7 おばあちゃん
「戻って、操車場を見て爆走スタイルの炭鉱も見に行こう」
美咲殿の掛け声とともに軽やかに下り坂を降りる僕達、平面クロスを右折すればすぐそこに操車場はある。
「あ! さっきのおばあちゃん」
美咲殿がグイグイいったおばあちゃんに、またしても遭遇した。平面クロスのチョイ手前で。
急制動をする美咲殿のディスクブレーキ付き折り畳み自転車は全輪ロックを伴い横スライドしながら、おばあちゃんの目の前で止まった、いやスライドして、ワザとそこで止めた。
「おばあちゃん! 上まで見て来たよっ!!」
既に旧知の間柄だ。その懐に入るテクニックを是非にともご教授願いたい。派手に横スライドをかまして左足を添えた自転車を立て直し、満面の美人スマイルを見せている。
「そうかい、そうかい。どうだった?」
「いいね! 素晴らしい!」
感性で答える美咲殿に、
「あんたら、どっから来たの?」
「東京、二人共、同じ大学の三回生」
「そうなの。遠いところ良くおいでなすったな」
そうかいそうかいと目を細めるおばあちゃんは、
「急がないんだったら、ウチに来るかい? 昔話に興味があるんだろ?」
いや、昔々あるところにじゃなくて、廃線です。
美咲殿は、
「良いYO! YO!」
なぜラップ調。
おばあちゃんのお家に転がり込むことになった。