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10 昔話3

「昭和20年くらいになるとね。炭鉱で働く人達、男の人達がいなくなってね、戦争に取られて、それで、アメリカ軍の捕虜なんかも一緒に働いていたよ。あんたがた、その頃のイメージってのはどんな感じ?」


「そうですね……食べ物に困って芋とか食べてそう」


美咲殿が虚空を睨みながらひねり出した。


「そうだね。全体に食べ物には困ってたけど、私は農家の出だからね。それは全然困らなかったんだよ。それでさ、おにぎりとか作って、アメリカ軍の捕虜の人達にあげてたんだ。喜んで食べてたよ。おいしいって言葉覚えてね。ありがとうってのもよく言っていたよ」


75年以上前の思い出を昨日の様に目を輝かせてお話するおばあちゃんがいた。


「その当時、そんな事して何か言われませんでした?」


「そりゃあ、言う人もいるよ、でも、私はそんなの関係ないよ。動けばお腹は減るんだしさ。同じ仕事してんだから、仲間だろ? それに言いたい奴には言わせておけばいいんだよ。こっちは自分の持ち出しでやってるんだから、他人にどうこう言われるもんじゃないっての。それに、その後、戦争が終わって、アメリカに帰るときにわざわざ訪ねてきて、私に色々、珍しい食べ物とかおいて行ってくれたよ。ちゃんと通じるのさ」


僕達を見るおばあちゃんの目は何か言いたそうだった。


「私の旦那もさ、その時、兵隊に取られてたからね。遠くどっかでおんなじ様に扱われていて欲しかったのもあったんだよ。いやでしょう。自分の旦那が捕虜になって変な扱い受けてたら、多分、その一心だったんだよね。だから、不純って言えば不純なのかな。純粋に困っている人を助けてたわけでは無くて、情けは人の為ならずってところだったんだからさ」


そう言うと、笑みをこぼしてお茶を啜った。


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