼から与えられた。
■人世地形
○オルゼ=ハルギュア大陸
【人世】の北半球存在する東西に長く渡る帯状の大陸。
大まかに西のオルゼ地方と東のハルギュア地方から成るが、「オルゼ」とは古き『黄昏の帝国』が勃興した土地を指しており、オルゼンシア語を操る『オゼニク人』と呼ばれる人族の一派たる人種が文明を形成する地。
○東オルゼ大平原
オルゼ地方の東部領域。
かつて【魔人】が数多の"裂け目"を生み出して侵攻し、牙城と成し、冒し染して拡がり、最も人族と魔人族が激戦を繰り広げた領域。
○淡き抱擁の峡原
オルゼ地方の東西を分かつ境界地形の一つ。
複数の丘陵と峡谷によって挟まれた複雑な隘道であり、ちょうど、右手の指を3本立て左手の指を2本立てて向かい合わせると現れる、都合5本の指に挟まれたようなジグザグな合間によって形成される。ただし、こうした「主道」の道中にはさらに多数の「間道」が存在しており、複雑な峡谷と相まって殺し間が連続する難地である。
この地に陣取る【ウル=ベ=ガイム氏族連邦】にとって、敵対する『長女国』の攻撃を食い止める最終的な防衛線ともされている。
*北ノ顎
『淡き抱擁の峡原』内の地形の一つ。
○ゲール=デスティオ火山
東オルゼの東端にあり、竜人達の住まう【ウヴルスの里】を麓に擁していた火山。
多数の魔獣が生息し、また多くの天然の温泉が存在していたことが示唆されている。
○ハルギュア中央高原
東オルゼ大平原の東方で、オルゼ地方とハルギュア地方の境界を成す大地形。
2章で登場した【火】の魔法適応生物【焔眼馬】は、この地域の出身であることが示されている。
○旧ワルセィレ地域
東オルゼ南西に広がる森と泉を備えた領域。
赫陽山脈から流れてくる雪解け水などの影響で非常に水はけが悪い。
かつて同名の小国家(地域共同体)が存在していたが、2章時点より20年前に【紋章】のディエスト家によって征服された。
水蚯蚓という生物を扱う【農場漁師】による独自の農法などが存在していたが、征服者である『長女国』から送り込まれてくる魔法使い達による魔導の農法により、生産量は急増しつつある。
【四季】の変遷を中心とした独自の法則が存在していたが、これを利用しようとする者達の思惑を中心に2章の物語は展開していくこととなる。
*赫陽山脈
東オルゼ地方の南西において、旧ワルセィレ地域と西オルゼを隔てる山脈。
○星灯りの森/黒き森
西オルゼに広がる「夜のように漆黒」の大森林。
【星灯りの森林国】とその統治者たる『黒森人』達の治める領域。
○大泥原
西オルゼの西方に広がる地形。【ウヴルスの里】とは異なる一派の竜人達や、【秋ノ司】が宿った『泥濘子守り蜘蛛』の出身地でもある領域。
○ネレデ内海
オルゼ地方の南方において『砕けた大陸』との間にある内海。
【白と黒の諸市連盟】(『次兄国』)は広くこの沿岸に広がっており、交易の中心であることが示されている。
ただし、"海魔"が猛威を振るう危険な海であり、【闇世】でグウィースが遭遇した『人魚』が住まう海であることなどから、多頭竜蛇が【闇世】に落ちた"裂け目"が存在する可能性が高いとして主人公オーマに注目されている領域でもある。
○砕けた大陸/砕かれた大陸
ネレデ内海の南方に存在する、幾千とも幾万ともされる「砕けた島々」と「砕けた大陸」から成る領域。
空前の未開地として『次兄国』による"海拓"の対象となっているともされている。
2章時点では、主人公オーマは【闇世】Wikiの記述から、かつて【竜主国】で起きた内乱が原因で「砕け」たのではないかと考えている。
■人世都市
○王都ブロン=エーベルハイス
【輝水晶王国】の首都。輝ける晶石の都。
【星詠み】のティレオペリル家の力によって、曇天や豪雨の類がエーベルハイスを覆うことは年に数度あるか無いかというほどに稀。
また、物流の大動脈を牛耳る【紋章】のディエスト家の管理と手腕により、北は蛮族の領域から南は『次兄国』の商人達までの商圏が繋げられており、王都に住まう百万を超える人口が養われるに飽き足らず、必需から消耗の品に至るまでが文字通り捨てるほどの有様とされる。
この世界における魔導の総本山の一つであり、算術のみでは決して至ることのできない正確に一辺が相等しい正十三角形を成す王城『白亜なるエーベルハイス』が天を衝くように聳えている。魔導的な守護も完全であり、ギュルトーマ家による【封印結界】の魔法陣が何重にも包む魔導の障壁を成している。
その内側には『長女国』の統治の核である【輝水晶】――ブロイシュライト家の"秘匿"技術――の最も偉大にして重要な『塊』が囲われている。
○グラン=ゼーレヘイレ
頭顱侯【像刻】のアイゼンヘイレ家の侯都。
『刻命の館』がその為政の中心。
○工廠都市「石理のヘマクート」
頭顱侯【像刻】のアイゼンヘイレ家の"走狗"とされている都市。
○グルトリオス=レリア
頭顱侯【皆哲】のリュグルソゥム家の侯都。
○関所街ナーレフ
頭顱侯【紋章】のディエスト家が征服した旧ワルセィレ地域の中心に建てられた関所の役割を果たす街。
『次兄国』と【生命の紅き皇国】との間の物流を抑え、掌守伯ロンドール家が執政を輩出して占領統治を行っている。
『晶脈石』が配置されているが起動はされておらず、統治者ロンドール家は「経済発展」という『長女国』の掌守伯の任務としては重要度の低い施策に長年力を入れていた。
その過程で、行政庁である『代官邸』自らが多くの密輸団を手足の如く擁しており、実質的にその元締めの役割を果たしているが、関所としての機能は旧ワルセィレの反抗組織である【血と涙の団】の弾圧に専ら振り向けられていた。
○ハンベルス
【聖墳墓守護領】(『末子国』)所属の都市。
近傍に『ハンベルス鉱山』を擁するが、この鉱山は『長女国』の【人攫い教団】の有力支部の拠点となっている。
*ハンベルス鉱山地下遺跡
ハンベルス鉱山のさらに地下に発見された、最低でも古代帝国時代の遺構とされる遺跡。
巨大な排水装置が発見されるなど、『ハンベルス鉱山支部』の支部長ゼイモントと副支部長メルドットの"夢"を刺激した存在。
○シャンドル=グーム
吸血種の国である【生命の紅き皇国】に属し、ネレデ内海に面する大都市。
"梟"のネイリーが、関所街ナーレフから去る際に、ユーリルに「来い」と伝達した場所。
■人世の災厄等
○瘴気/荒廃
主に『長女国』を中心に、東オルゼの地を覆う災厄。
【人魔大戦】の折に【闇世】から出現した巨大な"裂け目"の作用を根源とし、【人世】から【闇世】へ魔素と命素が吸入されるのに応じて、【人世】側で発生する様々な天候不順や災厄の発生や魔獣の出現といった禍の総称。
魔法学においては『属性バランスの乱れ』と解釈されており、その調律のために、各地域間で【属性】をやり取りして均し合うための『晶脈ネットワーク』が『長女国』において形成されており、その統治の基本となっている。
"瘴気"という表現は、これが"裂け目"から流れ出すもの、とされている概念。
しかし【エイリアン使い】オーマの迷宮領主としての知見に基づけば「瘴気」という物質や現象そのものは存在しておらず、【闇世】がその世界存続のために必要な構成要素を、魔素・命素ごと、"異界の裂け目"を通して【人世】から大きく大きく呼吸をする際に、その結果として生じる【人世】側で生じるある種の世界法則の不均衡がもたらす種々の悪影響が擬化されて理解されたものである。
ただし【人世】において広く認識されていることから技能自体には「瘴気」に対応するものが存在することが確認されている。
○魔獣
【人世】において「魔力を帯びて瘴気を浴びて歪んでしまった存在」として、人間を襲う凶獣と認識されている生物や獣などを総称する言葉。
特に魔法学においては、【属性】のバランスが"瘴気"によって乱れた結果、発生した存在であるとされている。この意味では迷宮領主の眷属などは"そのもの"である。
*大氾濫
【闇世】に通じる"裂け目"から、時折、大量の【魔獣】が出現して被害を与える現象を指す【人世】側の言葉。
作中では、2章時点では明白な大氾濫現象は発生しておらず、【闇世】側の諸迷宮領主達との関わりについても詳細は未出であるが、この事を以て、【人世】側では【魔獣】という語は【人世】側【闇世】側を区別せずに使用される語となっている。
*闇世生物
上記の混同された【魔獣】概念を整理するために、オーマがつけた呼び方。
【闇世】にあって【異形】を有し、【闇世】の魔素と命素に適合した生物のうち、迷宮眷属ではない者達を指す語として用いる。魔法能力の有無は問われない。
*魔力適応生物/魔法適応生物
上記の混同された【魔獣】概念を整理するために、オーマがつけた呼び方。
【人世】にあって、瘴気にあてられて狂乱したり属性バランスが崩壊した結果魔法の力を帯びた凶獣ではなく、例えば【焔眼馬】のような「自然に魔法」を扱うことのできる、もしくはそれに適応し適合している生物を指す。これらのタイプは積極的に人間を襲うものではなく、また【闇世】の生物ではないため大氾濫によって出現する類のものでもない。
*寛解魔獣
『罪花』の女術士トリィシーが言及。詳細は未出。
*霊獣/導きの獣
"巨漢"デウマリッドが言及。詳細は未出。
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□諸勢力・組織・種族・神々
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■闇世諸勢力
○闇世の歴史
*一握の土くれ
【全き黒と静寂の神】が最初に異界の虚無に降り立った際に「全き世界よ在れ」と述べ、一握の土くれから広大なる真円の大地と、それを囲む果てなき大海を生み出した
すなわち空間的な意味でも時間的な意味でも【闇世】の歴史の始まりであった「土くれ」であり、特に『ルフェアの血裔』にとっては創世神話のような、特別な意味と感情をもたらす歴史用語。
*降臨暦
【黒き神】が降臨し、「一握の土くれ」によって開闢された瞬間を基準とする【闇世】で使用される共通の暦。
シースーアと同等の世界として創造された【闇世】世界では1年360日、1月30日であり、それぞれの月名は、『九大神』の神話にちなんで1~12の順に下記の通り。
『秤、夢石、燭台、沃土、百眼、合鍵、鉄靴、寝台、銀盃、山彦、鋳型、黒檀』。
なお、主人公オーマが転移した初日は『降臨暦2,693年1月20日』である。
*竜公戦争
【黄昏の帝国】の崩壊後、数多の亜人種が鎬を削る乱世であった【百亜争鳴】の時代を治めて【人世】に秩序を取り戻したのが【竜】によって統治される【竜主国】であった。
この時代に、当時の5人の強力な公爵級の迷宮領主達が連合を組んで(五公連合)【人世】に攻め入り、【竜主国】へ攻撃を仕掛けたことによって勃発した戦争。
90年にわたって断続的に数度の攻撃が繰り返されたが、『暁月の和議』と呼ばれる停戦交渉が結ばれた。
【竜主国】側が防衛に成功したことが示唆されており、物語時点で迷宮領主側の生還者は現五大公で「最強」の存在とされている【気象使い】ディルザーツのみである。
*人魔大戦/携界ノ勢
物語時点より約500年前に、【闇世】を統べる初代界巫【城郭使い】クルジュナードが引き起こした【人世】への本格的な総攻撃。東オルゼ大平原に巨大な"裂け目"を生み出し、数多の迷宮領主達が攻め込んだとされているが、【英雄王】として『四兄弟国』の祖となったアイケルという人物によって撃退され、クルジュナードは敗死したとされている。
また、真円なる【闇世】の超大陸で、19時35分の方角に鋭角に抉られたかのような領域としての『ハルラーシ回廊』地域が誕生したのもこの時期であったことが示唆されている。
*闇世戦国時代
クルジュナードの敗死後、後を引き継いだ2代界巫(物語時点にまで続く)は【黒き神】の意を受けて【人世】への再侵攻は行っていない。この結果、界巫の権威が落ちて【闇世】においては迷宮領主同士の争いが激化しており、戦国時代の様相を呈している。
爵位は【黒き神】とその最高司祭たる界巫を頂点とする秩序を表すものではなく、単に迷宮領主としての格とその実力を示す指標の一つと成り下がっており、五大公であってもそれぞれの目的のために独自の行動や戦いを行っている様子が窺える。
*擾乱の姫君
主人公オーマの探し人である少女「イノリ」が、200年前に【闇世】に転移して迷宮領主【水源使い】(その他多数の他名の権能あり)となり、【闇世】全体を相手取ったとされる【擾乱】を引き起こしたことによる異称。
【闇世】Wikiにもその記録はなく、かつてイノリと関わりがあったという「ヒュド吉」や「ユートゥ=ルルナ」の証言から窺える事柄であり、2章末時点でその真偽や詳細は不明である。
しかし、小醜鬼11氏族の祖となるゴゴーロが導かれたことや、多頭竜蛇の本体ブァランフォティマもまた【擾乱】について言及していることから、様々な形で【人世】すら含めて活動の痕跡を残していることが非常に確からしいとして、主人公オーマの探索を本格化させるキッカケとなったキーワードの一つ。
○迷宮領主達
*界巫
【闇世】の迷宮領主達を統括する存在であり、【黒き神】の最高司祭たる存在。
『ルフェアの血裔』達が「魔人」と呼ばれるようになってからは、「魔王」と呼称されることもある。
【黒き神】からの神託を受け取る能があり、特に、新たな"裂け目"の出現を感知することができる。
・初代界巫【城郭使い】クルジュナード
物語時点より約500年前、迷宮領主達を率いて【人世】に攻め込んだ初代界巫にして【城郭使い】。
界巫となる以前は「最も偉大なる旅侠」と称されており、ハルラーシ回廊地域に点在・林立する諸自治都市の基礎を作った人物であることが語られている。
*5大公
【闇世】にあって界巫に次ぐ最高の爵位すなわち特権と権能を持つ迷宮領主達。
2章末時点では、5名のうち以下の3名について言及されているが、いずれも迷宮名は未出。
・【幻獣使い】グエスベェレ
超大陸の西部に、その迷宮の特性から数多の「都市」や「集落」を支配下に置いている。
【宿主使い】ロズロッシィの父であり、現界巫と対立しているだけでなく、ハルラーシ回廊の諸都市の支配を目論んで『励界派』と敵対している。
・【美食使い】
超大陸の東部に、「放牧地」として広大な領域を支配するとされている貪欲にして貪食なる迷宮領主。
迷宮領主となる以前は名の知れた"旅侠"であったらしく、【闇世】落ちした竜主達を討ち取った逸話が知られている。
・【気象使い】
「全ての空と海」を支配する最強の迷宮領主であり、【竜公戦争】の参加者であり生還者。
【闇世】において【竜】に関わる者を独自の判断基準に基づいて討ち果たす「粛清狂い」としても知られている。
*<迷宮名未出>~【宿主使い】ロズロッシィ
『長針の蛭足兎』という寄生系の眷属を擁する【宿主使い】ロズロッシィの迷宮。
その名称や他の詳細な迷宮法則等については、2章末現在未出。
*疵に枝垂れる傷みの巣~【樹木使い】
1章において【エイリアン使い】と対決した【樹木使い】リッケル=ウィーズローパーの迷宮。
樹木系魔獣の眷属と多数の従徒を擁する名跡であったが、リッケルが元【人体使い】の候補者であったことから『たわみし偽獣』と呼ばれる系統の魔獣が特に隆盛していた。
【エイリアン使い】に敗れて後は、長年の敵対者であった【蟲使い】によって攻略されてその"巣"とされただけでなく、『イリレティアの播種』グウィースの誕生の影響であるかは明確ではないが【樹木使い】という存在自体が【闇世】Wikiから抹消されたことが示されており、多くの謎を残している。
*励界派/叡智に仕え"界"の励起を資さんとする拙き徒達の小派
大公を中心とした上級の爵位の迷宮領主達による割拠が【闇世】で進む中、中小の"新参"者の迷宮領主達が対抗のため連合を組んだ一派の一つ。
【傀儡使い】レェパと【人体使い】テルミト伯によって結成され、他に【魔弾使い】【蟲使い】【死霊使い】【鼓笛使い】が属している。
【闇世】全体の励起を謳っており、特にハルラーシ回廊の『自治都市』との協力を前面に出した結果、【幻獣使い】グエスベェレ大公との関係性を巡って方針闘争が発生。大公の力を削ぎたいという今代の界巫の思惑が重なり、「利用してからぶっ殺す」派と「邪魔なのでとにかく抹殺する」派に分かれ、衝突が始まっている。
*鎖れる肉の数珠れ城~【人体使い】
ハルラーシ回廊の"長針"を成す断崖の切先の麓にて、切り立った崖を背とし、遥かな地平線にうっすらと海の水平線が紅く一望できるなだらかな丘に座する「10の指」の如き"城"。
現在は伯爵テルミト=アッカレイアが【人体使い】としてこの迷宮に君臨しているが、【闇世】においても歴史ある名跡の迷宮領主の一つであり、定期的な"代替わり"が行われていることが示唆されている。
「人体」を切り取ったような眷属を多数擁することや、従徒からは生殖能力を奪い取った上で"改造"を施すことなどで特徴づけられているが、歴代【人体使い】の目標として『黄金の比率』というものに至ることが目指されていることが示されている。
*十指と縦横の糸繰り館~【傀儡使い】
「人形」を眷属とする【傀儡使い】レェパ=マーラックの迷宮。
その名称や他の詳細な迷宮法則等については、2章末現在未出。
*<迷宮名未出>~【死霊使い】
「死霊」系の存在を眷属とする【死霊使い】ジャクシャソンの迷宮。
その名称や他の詳細な迷宮法則等については、2章末現在未出。
*群れ霞む食害の森~【蟲使い】
数多の「蟲」をその眷属として擁する【蟲使い】ワーウェール=ウェワヌロウィスの迷宮。
ワーウェールはかつてリッケルに自身の師でもあった先代【蟲使い】を打倒され、その後、その名跡を受け継いだことが示されている。2章末現在は、リッケルの迷宮を制圧し、そのまま自治都市『花盛りのカルスポー』への侵入と侵略を行う拠点と化している。
*鉄舞う吹命の渓谷~【鉄使い】
界巫の"懐刀"とされる醜男【鉄使い】フェネスの支配する迷宮。
『錆び風』というギミックや、『鉄鐸』を経由した独自通信手段を有することが示されているが、その他の詳細な迷宮法則等については、2章末現在未出。
○破廊の志士の誓約連帯
【鉄使い】フェネスがオーマに、ぶち上げた「構想」の成果次第では"紹介"してもよい、と約束した集団。
2章末現在その詳細は未出だが、テルミト伯曰く「テロリスト集団」。
○非迷宮領主勢力
*円卓(正式な名称不明)
【闇世】に存在する組織の一つ。
ロズロッシィ曰く「狂が信な感じの」集団。
*自治都市
初代界巫となる以前の【城郭使い】クルジュナードによって基礎が建てられたとされる多数の自治都市。
クルジュナードは「最も偉大な旅侠」として【闇世】各地を旅したとされており、こうした自治都市は、必ずしもその全てが『ハルラーシ回廊』にあるわけではない。
*旅侠
【闇世】において、特定の迷宮に属さぬ"脱藩者"であり『自治都市』や【闇世】の各地を巡る無頼とされる者達の総称。
その災厄級に厳しい自然法則の中にあって都市間を移動できていることから、一定の実力を持った存在達であることが示唆されている。【樹木使い】リッケルもまた旅侠を養父とし、また【闇世】の歴史においては、初代界巫クルジュナードや【美食使い】が優れた旅侠であったとして名を知られている。
■人世諸勢力
○四兄弟国
【人世】の東オルゼを領域とする4つの国家の総称であり、いずれも【人魔大戦】の英雄であるアイケルという人物の4人の子供達を祖としていることから『四兄弟国』と総称されている。
主要人種は「オゼニク人」、主要言語は「オルゼンシア語」。
・盟約/盟約暦
『四兄弟国』の間でには【盟約】という協定が存在しており、例えば"裂け目"の取り扱いなどに関する役割分担が定められており、緩やかに提携していると同時に、その解釈を巡って水面下で対立しているともされ、複雑な関係性を保っている。
また、暦として、伝説において4兄弟が一同に介して、互いを扶け助け合うことを【盟約】という形で締結・批准した日を基準とする【盟約暦】が採用されている。1年360日、1月30日である点は【闇世】の降臨暦と変わらないが、1~12月の月名は下記の通りとなっている。
『眠り猫、鳴き鹿、睨み獅子、跳び狐、飛天馬、歌い鷲、飢え熊、屠竜、丸呑み蛇、怪魚、伏狼、駆犀』。
なお、主人公オーマが転移した初日は『盟約暦514年1月20日』である。
・英雄王アイケル/使徒アイケル(故人)
【人魔大戦】の【人世】側の指導者であった大英雄であり、自らは建国したわけではないが、『四兄弟国』の祖として【英雄王】と呼ばれている。初代界巫にして【城郭使い】クルジュナードを敗死させた存在であり、また、【闇世】から出現した巨大な"裂け目"を消し去ったとされており、その事蹟は【英雄譚】と呼ばれる。
しかし【人魔大戦】の最中、同じ【人世】の存在であるはずの【亜人】達の裏切りに遭っており、彼の戦記はむしろ【闇世】の撃退後の【亜人】達との戦いが本番であるともされている。それはそのまま、『長女国』においては【西方懲罰戦争】を、『長兄国』においては【大東征】を、それぞれ建国以来続けている根源であったとされている。
○黄金の馬蹄国/『長兄国』
アイケルの長子サリディールが興した国であり、東オルゼ地方の東方に拡大する騎"獣"の帝国。
【大東征】と呼ばれる東方への大遠征を繰り返しており、遠くハルギュア中央高原において物語時点では『獣腿人』と呼ばれる種族と戦っているとされる。
竜人ソルファイドの故郷である【ウヴルスの里】を滅ぼした元凶でもある。
・サリディール"大帝"(故人)
【英雄王】アイケルの長男であり、【黄金の馬蹄】国を興した。
その事蹟は【東征譚】と呼ばれる。
*楔の民
竜人ソルファイド曰く、【ウヴルスの里】が滅ぶ元凶となった集団。
かつて親友だった者が「楔の民」であり、この者を早急に排除していれば里が滅びなかったのではないか、というソルファイドの後悔の一つ。
*ウヴルスの里
ゲール=デスティオ火山の麓にあったとされる竜人達の隠れ里であり、ソルファイドの故郷。
「楔の民」と呼ばれる集団に浸透された結果、【黄金の馬蹄国】の侵略を受けて滅んだ。この際、ソルファイドの知己も幼馴染も里の仲間達も散り散りとなっており、2章末時点で、その行方も詳細も不明となっている。
○輝水晶王国/『長女国』
アイケルの長女ミューゼが興した国であり、東オルゼ地方の西方に座する魔導の大国。
魔法学の総本山であり、その叡智によって繁栄を極めるが、主に"荒廃"と大氾濫の発生を原因とした飢饉や流民の発生により、「人が大量に生まれそして大量に死んでいく」歪なる大国。
西オルゼに割拠する亜人達の諸勢力に対する【西方懲罰戦争】を建国以来500年に渡って継続していると同時に、国内においては「頭顱侯」を最高位とする魔導貴族達がミューゼの【浄化譚】以来の"荒廃"を鎮めるための魔導的な統治を行っている。
しかし、その実態は強大な力を持つ頭顱侯達を頂点とした社会であり、あらゆる組織は雲上から泥水の底に至るまで「業界ごと」に壟断されている。魔法学が絶対の権威であることから、出世する緒を掴むためですら「魔法の才」の有無が必要であり、それすら無い者は強固に形成された社会的分業の中における、いずれかの頭顱侯家の"走狗"のそのまた手下の下っ端となって生きていくしかない。
・"国母"ミューゼ(故人)
【英雄王】アイケルの長女であり、その終生を"荒廃"との戦いに費やした。
彼女とその弟子達の事蹟は【浄化譚】と呼ばれており、やがて第一弟子ブロイシュライトが王に、第三弟子サウラディなどが最古の頭顱侯となる形で【輝水晶王国】が基礎づけられたことから、"国母"と呼ばれている。
・晶脈ネットワーク/晶脈システム
王家ブロイシュライト家の秘技術によって生み出される"荒廃"を調律するための仕組みであり、各地で乱れた「属性バランス」を相互にやり取りして均すための装置としての『晶脈石』をその単位とする。
しかし、2章において【エイリアン使い】オーマにより、その"均す"の意味はむしろ組み込んだ新しい地域に押し付けることで、全体としての害を希釈している性質ではないのかと疑われている。
・魔導貴族/雲上人
『長女国』の統治階級である魔導貴族達は、次の通り。
『指差爵』が第一に"荒廃"の兆候を発見し、"指を指して"報せる。
『測瞳爵』が"荒廃"の具体をつぶさに観察し、"眼で視て"その影響を計測する。
『掌守伯』が乗り込み、事態を"掌握し一帯を鎮守"して、魔導の為政をもたらして統治する。
『頭顱侯』が、これらの「指・瞳・掌」を統御し、王国内レベルで属性の不均衡を"均す"。
ミューゼの遺志と遺訓に従い、東オルゼの大地の"荒廃"を鎮め均さんとすることをその国是とする国家であり、頭顱侯達とはミューゼの高弟達の後継者として、いわば至上の責務として"荒廃"へ対処することで、支配者として君臨する正統性を得ている。
しかし、掌守伯以下は『晶脈石』の配置と守護と管理の実務担当者であることから、この思想が一定程度保たれているが、頭顱侯達においては「謀略の獣」とも称されるほどの激しい内部闘争と内部抗争が日常的に繰り広げられている有様となっている。
・秘匿技術
魔法学が絶対の権威を持つ『長女国』であるが、逆説的に、魔法学によっては説明しえない独自の秘匿された超常の魔法類似技術を持つ――無論、彼らはそれを「魔法」と主張する――ことが実質的な頭顱侯への昇格の条件となっている。
その技は各家において文字通り命を賭けて秘され守られてきた技であるが、その秘密を巡っても、双方に水面下で相争っている。
・導侯会議
形骸化した王権に代わり、『長女国』全体の重要な方針を決めるための会議。
全頭顱侯が参加者であり、その合議によって施策や戦略が定められる。
・派閥抗争
物語現在、13ある頭顱侯達は次の3つの派閥に分かれている。
派閥間で鋭く対立しているのは無論のこと、派閥の内部でも争いが絶えることはない。
『盟約派』:【盟約】を重んじる一派。【四元素】のサウラディ家が盟主。
『破約派』:【盟約】の破棄を掲げる一派。【騙し絵】のイセンネッシャ家が盟主。
『継戦派』:【西方懲罰戦争】を重視する一派。【紋章】のディエスト家が盟主の座を奪った。
・走狗
『長女国』にあって、あらゆる業界組織も社会集団も目的団体も、いずれかの頭顱侯によってその系列に組み込まれている。これらの中でも、特に、その頭顱侯家が壟断的な支配力を有する業界において"実働部隊"となる組織が「走狗」と呼ばれている。
例えば【四元素】家には【魔導大学】が仕え、【騙し絵】家には採鉱事業を牛耳る【幽玄教団(人攫い教団)】が仕えている。
・才無し/枯れ井戸
『長女国』では、頭顱侯を頂点とする社会の階層が強固であり、魔法の才が無ければ上昇のためのスタートラインに立つことさえできない。このため、魔法の才の無い者を揶揄する言葉として"枯れ井戸"という表現が広く使用されている。
・主要な危機/事件
物語現在、『長女国』では過去発生したものも含めて次の事件・事変が発生している。
『大粛清』:200年前に勃発。
【九相】のルルグムラ家の粛清と、彼らを失脚させたかつての【騙し絵】のイセンネッシャ家が引き起こした【空間】魔法による暗殺と破壊の嵐をキッカケとし、『長女国』の歴史において巨大な知識と記録の断絶を引き起こした時代。
『雲上狩り』:数十年前に勃発。
吸血種の国である【生命の紅き皇国】の【血の影法師】が多数侵入。
頭顱侯家はおろか王家を標的とした暗殺の嵐が吹き荒れ、あわや【大粛清】の再来が訪れたか、とされるほどに社会が不安定化した。
『リュグルソゥム家誅滅』:物語2章時点。
12の頭顱侯家さらに『末子国』の勢力などが結託して、13位頭顱侯【皆哲】のリュグルソゥム家を族滅させた事件。
これを生き延びた末の兄妹ルクとミシェールは【エイリアン使い】の従徒となり、新生リュグルソゥム家が興ることとなる。
*ブロイシュライト家(【輝水晶】)
『長女国』の王家。ミューゼの第一弟子ブロイシュライトを祖とする。
水晶鉱山と呼ばれる特殊な鉱山を有し、そこから『晶脈ネットワーク』の核となる『晶脈石』を生み出す技術を持つが、その王権は形骸化している。
*サウラディ家(【四元素】)<盟約派>
『長女国』第1位頭顱侯。ミューゼの第三弟子サウラディを祖とする。
盟約派の首魁にして最古の頭顱侯家であり、特に【騙し絵】のイセンネッシャ家と日常的に激しく敵対しており、傘下の魔導貴族や走狗組織達を巻き込んで抗争を続けている。
その秘技術は【精霊】と呼称される不可視・性質不明の存在に関わっており、「愛し子」と呼ばれる者を一族内に擁していることが判明している。
なお、2章時点において、【精霊】達は監視対象であった"痩身"のサーグトルや【冬嵐】家の工作員ハンダルスの死の瞬間、【エイリアン使い】の眷属達の前に現れて「対消滅」現象を引き起こした。
*ゲーシュメイ魔導大学
サウラディ家の"走狗"たる組織。
王都に並ぶ『長女国』における魔導の総本山であり、魔法学の最高権威。
*イセンネッシャ家(【騙し絵】)<破約派>
『長女国』第2位頭顱侯。200年前に【九相】のルルグムラ家に仕えて頭角を現した『画狂』イセンネッシャを祖とする。
独自の解釈によって魔法学においても形骸化していた【空間】魔法を秘技術として確立させ、その力を『長女国』内での暗殺と破壊に用いたことで「大粛清」の原因を作ったとされている。
その力の正体は、かつて【擾乱の姫君】イノリの部下であった従徒が迷宮核を持ち逃げした結果得た力であることが2章において明かされているが、大粛清の傷跡はイセンネッシャ家自身にも様々な記録や伝承の失伝という形で深い爪痕を残しており、現在のイセンネッシャ家がこうした来歴を正確に把握している状況には無いと【エイリアン使い】オーマは判断している。
むしろ、一族の来歴と伝承と失伝した技術を取り戻すためにこそ、彼らは『破約派』を結成して『長女国』内における最も危険な不穏分子として、大権を得ながらも未だに蠢動しているものと見られている。
・【空間】属性の活用
イセンネッシャ家は【空間】属性魔法を、人体の臓器摘出技術や非常に高精度な外科手術に活用したり、確実な「受精」に利用したり悪用したり、歩法と呼ばれる短距離【転移】魔法と組み合わせた独自武術を編み出したり、果ては『鹵獲魔獣』と呼ばれる大氾濫等によって発生した魔獣を捕獲して兵器として利用しようとするなど、その特性を十分に理解して応用している。
*廃絵の具
イセンネッシャ家の暗部秘密工作部隊であり、元は画狂イセンネッシャが『末子国』の【秘色機関】に対抗して描き出したとされる集団であるが、何度も解体されては再建されていることが示唆されている。2章で登場したのは"私生児"ツェリマが育て上げた"私生児"の部隊であり、指揮権を奪ったデェイールによって【エイリアン使い】の迷宮に伴われたが、その最後は損傷した『画楽隊』(後述)を一時的に快復させるための部品として消耗された。
*画楽隊
イセンネッシャ家侯子デェイールが、リュグルソゥム家残党が逃げ込んだと誤解した【エイリアン使い】の迷宮へ侵入するに当たり、持ち出した「兵器」。
その正体は、複数の魔法使いの"脳"を【空間】魔法的手術によって1つに融合させた存在であり、常時【空間】魔法を発動することができる。数十人分の脳が融合した計算能力を持つことから「転移事故」を引き起こさずに強力な【空間】魔法を被せることができる【騙し絵】家の切り札たる兵器であったが、"脳力"において【エイリアン使い】の副脳蟲達に処理速度で圧倒され、儚くも潰れ終わった。
*幽玄教団/人攫い教団
イセンネッシャ家が、かつて『長女国』のカルト集団であった【幽玄教団】を、その掃討の寸前で拾い上げて走狗とした集団。分割された【空間】属性魔法を与えられたことで、【転移】によってターゲットを襲撃する【人攫い教団】として知られるようになり、またその技と信徒達の勤勉さによって瞬く間に『長女国』の採鉱事業を劫掠・牛耳るようになった。
しかし、反抗勢力とならぬよう『廃絵の具』達による管理が行われており、意図的に支部間・世代間で対立するようにされていたため、情報の即時共有に課題を抱えた結果、2章において【エイリアン使い】に介入を受けることとなる。
・墨法師
【人攫い教団】において、皮膚に直接【転移】魔法陣を刻まれることで、信徒達を空間転移させることができるようになった教団指導層の法師達。イセンネッシャ家にその力を向けることができぬよう、人皮の魔法陣は3分割されており、それぞれを刻まれた者を『標師・迎え師・送り師』と呼ぶ。
2章ではリュグルソゥム家残党を追いかけた結果、【エイリアン使い】にその【転移】魔法に関する「人皮魔法陣」の技術を提供する存在となり、また収奪すべき資源とされる憂き目に遭った。
・ハンベルス鉱山支部
【人攫い教団】の有力支部であり、『末子国』の都市ハンベルスの近傍の鉱山に拠点をおいていた支部。
【エイリアン使い】の介入と攻撃の標的とされたことで、その全てを奪われただけでなく、跡地は『魔石鉱山』と化して跡形も無く消え去り、さらには【騙し絵】家を誘引するための囮としても十全に活用されることとなった。
*ラムゥダーイン家(【聖戦】)<継戦派>
『長女国』第3位頭顱侯。"最大"の兵力を擁しており、【西方懲罰戦争】の総帥であるが、『継戦派』の領袖の地位は【紋章】家に奪われている。
領内の統治は「副候」に委ねられ、当主たる侯は常在最前線に在り続ける武の一族。
・【生命】魔法
【聖戦】家の秘技術であり、"才無し"の流民の集団を「疲れない軍勢」と化す力であるが、2章において新生リュグルソゥム家により、その秘密が何らかの手段による『命素』の自覚的知覚と活用によるものであることが判明した。
・ラダオンの腐れ血帳簿/腐れ血の帳簿
【聖戦】家が吸血種達の"雲上狩り"に対抗して編み出した吸血種感知魔法。
この影響により、対吸血種の役割が【騙し絵】家から【聖戦】家に移った。
・軍師衆
【西方懲罰戦争】において【聖戦】侯の軍事指揮を支える幕僚団を指す。
*ディエスト家(【紋章】)<継戦派>
『長女国』第4位頭顱侯。物流と交易を牛耳る"最富裕"の一族であり、『継戦派』の指導者の座を得ている。
【紋章石】という"才無し"達にも容易に魔導の叡智を行使させることのできる魔導具の生産をその秘匿技術としており、リュグルソゥム家誅滅事件では、他家の秘匿技術すらをも【紋章石】に封じ込めて発動可能であることが判明した。
20年前に旧ワルセィレ地域を征服し、その占領統治を配下の掌守伯にして走狗扱いでもあるロンドール家に任せ、同じく配下となっていた元頭顱侯家である掌守伯ギュルトーマ家と相互監視させていたが、2章においてロンドール家の叛逆計画が発覚。
しかも、ロンドール家を密かに監視させていた"梟"ことネイリーが重要な情報の多くを握り潰していたことが判明しており、聖山ウルシルラの「深き泉」を巡る騒乱に【エイリアン使い】が介入してロンドール家上層が壊滅した中、その次の動きが【エイリアン使い】オーマによって注目されている。
*ギュルトーマ家(元【重封】)
元頭顱侯家であり、かつての号は【重封】。
現在は【紋章】のディエスト家の傘下にあり、同じく傘下掌守伯であるロンドール家と対立している……とされていたが、聖山ウルシルラの「深き泉」を巡る騒乱では、騙し合いの果てにロンドール家に『封印葛籠』によって「魔獣」を供給するなどの動きを見せている。
掌守伯家ではあっても、王都を防衛する【封印結界】や、大粛清以前の記録が残るとされる【王立禁言封印図書館/王都封印書庫】の管理を継続しているなど、その降爵には謎が多い。
この他、リュグルソゥム家に誅滅前に【歪夢】家の情報を提供し、またウルシルラの騒乱の最中にはロンドール家に同行した竜人ソルファイドに接触してから消え去るなど、独自の思惑によって行動していることが窺える。
*ロンドール家
かつてディエスト家に屈服し、無理矢理にその配下とされ、しかも"走狗"として汚れ仕事を担わされ続けてきた掌守伯家。
しかし忠実に任務をこなしてきた結果、ディエスト家の金庫番として一定の軍事力を蓄えるだけでなく、旧ワルセィレを統括する関所街の執政の地位を任され、この地で【四季一繋ぎ】という独自法則現象を解析したことからその自立への悲願の成就を企てた父子二代による計画が始まった。
旧ワルセィレの反抗組織【血と涙の団】や、監視役であるギュルトーマ家、野心を見抜かれて反旗を翻されたエスルテーリ指差爵家、独自目的のための介入を伺う【騙し絵】家などを始めとする他家の思惑の間を泳ぎながら、2章においてはついに聖山ウルシルラの「深き泉」に兵を進めることができたが、【冬嵐】家の陰謀によって妨害され、最終的には【エイリアン使い】を交えた三つ巴に敗れて【泉の貴婦人】をかっさらわれたことで、その悲願は潰えた。
しかもそれだけではなく、当主代行ハイドリィ=ロンドールがその側近達とともに虜囚の身となり、【紋章】家にも事態を察知されたことで、その命運は風前の灯火と化している。
・奏獣の技/ロンドールの奏で唄
"痩身"のサーグトルが理論を完成させたロンドール家による【四季一繋ぎ】法則を利用した秘技術。
旧ワルセィレの民と【四季ノ司】の間の「血と涙」を介した繋がりを利用し、【四季ノ司】を宿らせた強力な【魔獣】を操る技。この技を以て、ハイドリィは【四季】の法則を"荒廃"に転用することで他家を脅すための強力な武器となし、一挙に頭顱侯に成り上がろうと企てたのであった。
*猫骨亭
ハイドリィの部下である"懐刃"レストルトが指揮していた部隊。
主に関所街ナーレフの各密輸団や商隊を裏から操るために使われた便宜名。
*西に下る欠け月
『猫骨亭』の指揮を受けていた、関所街ナーレフを拠点とする密輸団の一つ。
【エイリアン使い】の投じた一石に応じてヘレンセル村均衡に進出したのがその命運の尽きであり、エリス=エスルテーリの謀殺に失敗後、聖山ウルシルラを巡る騒乱の勃発が秒読みとなる中、教父ナリッソの誘拐と共に"珍獣売り"を攻撃しようとしたが、待ち構えていたエイリアン達によって壊滅させられることとなった。
*霜露の薬売り
『猫骨亭』の指揮を受けていた、関所街ナーレフを拠点とする密輸団の一つ。
老薬師ヴィアッドによって率いられていたが、治癒術士オーマにただならぬものを見出したヴィアッドの判断によって、"珍獣売り"と良好な関係を維持。聖山ウルシルラを巡る騒乱からは距離を置き、関所街ナーレフへ戻ることもしなかったため、騒乱に巻き込まれることもそこで【エイリアン使い】の正体を知ってしまうことも避けられた。
*馬走りの老牢番
『猫骨亭』の指揮を受けていた、関所街ナーレフを拠点とする密輸団の一つ。
元は『欠け月』や『薬売り』を指導する立場であったが、エスルテーリ家と【血と涙の団】を合流させてから【春ノ司】を暴走させて始末するという騙し討ちの陰謀の手先として、ギュルトーマ家の『封印葛籠』を運ぶように命じられて断ることができず、その命運が尽きた。
"裂け目"への介入を望む【騙し絵】家侯子デェイールと『廃絵の具』が護衛として同行していたが、【血と涙の団】による襲撃の直前でその全員が【転移】して遁走。彼らの存在を当てにした防衛陣を敷いてしまったことであっさりと食い破られ、全滅した。
*フィーズケール家(【魔剣】)<継戦派>
『長女国』第5位頭顱侯。剣姫フィーズケールを祖とする尚武の一族。
リュグルソゥム家に迫られ、競り合いながらも『長女国』の"最強"の存在を占め続けてきた。
「一人が一隊を屠り、一将が一軍を滅ぼす」ほどの使い手であり、単独でも敵集団を殲滅することのできる広域魔法と【魔剣】術の使い手達である。
その象徴として、【剣魔】【剣姫】【剣聖】【剣仙】【剣鬼】から成る【五剣】と称される者達を擁することが示されているが、同時に、2章では【騙し絵】家侯子デェイールによって「一振りの刃たる矜持を失った」と認識されているが、このことの詳細は未出。
*アイゼンヘイレ家(【像刻】)<継戦派>
『長女国』第6位頭顱侯。人形師アイゼンヘイレを始祖とする4つの分家から成る集団であり、交互に「アイゼンヘイレ」の名を襲名している。
その所領は西方最前線にあるラムゥダーイン家の後背を守護するように位置しており、彫刻兵と呼ばれる存在を使役するという秘術によって【西方懲罰戦争】に参陣する『継戦派』の頭顱侯家。
なお、人形師アイゼンヘイレが肌身離さずにいた「苔生したマリアンヌ」と呼ばれる人形が、侯都グラン=ゼーレヘイレの中枢たる『刻命の館』の会議部屋に安置されており、しかも自律して会話するだけでなく、4分家の代表を招集する権限すら有していることが示されている。
*ナーズ=ワイネン家(【遺灰】)<破約派>
『長女国』第7位頭顱侯。
葬列の如き一族であり、秘技術として【灰】魔法を、さらに一族の者の"遺灰"を【灼灰の怨霊】として使役する技を持っているが、2章において【エイリアン使い】に捕らえられた【放蕩侯子】サイドゥラにより、その正体が姿も名前も秘技術さえも変えた元【九相】のルルグムラ家であることが暴露された。
*デューエラン家(【冬嵐】)<盟約派>
『長女国』第8位頭顱侯。元は【四元素】家の分家であったが、秘技術を得たことで頭顱侯家となったが、敵対派閥からは未だに「サウラディの狗」と罵られている。
「溶けない氷魔法」という一見すると魔法学の範疇を越えない技であることを他家に疑問視される場面も多かったが、その正体は【北方氷海】の海底深くに封印されているとされる【氷凱竜】ヴルックゥトラの"竜血"を得たことである、と2章において判明した。
*氷靴衆
【冬嵐】のデューエラン家の走狗とされる集団であるが、その担当する"業界"など、詳細は未出。
*グルカヴィッラ家(【纏衣】)<盟約派>
『長女国』第9位頭顱侯。【像刻】家の落とし子グルカと【魔剣】家の【剣姫】ヴィッラが駆け落ちて誕生した一族。
双方にルーツを持ちつつ、それだけでは説明し得ない「鎧を纏う」技を秘技術として保持しており、侮ることのできない武力を有している。物語時点では【魔剣】家のシェアを奪う形で、特に『長女国』における防具産業や傭兵業などに強い影響力を持つようになっている。
*ウズド鉄笛警護団
グルカヴィッラ家の走狗であり、『長女国』における本格的な傭兵たる精兵集団。
*フィルフラッセ家(【悪喰】)<破約派>
『長女国』第10位頭顱侯。
"魔法喰い"とされる、いくら魔法類似であるにしてもあんまりな技術だと評される力を持つが、2章辞典でその詳細は未出。
なお、リュグルソゥム家の誅滅には兵を出すだけでなく、【紋章】家を通して「兵糧丸」と呼ばれる物資も提供している。
*マルドジェイミ家(【歪夢】)<破約派>
『長女国』第11位頭顱侯。【精神】魔法の大家であり、リュグルソゥム家にとっては『止まり木』を妨害される最大最悪の天敵。
しかし、その直系の一族達はそれぞれの『遊び場』にこもっており、享楽を優先するあまり為政者としても魔導の大家としてもまともに機能していないことが示唆されている。
*罪なる垂蜜と絢花の香/罪花
マルドジェイミ家の走狗であり、売春業を取り仕切る集団。
*ティレオペリル家(【星詠み】)
『長女国』第12位頭顱侯。
王都の天候を操作して年に数度しか雨が降らぬようにさせていたり、【重力】属性を駆使するなどの技術を持つことが示されているが、その他の詳細は未だ未出。
*リュグルソゥム家(【皆哲】)<盟約派>
『長女国』第13位頭顱侯(元)。結合双生児リュグルとソゥムが、当時の【破邪と癒やしの乙女】の加護者によって分離されたことで子を成すことができるようになり、また、共有精神世界『止まり木』を構築したことで始まった一族。
"夢"を見ない代わりに、常人とは異なる時間が流れる精神世界を血族間で共有し、そこで討議を重ねるだけではなく、生み出した幻像による鍛錬を行うことすらできる。戦闘中にさえも『止まり木』に移動することで、現実世界ではほぼ時が停止したような状態で長時間戦術検討や相手の分析を行うことができ、常時ほぼ最善手を取ることができた。
『早熟にして晩成』とも『落伍者無し』とも謳われ、【魔剣】のフィーズケール家と『長女国』の"最強"の座を争うほど、一族の兵科である『高等戦闘魔導師』の威名を轟かせる。
しかし『止まり木』の維持のために近親婚・血族婚を繰り返したことで、劇的な勢力拡大とは無縁の少数精鋭であり、また他家との交流という意味でも非常に閉鎖的であったことも遠因となり、2章開始時における誅滅の陰謀から逃れることができなかった。
他の全ての頭顱侯と、さらに『末子国』の『聖守』までもが結託した疑いのある3箇所の同時襲撃により、族滅の憂き目に遭うこととなるが、末息子ルクと末娘ミシェールが逃されて【報いを揺藍する異星窟】に辿り着き、「新生リュグルソゥム家」が繋がっていくこととなる。
*リリエ=トール家(【明鏡】)<盟約派>
『長女国』第13位頭顱侯(新)。元は東方の【マギ=シャハナ光砂国】の亡命神官家の出身。
掌守伯であったがリュグルソゥム家の誅滅に参加しており、侯子グストルフによってルクとミシェールの複数の兄姉達が討たれた。
【光】属性に関する魔法に長けており、さらに、グストルフによって【鏡】の力を扱う魔法を秘技術としていることが示唆されている。
なお、"大道芸"とも称された、【光】魔法の推力を活用したグストルフ独特の高速機動術がリリエ=トール家における標準的な戦闘スタイルであるのかは不明。
*ルルグムラ家(【九相】)
200年前の『長女国』頭顱侯。
「死霊術」を扱っていたとされていたが、画狂イセンネッシャが仕え、後に【生命の紅き皇国】との内通を理由として誅滅され、『大粛清』が始まる原因の一つとなった。
この際、「死霊術」の正体が『皇国』の【遺念術】の応用であることが判明しているが、『長女国』で【闇】魔法が禁術とされていることとの関係性は2章末時点では詳細未出。
なお、【遺灰】のナーズ=ワイネン家侯子サイドゥラにより、【遺灰】家こそはルルグムラ家が名前も秘技術も号さえも変えて生き残った「滅ぶべき」一族であることが【エイリアン使い】や新生リュグルソゥム家の前で暴露された。
*エスルテーリ指差爵家
ロンドール家の下に付いて聖山ウルシルラへの道を押さえていた指差爵家であるが、その真の任務はロンドール家の監視であった。
当主アイヴァンの妻と娘エリスを人質を取られていたことで自由に動けなかったところ、ラシェットの父の殉死によって二人が逃されたことから、公然とロンドール家の野心を妨害していた。
2章時点では【火の魔石】がヘレンセル村に投じられたことで【春疾火の乱】が勃発。
これを利用して、ギュルトーマ家との取引を以てロンドール家の不正を告発するべく、反抗組織【血と涙の団】とさえも協力関係を結んで行動を起こしたが、【騙し絵】家侯子デェイールによって想定以上に【春ノ司】が強大化させられたことでアイヴァンが重傷を負い、後に死去する。
その後、新指差爵となったエリスが関所街ナーレフまで赴いて執政ハイドリィ=ロンドールを難詰しつつ、マクハードの機転と思惑によってエスルテーリ家軍はロンドール家軍と共に聖山ウルシルラの「深き泉」へ赴くこととなったが、そこで【冬嵐】家の陰謀と【エイリアン使い】の介入によって生じた三つ巴に巻き込まれた。
なお、この際、新指差爵エリスはラシェットに与えられていた【転移】魔法により、関所街まで戻される。
このことによって、聖山ウルシルラでの騒乱によってハイドリィ以下幹部が軒並み失墜しロンドール家の統治が崩壊したこと、【紋章】家への情報が遮断されていたことで、にわかにエスルテーリ家の存在が関所街において重要な状況が生じており、第3章へと繋がっていくこととなる。
*旧ワルセィレ/旧森と泉/旧ワルセィレ森泉国
東オルゼの南西。赫陽山脈を挟んで西オルゼ地方と『次兄国』にある、森と泉の地に広がっていた共同体。
【四季ノ司】と【泉の貴婦人】を中心とする独自の四季信仰を持ち、さらに魔法とは異なる【四季一繋ぎ】と呼ばれる、ささやかながらも超常なる法則の中で生きてきたが、物語時点より20年前に『長女国』の【紋章】のディエスト家によって征服された。
以来、ロンドール家の執政下で『長女国』式の統治に組み込まれ、古い信仰を持つ民は【血と涙の団】という反抗勢力を結成して抵抗するも圧迫を受け続けて、物語時点では『長き冬』の災厄によって【春ノ司】の不在が強烈に意識される状況となっており、蜂起が秒読みとなってそのタイミングが調整される段階に差し掛かっていた。
なお、ロンドール家の真の狙いは、【四季一繋ぎ】と旧ワルセィレの民が【血と涙】によって繋がる仕組みを悪用して【四季ノ司】を使役可能な強力な魔獣として操作することによる頭顱侯への一挙の昇格であった。
しかし、そもそもロンドール家を当て馬に【紋章】家を追い詰めようとしていた他家が既に陰謀を巡らせており、その間隙に【エイリアン使い】オーマが介入したことで、その企みは最終的に潰えている。
この際、オーマは【泉の貴婦人】がかつて200年前に【水源使い】イノリによって【人世】へ逃された際に、何らかの意図に基づいて【領域】を維持する核とされた結果、【四季一繋ぎ】の法則が誕生したことを知る。
そして【泉の貴婦人】をその"役目"から解放して自らの探索行に加えるため、また、旧ワルセィレの独自法則が引き続き野心ある魔導貴族に狙わないようにすること、そして関所街ナーレフを中心とした旧ワルセィレ地域を自らの「構想」に組み込むことを考えたオーマの提案を受け、約200年に渡って続いてきた旧ワルセィレの独自法則は【四季ノ司】達の全会一致の賛成によって"解消"されることとなった。
*血と涙の団
旧ワルセィレの出身者達で構成された、圧制者ロンドール家への反抗組織。
地域の中枢に建てられた『関所街ナーレフ』の内側にあって情報を取りまとめる幹部達と、その外側にあって地域一帯でロンドール家に与する商団や密輸団を狩って実力を蓄える実働部隊に分かれつつ、行商人マクハードによって後見されながら力を蓄えてきた。
しかし、彼らが自由に密輸団狩りをできていた理由は、ロンドール家が【血と涙】によって【四季ノ司】を縛りつけて【魔獣】として使役して一挙に頭顱侯にとなるための「血と涙の貯蔵庫」として肥え太らされていたからである。
ロンドール家を追い払うだけでも意味がないと考え、その構築した【奏獣】の力を奪い取って旧ワルセィレの独立自立の力とすることを企てていたマクハードにとってもこの点は同様であり、両者の思惑が絡み合った結果、【血と涙の団】は聖山ウルシルラの「深き泉」に向けてロンドール軍と奇妙な同行をするに至る。
そしてこの中で、当初から【冬ノ司】の暴走の一因となっていた【氷凱竜】の劣化意識体の顕現、さらに【エイリアン使い】の介入によって発生した三つ巴に巻き込まれ、最終的には極寒の中で仮死状態に陥って【エイリアン使い】の迷宮に救護されることとなった。
*旧ゲルティア城址連
かつて『長女国』と『次兄国』と、そして【生命の紅き皇国】とで3分割された都市国家群。
【英雄王】の敵の一つであったとされており、壮絶な殲滅戦が行われたという記録が残っている。
○白と黒の諸市連盟『次兄国』
アイケルの次子ライクツィオ=ヴァイケリーリの【海運譚】と呼ばれる事蹟に源流がある共和制の都市連合国家であり、共通の法規である"憲章"によって連盟として束ねられている。
ネレデ内海に沿って広がる『白黒海岸』地方には、歴史上いくつもの交易都市や海運都市が成立し、互いに交流し時に争いながら発展してきたが、これらがまとまったことによって強力な海運大国となった。
しかし勃興する都市間の争いが激しいことが示唆されており、多くの『傭兵団』が商人や商隊に入り混じって活動している有様が仄めかされている。2章時点では『竜人傭兵団』や、『ジェラーニア愚連隊』という名前の傭兵団の名が上がっており、また【人攫い教団】の『ハンベルス鉱山支部』が"人攫い"の標的としていて定期的に襲撃を行っていたことと相まって、活力と不穏さが渦巻く地域である。
・人魚との関わり
かつてライクツィオを助けたとも【海運譚】に記述される【亜人】の一派。
彼らはネレデ内海に出没する『海魔』を狩る優れた狩人として、未だ発展期にあった『次兄国』の船団を幾度もその襲撃から守ったとされており、友好と同盟の証として200年前のある時期までは「海との結婚」と呼ばれる人身御供の儀式も行われていたと記録される。
しかしその後、原因は不明であるが両者の間で大きな争いが起きる。この戦争に前後して『フォンピオー』と呼ばれる都市が火山噴火で焼失したとも伝えられるが、人魚の関与によるものであるかは2章末時点では不明である。
こうして勢力としての交流は相互に途絶えたが、現在でも人魚が密漁によって捕らえられることがあり――好事家達の間で非常な高値が付いているという。
*ジェラーニア愚連隊
『次兄国』の都市ジェラーニアで誕生した傭兵団。『ハンベルス鉱山』の攻略戦で、元愚連隊であった狼憑きフィックとソルファイドが戦った。
所属する傭兵達には"愚かさ"が求められているという。
*竜人傭兵団
西オルゼ西部を占める【大泥原】を根城にする竜人達による傭兵団であるが、この名での統一組織ではなく、複数の傭兵団がそれぞれの"結成目的"に沿ってバラバラに活動しているらしいことが示唆されている。
『次兄国』だけではなく【西方懲罰戦争】においても、そして【西方諸族連合】同士の争いでも、頻繁に参加し敵味方に分かれて血なまぐさく争い合っている。
*拝竜会
ギュルトーマ家のレドゥアールによって、ソルファイドに伝達された存在。
【人攫い教団】が存在していたことで『長女国』への浸透が防がれていた、とされる東西オルゼで勢威を増しているカルト集団。
特に、戦亜達の国である【ウル=ベ=ガイム氏族連邦】で広まっているとされるが、レドゥアールがソルファイドにその活動地としてあえて伝えたのは『次兄国』であったことから、否が応無しに『竜人傭兵団』との関わりについて意識させられることとなっている。
○聖墳墓守護領『末子国』
アイケルの末子アルシーレが初代『聖守』となって興した【聖墓教会/聖墳墓教会】が統治する宗教国家。
国家面積は最小だが、宗教的な意味では『四兄弟国』圏で大きな影響力を持っており、オゼニク人達の日々の暮らしの基本となっている。
諸神の加護を受けた【聖人】達によって治められており、原則として、加護者は『末子国』に集められることが【盟約】によって定められているが、様々な"抜け穴"があるらしい。
同様に、かつてのアルシーレの【神聖譚】と如く"裂け目"を通って【闇世】に討ち入り魔人やその眷属と戦うことを第一義とする他、"裂け目"の管理やその封印に関わる大権もまた【盟約】によって定められているが、この「干渉」について他の『兄弟国』とは最も論争と応酬が発生する部分でもあることが示唆されている。
宗教的の系譜としては、諸神崇拝については東方に源流があることが「旧教」という表現から示唆されており、例えばリリエ=トール家などは【マギ=シャハナ光砂国】の亡命神官が『長女国』に至って魔導貴族となった事例であるが、このことについての詳細は未出。
*下位組織
2章末現在、以下の組織が『末子国』の下位機関・実働部隊として示されている。
『聖墓教会』
布教と宗教的導きのために諸国へ"教父"を派遣する、教会の戒律的基礎組織。
清廉潔白であるかどうかについては疑念がつけられており、特に、リシュリーの体内で発生し続ける【穢廃血】の存在は、【破邪と癒やしの乙女】の加護者の特別な用途を連想させるものであり、これに気づきかけたことでナリッソが左遷されたことが仄めかされている。
『具足僧院』
"裂け目"の封鎖やその先への討ち入り、他国への査察といった軍部的役割を担う武装した僧兵団。
『聖人会議』
国策に関する意思決定のための諮問機関。神官の籍にあることは所属の必須条件ではない。
『秘色機関』
その存在を秘された特務部隊。『廃絵の具』はこれに対抗するために結成されたとされており、また、ユーリルが引き起こした【聖女攫い】事件にも関わっている可能性が強く示唆されている。
○西方諸族連合
西オルゼに割拠する「亜人」達の諸国・諸勢力の連合であり、『長女国』に対抗するための枠組み。
しかしそれはあくまでも「敵の敵は味方」の延長であり、また執拗にして執念的なる【懲罰戦争】に相対するためのもの。
現実には連合諸国同士も各々対立を抱えており、「血なまぐさい」竜人の傭兵団が各戦場を渡り歩くことができる程度には、争いが絶えない。
○ウル=ベ=ガイム氏族連邦/『氏国』
西オルゼ北東にて『長女国』と最前線にて相対する亜人種【戦亜】の諸氏族がまとまった戦士の国。
魔法の力を恐れぬほどに戦意猛々しいと称されているが、物語の10年前の時点で「大要塞」を激戦の末に破壊されており、『淡き抱擁の峡原』に最終的な防衛ラインを引いて【懲罰戦争】に抵抗。夥しい犠牲を払いつつも、毎年の収穫期を狙った『長女国』の攻勢を撃退し続けている。
しかし、常より氏族間及び氏族内で激しい闘争が繰り広げられており、南方の隣国【イシル=ガイム至天国】は元々【氏族連邦】に所属していた者達であることが示されているが、独立戦争に敗れた結果、自立されている。
なお、防戦一辺倒というわけではなく、"奴隷狩り"を行う存在としても『四兄弟国』圏では忌み嫌われ警戒されている。
○イシル=ガイム至天国/『至国』
西オルゼにて【西方諸族連合】の一角を成す【空亜】達の国家。
【氏族連邦】から戦争によって分離独立したことや、あらゆる翼を持たぬ知性種を"地を這う虫"と蔑むこと、雷雲と共に高速飛翔する【天雷衆】という精鋭集団を擁することなどから、かつて【氏族連邦】のうち「翼を持つ氏族」達が分離して結成した国であることが強く示唆されている。
○生命の紅き皇国(アスラヒム皇国)/『皇国』
西オルゼ南東にて『長女国』と接する、吸血種達による階級制国家。
種族の生態に従い、食料である『隷畜』を最下層に、最高指導者である『皇血種』を頂点とし、その間に"生命紅の濃さ"によって『仕属種』『侍属種』などの階級が存在している。
階級間では、低位の吸血種に対して、その意思と行動を"生命紅"を通して縛ることで命令に服従する「人格」を生み出す「使命統治」という独特ながら強力な仕組みがあり、特に最上位たる『皇血種』によるものは【大命】とも呼ばれる。
【血】を操る技、【闇】属性の魔法、死霊術の原型である【遺念術】や、『蝙獣』と呼ばれる凶獣を生み出すなどの魔導の大国『長女国』をして危険視せざるを得ない実力を有している。
特に、数十年前には、皇国内に点在するという各地の"里"で調練した【血の影法師】を多数侵入させて"雲上狩り"と呼ばれる大量暗殺・破壊工作を実行。【聖戦】家による対抗的感知魔法が開発されるまでの間、『長女国』を危機に陥れた。
物語時点においても、ユーリルという少年が『末子国』で【聖女攫い】を行いつつも――『長女国』に大乱を起こすべし、という【大命】によって苦悩しつつ【エイリアン使い】の下に身を寄せており、その動向と思惑が警戒されている勢力である。
○星灯りの森林国/『星国』
【西方諸族連合】の一角を成す、【黒森人】達による森林領域の国家。
【樹木】の大規模魔法や、樹巨人を『同盟者』としていること、"大鷲"に騎乗する空騎兵から成る『空眼』という精鋭部隊を擁することなどが明らかとなっているが、その他の詳細については未出。
○スィルラーナ技装国/『技国』
【西方諸族連合】の一角を成す、【白霧の民】と呼ばれる者達の国家。
随一の技術大国であり、【義体兵】と呼ばれる"魂"に関わる技術を備えているとされており、短命の呪いを受けたルクとミシェールが一縷の望みを託した当初の目的地であった。
【懲罰戦争】においても戦場に姿を表すことは稀であるとされており、その詳細は2章末現在、謎に包まれている。
○【遍紋】の巨人
【西方諸族連合】の一角を成す、遍紋と呼ばれる入れ墨を全身に刻んだ巨人の集団。
その種族文化においては非常に重要な事項らしいが、"試練"を求めて自ら死地に赴く習性があるとされており、そのために【懲罰戦争】に現れることもあるというが、2章末現在、その詳細は未出。
○氷海の兵民
東オルゼ地方の北方に広がる【北方氷海】に住まう"蛮族"とされる氷獄の民。
独特なる【呪歌】の力を特徴とし、【氷凱竜】の封印とその眷属たる『氷獄の守護鬼』達との戦いに関わっていることが示されているが、『長女国』の【冬嵐】のデューエラン家からは同一視されてもろともに攻撃を受けている、とされる。
2章末現在、追放者であるデウマリッドから、"名喰い"と呼ばれる独自の力をも有していることが明らかにされているが、その詳細な機序や、【氷凱竜】との因縁等については未出。
○マギ=シャハナ光砂国
東オルゼの東方の砂漠にあるとされるオアシス国家。
"旧教"と呼ばれていることや、リリエ=トール家がその亡命神官を祖とすることなどから、【聖墓教会】以前の古い諸神崇拝の宗教を基とした国家であることが示唆されているが、詳細は未出。
■過去の勢力
○黄昏の帝国(オーゼニック帝国)
諸神によるシースーア創世後に、オルゼ=ハルギュア大陸の大部分を支配したとされる空前の大帝国。
その始祖は、半神として人の世に転生した【白き御子】その人であり、これを滅するために【黒き神】もまた転臨したことで諸神同士の大戦が勃発。【闇世】が生まれるなど、物語時点における様々な状況と因縁の原因が象られた。
なお、16属性論として【人世】の人々の認識に巨大な影響を与えている概念である「魔法学」は、この大帝国の時代に生まれたともされている。
○竜主国
【黄昏の帝国】を巡る諸神同士の闘いが激化する最中に「兵器たる究極生命」として生み出された"竜"種達が、神々の相討ちによる帰天後に【百亜争鳴】の混沌を治め、"竜が人族を支配する時代"をもたらした。
諸竜に推戴されて初代"竜主"となった【贖罪竜メレスウィリケ】の下、環境を塗り潰す力によって、1,400年もの間の統治が続いた。
ただし、この「力」の根源は――神の似姿や亜人といった"知性種"を喰らうことで得られるものであることが明らかとなった。
この事実が直接影響しているかどうかの詳細は不明であるが、竜主国はこの後【虐食竜の乱】によってメレスウィリケが弑逆されて混乱に陥り、続く【十六翼の禍】によってその権威が完全に失墜。
【人世】における大いなる災厄と成り果て、ついに、メレスウィリケの弟であり「人になる」ことを選んだ【下天竜】クルグドゥウードを祖とする竜人達が率いた反乱によって、ついに崩壊した。
なお、このことに触れて、ヒュド吉が以下の通り述べている。
「民をまもらず、ただのエサとして見てしまっては――それは、そんなのは、あの【ぎゃく食竜】の一派と、同じになってしまうではないか!」
また、竜主国の崩壊後に【闇世】に落ち延びた"竜主"達もあったようであるが、その多くが迷宮領主達によって討ち取られたことが示唆されている。
物語第2章で名前が登場する「竜主」は以下の通り。
・贖罪竜メレスウィリケ:初代竜主
・下天竜クルグドゥウード:竜人の祖の一翼
・塔焔竜ギルクォース:竜人の祖の一翼
・火竜レレイフ:ギルクォースの子
・炎竜ガズァハ:ギルクォースの子
・嘯潮竜ウィカブァラン:多頭竜蛇の祖
・虐食竜ゼロストーヴォ:メレスウィリケを弑した竜
・氷凱竜ヴルックゥトラ:【十六翼の禍】の一翼
・撒餓竜ツァーグロウロ:ヴルックゥトラが言及
・爛酸竜ダローイジェンナ:ヴルックゥトラが言及
・金套竜マイルゼフォウ:ヴルックゥトラが言及
・鐘霆竜スボルダーカ:ヴルックゥトラが言及
・騒嵐竜ドゥインラーナウ:ヴルックゥトラが言及
■諸神
異世界シースーアを生み出した17柱の神々。
狭義には【人世】側に残る『八柱神』を指す後としても使われる。
空前の大帝国【黄昏の帝国】を巡り、【白き御子】と【黒き神】の両派に分かれて争った結果、【闇世】とその諸法則が誕生して物語時点に至る大きな因縁が紡がれる源流となっているが、相討ちによって帰天した後も世界への干渉能力は失われていない。
具体的には【人世】でも【闇世】でもその"加護者"に影響を与えることができ、『称号』を与えて運命を操作し、技能点を"点振り"してその生き方を誘導する「神々のゲーム」が継続している。
○八柱神
諸神のうち【白き御子】に付き従い、【黒き神】と争って追い詰めたことで、彼らによる【闇世】の創造を招いた一派。
多くの人間種に対して、【守護神の○○】と呼ばれる加護系の種族技能を通じて恩寵を与えることができ、その中には【闇世】の迷宮領主の【情報閲覧】への抵抗能力も含まれている。
また、神威と呼ばれる、諸神への祈りを捧げる者を通して【人世】において発動させることのできる超常も存在している。
・亜々白々なる輝きの御子(フィエール・ラ=ジンリ)【光】属性
【白き御子】とも呼ばれる。【黄昏の帝国】を建国したとされる。
・真贋と法統の裁者(スゥレ=エイユーリオン)【均衡】属性
詳細未出。
・破邪と癒やしの乙女(クールエ=アトリテラ)【活性】属性
【癒やしの乙女】とも呼ばれる。
その加護者は『末子国』において特別な役割を持つとされている。
・戦詩と鯨波の海帥(ヴァンゴ=ラヌンミ)【水】属性
【氷海の兵民】によって特別な信仰を受けていることが仄めかされている。
・啓明と炎影の老師(ヤヌム=トゥ・テノーグ)【火】属性
詳細未出。
・宝穣と鉱髄の地母(ミルドラ=メルテミオ)【土】属性
詳細未出。
・風駆と天袖の踊子(シシカ=シュカーファ)【風】属性
詳細未出。
・閃雷と踏躙の驍将(ゼレス=ハルゼ・レイド)【雷】属性
詳細未出。
○九大神
諸神のうち【黒き神】に付き従い、【白き御子】と争って追い詰められ、【闇世】を形成して自らを信奉する者達を匿った一派。
その子孫である『ルフェアの血裔』という種族に対して【後援神の○○】という系統の種族技能を通じて恩寵を与えることができること、主に彼らを迷宮領主と化して強力な尖兵に仕立てること、【闇世】において発動された神威に対抗して相殺するよう介入できることなどから、こと【闇世】においては『八柱神』の【人世】に対するそれ以上に強力な介入力を有していることが示唆されている。
・全き黒と静寂の神(ザルヴァ・ハ=ルーファ)【闇】属性
【黒き神】とも呼ばれる。一握の土くれより【闇世】を創造した。
【エイリアン使い】オーマに"注視"を向けている。
・夢幻の狭間の遊び子(ディグ・トゥ=ルーナ)【崩壊】属性
【夢子】【夢遊子】などとも呼ばれる。
教父ナリッソによる神威発動実験の際に、対抗介入を行った。
・七ツ掌と欺きの盲者(ルスカ=ヘスペルフォル)【空間】属性
詳細未出だが、メルドットの『後援神』となった。
・嘲笑と鐘楼の寵姫(クィーフ=オフィリーゼ)【精神】属性
【闇世】において【火】を代行する。ル・ベリの『後援神』。
・星翳と双月の番人(ナウロル=ベラディオン)【重力】属性
詳細未出。
・無邪気と遠目の悪童(フォイル=ロイト)【混沌】属性
詳細未出。
・魂引く銀琴の楽女(クールヤ=エ・リィコーネ)【死】属性
【癒やしの乙女】の姉妹神。【遺灰】のナーズ=ワイネン家によって密かに信仰されていたことが示唆されている。
・果香と腐根の隠者(イリテ=エリリテ)【土】属性
【根の隠者】とも呼ばれる。かつてリッケルに加護を与え、グウィースの『後援神』ともなっている。
・凍砂と瞑睡の旅人(アーリュ=オンタール)【氷】属性
詳細未出。
■種族
○闇世の諸種族
*ルフェアの血裔
【人世】においては「魔人」とも呼ばれるが、元は【人世】に住まう一派であった。
【黒き神】に従って【闇世】に移住した者達の子孫であり、【闇世】の自然法則下の魔素と命素を吸入するための【異形】という器官を発達させている。しかし、元【人世】の存在として本来的には【異形】など必要なく、単に【異形】に頼りすぎた結果、本来的に備わっていたはずの「内なる魔素」「内なる命素」を自らの体内で練り生み出す能が失われている可能性が高い、と【エイリアン使い】オーマが考察している。
*イリレティアの播種
【樹木使い】リッケルが自らの全存在を賭け、生み出した"種子"から芽吹いた新種。
『ルフェアの血裔』の性質と『樹人』の性質を兼ね備えているが、たった一人の新種の祖たるグウィースがまだ子供(幼樹)のため、その生殖等を含めた生態の詳細は不明。
この種の誕生と前後して、【闇世】においては由緒ある名跡であった【樹木使い】の権能が消滅しており、グウィース自身の特殊な力と合わせて、未だ明かされぬ謎を秘めた存在であることが示されている。
*小醜鬼
『ルフェアの血裔』を"穢す"ために生み出された種族とされており、大陸においては既に根絶されている。
しかし【擾乱者】によって一部が『最果ての島』に導かれ、さらに多頭竜蛇ブァランフォティマの『竜言』の歌によって魔法を扱う個体が出現する程度にまで知性を高められていたが、【エイリアン使い】オーマによって征服され、急速に知能も知性も零落させつつある。
*小人の樹精
『イリレティアの播種』グウィースが生み出した種族。「みー、みー」と鳴く。
まるで【エイリアン使い】にとっての【エイリアン】達のように、それらほどではないが、【人世】の植物とすら結び付いてその形態を変化させた"分種"を生み出す能を示している。
○神の似姿
【人世】において「人間種」を指す言葉。
主には「亜人」や、【闇世】の「魔人」に対置する言葉として使われる事が多い。
*オゼニク人
『四兄弟国』圏に住まう主な人間種であり、狭義には『神の似姿』とは彼らを示す。
なお、「オゼニク」とは古代帝国の名から来ている。
*イェルーン人種
ハルギュア地方の人間種の一派であることが示唆されている。
○亜人
『神の似姿』とは定義できないが、しかしそれでも「人族」の範疇に含むとされた諸族の総称だが、あくまでも『四兄弟国』のオゼニク人達から見た定義である。『神の似姿』との交配が可能な種族もあることが示されているが、その詳細については未出。
*百亜争鳴
【黄昏の帝国】が崩壊した後に訪れたとされる、数多の「亜人」達が割拠した混沌の時代。
【竜主国】の統治によってこの混沌は鎮められた。
*戦亜
西オルゼの【ウル=ベ=ガイム氏族連邦】の主要な種族。
"戦士"文化の種族であり、氏族ごとに抗争を繰り広げているとされているが、その最大の特徴は「人ならざる"身体変化"」。
その変異した身体部位ごとに「氏族」が形成されており、広義には空亜や海亜も含む。
ルクの解説によれば、「牙」や「爪」や「鎧」を持つ"獣"に近い見た目の氏族もあるが、学問上はオゼニク人とも交配可能な「人族」であり、当初オーマがイメージしていた【獣人】とは異なる存在である模様。
*空亜
西オルゼの【イシル=ガイム至天国】の主要な種族。
【ウル=ベ=ガイム氏族連邦】から独立戦争を経て分離した「翼を持つ」氏族達。
*海亜
戦亜の一派であるが、詳細は未出。
*吸血種
見た目が人族とほとんど変わらない存在でありながら、その人族の生者の血を吸い喰らうことや、身体のほとんどが【生命紅】と呼ばれる存在・物質によって形成されている点で、大きく人族と異なる存在。
"神を捨てた種族"として『神の似姿』も『魔人』も共に憎んでいるとされる。
その社会や統治体制、能力などについては【生命の紅き皇国】の項を参照。
・生命紅
吸血種の身体を形成する【血】とほぼ同一の物質。
吸血種が吸血種として生存し、存続するために絶対に必要な要素がその全ての構成要素であり、畢竟、これを補給するためにこそ、【生命の紅き皇国】は非常に効率的で完成された、原材料を産出し、そして搾り取るための国を築き上げてきた。
【生命紅】によって血肉を形成しているため吸血種は非常に死にづらく、また、これを武器や防具として操る【血操術】という種族的な技能も有している。
しかし、【血】を己の内に吸い取り取り込んで【生命紅】に変換する過程は酷く臭うこと、また、あくまでも人間の形で存在し人間とほぼ変わらない精神を有する生態をしていること、そして「亜人」として捉えられていることなどから、その正体には大きな謎が存在することが示唆されている。
*竜人
「人になる」という"第二の道"を選んだ【下天竜】クルグドゥウードらを祖とする亜人種。
オルゼ東端の【ウヴルスの里】に続いてきた一派と、オルゼ西端の【大泥原】に根城を置く一派が存在することが判明した。
かつて、力を得るために知性種を襲い喰らう災厄と成り果てた【竜主国】を打倒する原動力となったが、【人世】における支配的な人種などになっているわけではない。
なお、【ウヴルスの里】においては"竜に堕ちる"ことは忌むべきこととされ、その血と憤怒は鎮めるように務められていたが、『竜人傭兵団』や【拝竜会】というそうではない可能性がある存在が現れたことで、竜人ソルファイドは、主たる【エイリアン使い】オーマに与えられた「問い」において大きなテーマに直面することを自ら感じ取っている。
*森人
黒森人を含むより広い概念だが、他の森人種の存在または詳細は未出。
*黒森人
西オルゼの【星灯りの森】に住まう亜人の一派。
【星灯りの森林国】を形成し、【樹木】に関する魔法を扱うことや、樹巨人との同盟、"大鷲"騎兵の存在など、森と関わる生態や社会体制を構築していることが強く示唆されている。
*丘の民
西オルゼの亜人の一派。鍛冶技術と採鉱技術に長けており、西オルゼの諸山脈に『連峰王国』を形成していることや、【黄昏の帝国】の時代には大陸中に巨大な鉱山・坑道網を形成していたなどとされるが、2章末時点でその詳細は未出。
*白霧の民
種族としての生物的特徴については詳細未出。
社会体制や統治、技術等については【スィルラーナ技装国】の項を参照。
*巨人
種族としての生物的特徴については詳細未出。
社会体制や性質、能力等については【遍紋の巨人】の項を参照。
*獣腿人
『ハルギュア中央高原』に存在する種族であり、下半身が「獣の腿」であるとされる亜人種。人族と「半交配」が可能であるとされる。
物語時点では、『長兄国』の【大東征】による主要な攻撃対象であることが示されている。
*人魚
【闇世】において、グウィースが『最果ての島』の遠洋で遭遇した下半身が魚体である亜人種。
泡による会話や、海獣を使役するなどの組織的行動を取るが、その正体は元は【人世】においてネレデ内海に住まうかつて『次兄国』と協力し、そして争った者達であることが強く示唆されている。
特に【闇世】においては、多頭竜蛇ブァランフォティマと何らかの形で連携していることが示唆されており、共に【深海使い】の"裂け目"を通って【闇世】に落ち延びたのではないかと【エイリアン使い】オーマは考えている。
・海憑き
【人世】において、人間の精神を混酔させる魔性の歌声たる人魚の能力。
多頭竜蛇ブァランフォティマは、この力を『竜言』によって再現し、『最果ての島』の小醜鬼達を強引に知性化させていたことが疑われている。
*蛇人
【マギ=シャナハ光砂国】よりもさらに東方にいるという、下半身が蛇体である亜人種とされるが、詳細は未出。
*爬虫類人
西オルゼに住まう、【西方諸族連合】に属する亜人の一派とされるが、詳細は未出。
○獣蛮
「砕けた大陸」に住まうとされる、【エイリアン使い】オーマがイメージした通りの「いわゆる獣人」という見た目をした諸種族。
"獣を人間に近づけた"存在であり、例えば『鹿蛮』は、二足歩行している以外は完全に鹿である存在。
オーマの認識においてはもはや「人に亜するもの」とすら捉えられず、結果、「人」の範疇からも外れた「蛮なる者」として『獣蛮』という語として"翻訳"された。
○樹巨人
【星灯りの森】における黒森人達の同盟者たる種族。
その"はぐれ"であるエグドがグウィースによって拾われているが、種族としての詳細は未出。
○氷獄の守護鬼
【北方氷海】において猛威を振るう「氷でできた」鬼であり災厄たる"命も魂も氷漬け"にされた存在。
人間の遺体に取り憑いてその生前の力を、魔法すら含めて振るうことができ、氷海の兵民達にとっても【冬嵐】のデューエラン家にとっても討伐の対象。兵民達からは「凍れ」と呼ばれている。
その正体は【北方氷海】の海底深くに封じられているという【氷凱竜】ヴルックゥトラの眷属であるとされおり、火で溶かすことができず、氷に触れれば再生し、死者に触れれば取り込むという性質を持つ。
2章末においては【冬嵐】家の工作員ハンダルスによって持ち込まれ、【冬ノ司】に取り憑いた【氷凱竜】の劣化意識体の竜体を形成する材料ともなった。
○竜族
神々の争いの時代において「兵器たる究極生命」として生み出された存在。
『竜言』と呼ばれる独自の現象超克の技術を扱うことができ、特に【竜主国】においてこれは「環境を塗り潰す力」にまで至って、千年を超える支配を支える力であった。
しかし同時に、竜人達や魔人達からは「哀れな存在」であるとも示されている。
それは当初オーマと対峙したソルファイドが【竜の憤怒】に飲まれ、廃人寸前となりかけたことからも、巨大な代償を伴う力であることが強く示唆されている。
*多頭竜蛇
『最果ての島』近海を統べるブァランフォティマと、その切り落とされた首の一つが自立したヒュド吉が属する竜種の一派。
海竜の性質を持っているが、【エイリアン使い】オーマによる【因子の解析】では『混沌』属性が検出されており、その種族的な来歴においても謎が存在している。
ブァランフォティマ以外の個体が存在または生存しているかについては、2章末現在詳細は未出。
==============================
□元の世界関係
==============================
○「学び舎」
かつてマ■■が属していたフリースクール。
イノリを含め9名の"生徒"と関わっていた。
○■■■■会
マ■■の"生徒"の一人が巻き込まれていた出来事に関係する存在。
○集団失踪事件
イノリが原因とされている"生徒"達の失踪事件。
表向きにはマ■■が首謀者とされ、彼の人生を大きく狂わせ、変貌させることとなる。
○複合企業
イノリの失踪事件に関する情報を探し求めた結果、マ■■が物語の始めにたどり着いた存在。





