一難
ねいきは、目の前の兵士達がぼろぞうきんのように殺されているのをみて震えていた。
簡単に拳が、人間の体を貫通しているのだ。兵士達は、鎧を着ているのにである。
(D)
ゴハッ、、、(全く歯がたたない。自分の強さには、自信をもっていたのだがこの時初めて恐怖というのを感じたのである。)
辛うじて致命傷は避けているが、時間の問題であった。
Dが膝をついてもう限界が近いのをみて、王様を助けるプランが足下から崩れていくのを感じた。
目の前に...隊長が...いた。
ドゴン。腹に拳を受けたが、とっさに腹を気でガードしていたため耐えることができた。
まだうまく気功を操れないねいきは、体全体を覆う気をまとわせることはできなかったので危機一髪だった。
賭けであったが、この賭けにねいきは勝ったのである。
絶命していた兵士達は全て腹に一撃を受けていたため、腹に攻撃がくると読んでいたのだ。
余談になるのだが、ねいしょうは得体を殺めた時すでに体全体を覆う気をまとっていた。
戦いの天才なのだろう。
後に、ねいしょうとねいきは戦うことになるのだがそれはまた後のお話である。
「フム」耐えられたことに疑問を感じたのか、近くで腰を抜かしている兵士に向けて拳を放つことにした。
兵士の首を掴み、上に持ち上げて腹にめがけて拳を放ったのだ。
力なくただ呆然と持ち上げられた兵士に、死の一撃がせまる。
ようやく自分の身に何が起きるのか理解したのか、「ヒ、ヒィィィ」と声を上げた。
ドスン。にぶい音がして、拳は兵士の体を貫通し絶命した。
ニコリと笑う。やはり拳を受け止められたのは、何かの間違いであると。
再びこちらに向けて拳を放ってきた。
またあの攻撃がくる。
ねいきは、覚悟を決めた。気功とやらでこの目の前にいる相手を倒すことを。
「力と力のぶつかりあいになる...決着は一瞬でつくだろう。」
とDがつぶやく。
王の命運がかかった戦いが始まるのであった。
...
..
.
上からめがけてきた打ち下ろしの拳をかわし、床に触れた。
ドンッッッツ。もの凄い音がした。
拳一つで部屋全体が揺れる。
やはり、腹を狙ってきている。なぜそんなに腹を狙うのか疑問に思ったが、考えるのをやめた。
生死が決まる戦いで、余計なことを考えていては、すぐ死に繋がるからである。
ただ腹が好きなんだろう。
ねいきは前に一歩踏み出すと、、、
屈強隊長
「まずは、腹に打ってコイ。力をみてヤル。」ぽんぽんっと自分の腹を殴るよう合図していた。
(ならば遠慮なく)「おらっ」少しだが、今自分が出せるだけの気をまとわせて拳を放つ。
ズドンッッッツ。凄い音がして、屈強隊長の腹をねいきの拳が貫通していた。
「ハ、、、ハヒ、、、、」声にならない声をあげて屈強隊長は絶命したのである。
ズゥゥウウンと崩れ落ちる音とともに、周りの屈強達がこちらに気づいた。
D
「一撃?」あまりの衝撃的な出来事に驚きを隠せない。
「ニゲル。ニゲル。」蜘蛛の子を散らすように逃げて行く屈強達をみて、安堵するねいき。
もし全員でかかってこられたら勝負はわからなかっただろう。
指揮官を一番始めに倒せたのはねいきにとって幸運であった。
こうして王を助け出すことに成功したのであった。