7話 僕をなんだと思っているんだ?
絶対終わったと思っていた、水奈月さんとの家デート。
え、デート?
あれってデートでいいんだよね?
いや、問題はそこじゃなかった。とりあえず嫌われなくて良かったぁー・・・。と、あれから安堵を繰り返している。
だが、いい事ばかりではない。現状、僕の生活に支障が出てしまっている。これは大問題だ。
コントローラーを持つと思い出してしまう、水奈月さんと肩が触れた事を。そうなると雪崩だよね、ケーキを口に入れられた事とか、太腿に目がいってしまった事とかつい思い出してしまって、操作が止まってしまう。
由々しき事態だ!
「いよいよ木曜だな、デッドエンドウォーの発売。」
休み時間、いつも通り祐二が話しかけてる。そうだった、今週の木曜だった。普段なら話しに乗っていくのだけど、土曜の出来事が強すぎて忘れていた。
「ああ、楽しみだな。」
「数音はもちろん、帰ったら速攻やんだろ?」
「当たり前だろ。祐二もだろ?」
「まあな。」
日曜だった昨日は、あんまりゲームが進んでいない。木曜までにリハビリしなければ。
デッドエンドウォーは魔獣と戦うゲームなのだ。仲間と協力してシナリオ仕立ての、人間の領地を侵してくる魔獣を倒していく。最新の次世代ゲーム機、R3の最新作だ。かなり前から、祐二とは楽しみにしているので、一緒に魔獣を狩りに行くのが楽しみなんだ。
「今日はどうする?」
「ん、メガ?」
祐二の問いに問いで返す。聞き返さなくても十中八九そうなのだが。
僕は水奈月さんの方に目を向ける。にっこりとほほ笑んでくれたと言う事は・・・。
どういう事?
まあいいや、約束は特にしてないし、祐二の方が先に誘って来たので、今日はメガに行くことにしよう。
「なぁ、数音。」
「な・・・なんだよ・・・。」
祐二が肩に手を回して、耳の近くで小さく話しかけてくる。
「クラスメートでの妄想はやめとけ。」
!!
って何言ってんだこいつは。妄想妄想って言うけど、別に普段から常に妄想してるわけじゃないっての!ってか別に妄想なんかしないし。
「してねーし。」
「でもさっき、水奈月の方見たろ。やっぱ気があんだろ。」
くっ、あの一瞬でばれていたとは。気があるどころではないけど、そこは言えない。
「時間を確認しただけだっての。」
「分かった分かった、ほどほどにしておけよ。」
って全然分かってねー。信じてねーし。
そこで丁度チャイムが鳴り、先生が入って来て何時もの号令。
あ、時計は黒板の上か・・・。
放課後、水奈月さんはすぐに居なくなっていたので、何かを話す事も出来なかった。
「ほんと、好きだよな、それ。」
校門を出たところで、購買で買ったコーヒー牛乳に冷めた視線を向けて祐二が言ってくる。
いいじゃないか別に。
「祐二も飲めばいいのに。」
「いや、それはちょっと甘くて無理だ。」
まるで僕がおこさまみたいじゃないか。
「で、水奈月との妄想は何処まで進んだんだ?」
・・・
何故妄想限定で話しを進めようとするんだ、こいつは。
「だからしてないっての。」
「俺と数音の仲だぞ、遠慮すんなって。」
いや、仲とか以前の問題な気が・・・
「あのな、僕をなんだと思ってるんだよ。」
「ゲームやマンガでの出会いが現実でもあると思って妄想している人?」
疑問で終わるなら言うなよ。
「んなわけあるかっ!そこまでお花畑じゃないっつーの。」
「あ、そなの?」
ほんとに、こいつはもう・・・
そんな話しをしながら歩いていると、道の先にうちの制服を着た女子が見えた。
見間違えるわけがない、それは水奈月さんだった。
なんで、通り道にいるんだろう?
「お、あれ水奈月だよな。」
「そうだね。」
僕を待っていたんだろうか。いや、そんなわけないよね。
「森高くん、私も混ぜてよ。」
水奈月さんは、僕たちの前に立ち塞がるとそう言った。
ってか、何故祐二に確認する?
「どうする数音?」
いや僕に聞くなよ。そしてニヤニヤしながら言うな、こいつは絶対ろくな事を考えてないな。
「あ、雪待くんはOKだよね?」
ああ、そういう事か。僕は拒否しないと思ったから祐二に聞いたんだな。でもどうしようか、折角のゲーセンだし、緊張してろくに出来なかったら後悔しそうだ。
>いや、今日はちょっと、と濁す
祐二がいいなら構わない、と転嫁する
はい、よろこんで、と笑顔で言う
男同士の付き合いに水を差すな、と毅然として言う
うわ、また浮かんできたよ。なんなんだよこれ。無難なところは祐二にまかせるところだな。間違っても、よろこんで、なんて言ったら今後祐二に言われ続ける事確定だ。
>「俺はいいぞ。ってことで数音、二人の飲み物買ってきて。」
って、なんか割り込んできたっ!?
その前にまだ、僕が答えてないんだが。
しかもなんでいきなりパシリ?
「僕も、いいけど、なんで僕?」
「いや、俺ら二人だけ飲み物がないからさ、一人だけ飲んでるの気が引けるだろ?」
え、それなら祐二が行けよ。
「それなら私が行ってくるよ。」
いや、水奈月さんこそ行く必要がないだろ。一応、僕だって女の子に行かせるくらいなら、自分で行くくらいの気持ちはあるっての。
「分かった、行ってくるよ。何がいいの?」
「俺微糖コーヒー。」
「私お茶ならなんでもいい。」
「じゃ、行ってくる。」
まったく、祐二の奴は何を考えているんだ。まあ、水奈月さんが一緒なのは嬉しいけどさ。
「森高くんどうしたの?恐い顔をして・・・」
雪待が飲み物を買いに行ったところで、森高が水奈月を見据える。
「なぁ、あんた誰だよ?」
「え、何言ってんの?水奈月莉菜だよ、知っているでしょ。」
水奈月は森高の視線から逃れるように、少し後ずさった。
「ああ知ってる。だが俺が知ってる水奈月莉菜は、数音に絡むような奴じゃない。」
「・・・そんな、事を言われても・・・」
「まぁあんたの理由は知らなくてもいいが、数音になんかしたら、俺は怒るぜ。」
「それは、絶対にないわ。」
水奈月は森高の目を見返して、はっきりとそう言った。




