8話 な・・・何で脱ぐんだよ?
水奈月莉菜は自分の部屋で机に向かって座ると、机の引き出しの鍵を開けて一冊のノートを取り出した。同じ模様のノートが、引出しの中には数冊入っている。
水奈月は取り出したノートを、空白の場所まで開くと油性のボールペンを握ると、日付を記入した。
『莉菜へ
お願い、雪待くんには優しくしてあげて
お願いだから・・・』
続けてそれだけ書くと、もと在った場所にノートを戻して、ベッドに横たわった。
昨日、ついに水奈月さんとゲーセンデートをしてしまった。いや、ほんとにデートか?だったとして、お邪魔が居たのが残念だけど。
いつも祐二と二人で行っているメガは、水奈月さんが居るだけで新鮮な感じがした。
これから三人で遊ぶようになるのだろうか?
ふとそんな事を思ってしまった。
祐二は同じゲーマーのくせに、器量良し、成績良し、顔も良しだ。水奈月さんが傾かないか心配してしまう。いや、所詮僕は女子に好かれるタイプじゃない。
ちょっと寂しい気もするけど、それはそれで仕方がないかと思った。
ただ、パシリはどう考えても納得できない。とりあえず死んどけ。
休み時間、楽しかったと思って、水奈月さんの方を見ると睨まれていた。
鋭い目付きで。
えぇ・・・
僕、何かしたでしょうか?
目を逸らして昨日の事を思い出す。いつも通りゲーセンで遊んだだけで、水奈月さんに変わったところも無かった。僕と祐二で教えながら、いろんなゲームをしたけど、楽しそうに見えたんだけどなぁ。
「数音、ついに妄想でもふられたか、器用だな。」
ふられてねーよっ!
そもそもしてねーし。
真面目に考えているのに考えているのに、祐二のアホ発言で台無しだ。
「だから、してないっての。」
「いや、水奈月を見て沈んでるから、てっきりそうなのかと。」
いやいやいや。
妄想するなら自分に都合の良い方をするだろ。なんで好き好んでバッドエンド想像するんだよ。
「昨日、僕らなんか変な事をしたかな?」
「いや、してねーだろ。変だとしたら数音の存在くらいだ。」
「お前なぁ・・・」
人が真面目に考えているのに。
でも本当に心当たりがない。
「あんまり気にしない方がいいんじゃねーの?」
「そうかなぁ・・・」
「で、いつコクるんだ?」
何故話しがそこに行くんだ・・・
「そろそろ現実に目を向けないとな。」
「あのな!・・・」
と、そこでチャイムが鳴り、祐二はさっさと自分の席に逃げて行った。絶対僕で遊んでるよな、あのアホ。
結局思いつかないまま、放課後になってしまった。
今日は特に予定も無いので、帰って家でゲームをしようと考えている。のだけど、水奈月さんが話しかけて来ないかなと思って、片づけはゆっくりしていた。
自分から話しかけるのが、まだ苦手なヘタレの僕は。
片付けが終わり、席を立とうとしたところで、僕の前に人影が。
「あ、水奈月、さん・・・」
来てくれた、と思って見上げるが、睨んでいるところは変わってなかった。
「雪待。」
「はい?」
いつもと声音が違う。これは、不機嫌な時の水奈月さんだ。
「ちょっとツラ貸せ。」
「は・・・はい・・・」
これって不良の呼び出しじゃないか?現実に「ツラ貸せ」と言う人がいるなんて思いもしなかった。
歩き出す水奈月さんに続いて、僕は教室を出た。
恐いけど。
まさかこの後、ぼこぼこにされるんじゃないかと、怯えながら後を付いて行く。
体育館裏、の更に用具室の裏まで連れて来られた僕は、周囲を怯えながら見渡す。
が、特に誰も居ない。
つまり、水奈月さん一人でやるって事だろうか。
用具室の裏まで誰か来るって事は、まずないだろう。
意識を失ったら、発見されるかな・・・
そんな心配をしていると、水奈月さんが足を止め振り向いた。
「ご、ごめんなさい。」
振り向いた水奈月さんに速攻で謝る。何に対してかは、自分でもわからない。
「あ?何謝ってんだ。」
「あの、僕が昨日、何かしたんじゃないかって・・・」
「別に何もしてねーだろ?」
「はい、僕の中では思い当たらなくて・・・」
「だったら謝んな。」
「はい。」
僕がそう返事をすると、水奈月さんはシャツのボタンを外し始めた。
はっ?
ちょ、何してんですか!?
スカートのところまで外すと、隙間からブラが少し見える。さらに水奈月さんはシャツの前を少し開いて、少し顔を赤らめ目を逸らした。
意味がわからーん!
「な・・・な、なんで脱いでんですか!?」
僕も慌てて目を逸らして言う。
「こ、これで、満足・・・出来るか?」
恥ずかしいならやめろよ。こっちも恥ずかしいしどうしていいかわかんないよ。
>その場から逃げ出す。
抱きつく。
煽る。
満足です。
あぁ、こんな時までやっぱり降ってきた。ってろくな選択肢ねぇ!何考えてんだよ、もう・・・。特に上から二つ目と三つ目は、生きていられそうにない。
>満足です。
意味が分からないけど、答えた方が無難な気がした。
「ま、満足・・・です。」
言ってしまった・・・。
変態扱いされるんじゃないか?なんで言っちゃったんだよ僕のアホ!
「そ、そうか。なら、もう行っていいぞ。」
え?
なんか殴られたり、罵られたりを予想していた僕は、その言葉で固まってしまった。一体どういう事なんだ。
分からないけど、白いブラに包まれた、白い肌の二つの膨らみは、僕の脳裏に焼き付いてしまった。
これってまたゲームに集中出来なくなっちゃうじゃないか。なんて考える事が出来たのは暫く後で、僕はその場で、見てしまった水奈月さんの胸と、状況の意味不明さで、頭が回らなくなってしまった。




