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6話 え、食べるんですか?

少し前に短い人生だったと思っていたが、それは今も変わっていない。誰かの思惑で余命の少ない僕に、思い出として残してやろうという陰謀じゃないかと考えていた。

だが今は別の意味で死亡フラグが立っているんじゃないかって気がしていた。

言い換えると、死亡フラグが立っててもいいやと思っている自分がいる。



「美味しい?」

そんな事を聞かれても、味がよくわかりません。

えーと、女の子に物を食べさせてもらう?それってファンタジーですよね、空想の産物です。テレビだとフィクションだよね。

ところがノンフィクションで存在しました。

僕の中では神話レベルの存在だと思っていたのに。

「うん・・・」

味どころではないけど、返事をしておく。

「私ももらうね。」

水奈月さんはそう言うと、自分の口へ切り取ったケーキを運んだ。もぐもぐしている水奈月さんも可愛い。

・・・

ちょっとまて、そのフォークは僕に使ったものだよね?

恐る恐る確認するが、お盆にフォークは一つしか乗っていない。

当然だ、ボスがそんなミスを犯すはずがない。

ってお皿は既に空じゃないか!?

食べるの早っ。

「どうしたの?」

水奈月さんが持つフォークを指差した僕に、本人が疑問顔を向けてくる。

「あの、その、フォーク・・・」

「え!?欲しいの?変態・・・」

ちっがーう!!

誰がそんな事を望んだよ、そんな目で見るな。何故僕を陥れようとするんだ。

「僕に使ったフォーク、取り替えて無かったと思って。」

「そう言えばそうね、でも別に気にしてないよ。」

水奈月さんは笑顔で言うが、その笑顔の裏で僕を陥れようとしたんだぞ。と思うけど、同じフォークで一つのケーキを食べた事実は、頭からなかなか離れそうにない。


「そうだ、何かゲームして見せてよ。」

突然何を言い出すんだ。見てもつまらないだろうし、何をしているのかも分からないだろう。

ってか取り出したマンガ開いてもいませんよね?

「え、見ても分からないと思いますよ。」

「そうなの?じゃぁ、一緒に出来るゲームは?」

ゲーマーは黙々とプレイする事が多いから、多人数プレイのゲームなんてまず持ってない。事は無いが、結局一人で黙々と進めるんだ。

「家には無いです・・・。」

「嘘!?この前、森高くんと一緒にやろうって言ってたの聞こえたよ。」

確かに言ったけれど、そんな事まで聞いているのか。

「あれはオンラインゲームで、僕も祐二もそれぞれの自宅でプレイして、ゲーム内で集まるって事なんです。」

「え、ゲーム内で友達と会えるの!?」

凄い驚きようだ。でもゲームをしない人にとっては当たり前なのかもしれない。

「私も参加出来る?」

したいのか・・・?

「ゲーム機とゲームを買って、自宅がインターネットに繋げる環境であれば可能です。」

「あ、買わないといけないのね。」

買わずに出来ると思っているのか。どんだけ疎いんだ。

「私にも出来そうなゲームってある?」

初心者向けか・・・。

って、あんたはマンガ読まないのか?読まないなら本棚に戻せよ。と、言えたらいいなぁ。

「パズルゲームとか・・・」

「パズル!?面白そう、やってみたい。やり方教えて。」

と言われると面倒な気分を抑え込んで、しょうがないなって気分が沸いて来た。そりゃ女の子に言われたら、気分良くなってしまうじゃないか。

「これ、コントローラーです。」

ゲームを起動しながら水奈月さんにコントローラーを渡す。珍しいのか、掲げたり、覗き込んだり、ボタンを押したり、いろいろしている。

「どうしたらいいの?」

「ゲームが始まったら、チュートリアルがでるので、それに従って操作します。」

初めてゲームするんだろうなぁ。

いいのかな、僕なんかに付き合ってゲームなんかして。

もっと他にいい人って、いっぱい居るだろうに。

「あ、画面に出てるボタンって、これでいいんだよね?」

と、水奈月さんがコントローラーを持って近寄ってくる。

「う、うん・・・」

二人でテレビに向かって並んで座っているけど、水奈月さんが寄って来た事で肩が触れる。だから免疫無いんだってばー!

「み、水奈月さん・・・近い・・・」

「あ、ごめん、つい真剣になっちゃって。」

と言ってちょっと離れ、申し訳なさそうに言う。

「嫌、だった?」

って聞くなー!嫌なわけないでしょうが。ちょっと上目使いでそんな事を聞いてくるなんて、ちょっと反則。


>ちょっと恥ずかしいと言う。

 素直に嬉しいと言う。

 今度は自分から寄って行く。

 止めてくれと言う。


また考えてしまってる!?しかも自分からは無いだろ、なんで無理な選択肢が混じるんだ、考えてるの僕じゃないだろこれ。どうでもいいけど、この癖は良くない。うん、良くないよ。

>うりゃっ!

とりあえず選択肢は吹き飛ばしておいた。


「嫌、じゃないです。慣れてないので、戸惑うというか、恥ずかしいというか・・・」

今の思いを素直に口にした。その言葉で水奈月さんが笑顔になる。

「良かった。」

いえ、こちらこそ。

水奈月さんと目が合ってしまった。


「数音ー?」

そこでボスの声が部屋に届いた。僕と水奈月さんは目を逸らす。

「なんだよ?」

「晩御飯、二人とも食べるでしょ?用意したから、降りてきて。」

・・・

もう用意したんだよね、何故それで食べるでしょ?とか聞いてんだ、作る前に聞けよ。

「あ、無視していいので。」

初対面の人を晩飯にまで巻き込むなっての。しかし、いつの間にか夕方の六時過ぎてたんだなぁ。ゲームしてると時間はあっという間だけど、それ以上に早く感じてしまった。

「用意してもらったもの、食べたいの。」

「え・・・本当に食べたいんですか?」

「うん。」

まさか夕飯まで一緒に食べるとは思わなかった。ボスが余計な事をするから。

「じゃ、下に行きましょう。」


それから水奈月さんは夕食を食べて帰っていった。夕食が豪勢だったのは言うまでも無い。ボスが見栄を張ったのは間違いない。

「いい娘ね、大切にしなさい。」

珍しくボスが僕に優しかった。

ちなみに下僕は、水奈月さんの帰り際に玄関ですれ違い昇天している。飲んで帰って来たはいいが、水奈月さんを見て出た言葉が命取りだった。

「おぉ!?お前、何時の間に若くて綺麗で細くなったんだ?」

無言でボスの鉄拳が飛びました。

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