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8 昔話1

 おばあちゃんのお家は平面クロスの傍の路地から入った数軒かたまって建っている瓦ぶきの平屋で小さなお家だった。


玄関を上がると、どこからともなく香って来るお線香の匂いと、微かに聞こえる時計の振り子のカチカチ音が聞こえて僕達を出迎えてくれる。


「お邪魔しまーす」


美咲殿の元気な挨拶と共に上がり込んだ和室の8畳ほどのお部屋は、南向きで、小さな庭の植木たちが、新緑の濃い緑色の葉が、アルミサッシの引き戸ガラス越しで、穏やかに風に揺れている。


「ジュースがいいかい? ばあちゃんだから、お茶しかないんだけどね」


すでに、急須にお湯を入れて、選択肢を与えたようで、その実、お茶一択のおばあちゃんは、そのまま構わずお湯を入れ続ける。


「大学生かい。大したもんだね。ばあちゃんなんか小学校も通わなかったから、字もろくに読み書きできないよ」


お茶を、大き目の湯呑3個を取り出して、注ぎながら、僕達ににこやかに話を継いでくる。

美咲殿が、


「小学校も通っていないって、おばあちゃん、おいくつなの?」


「95」


「嘘! 見えない85くらいだと思った!」


そこの違いが分かるのか!美咲殿!!


「上手だねー」


おばあちゃんが嬉しそうに微笑んでいる。

お茶を頂きながら、大きいお饅頭を頂きながら、僕達は通り一遍の自己紹介をして、おばあちゃんのお話待ちだ。


会話は美咲殿のおかげで、淀みなく廻り、改めて対人スキルの凄さに恐れをなす。それでも、二人の会話の呼吸が止まるときがあり、それは、どうしても初対面同士、どこか、阿吽の呼吸から外れる何とも気恥ずかしい空気を纏い。沈黙の時間に振り子時計の振り子の音が、静寂の昼過ぎの8畳間に響き渡っている。



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