31話 これ、ラブレター?
僕が違和感を感じたのはその日の午後だった。
お昼に弁当を買って、外で祐二と食べてから戻った時の事だ。
弁当は、近所の弁当屋さんが作って売りに来ている。一番人気は当たり前のようにからあげ弁当。嫌いな人より好きな人の方が圧倒的に多いと思われるあれだ。その日の個数が適当なので、売れ切れたら買う事は出来ないため、チャイムと同時にダッシュで買いに来る生徒も多い。
まぁ、授業を抜け出して買う生徒もいるけれど。
いや、弁当の話しはどうでもいいんだ。
そんな事よりお昼に行く前、僕の机の中に無かったものが入っている。それの方が問題だ。
そっと取り出してみると、手紙の封筒の様だった。
業務的な茶封筒ではない。
なんの嫌がらせだこれは・・・。
はっ!?
背後に気配を感じて振り向くと、満面の笑みで祐二が立っていた。
手遅れ・・・か?
「ど、どうしたの?」
「気になるよな、それ。」
くそ!しっかり見ていやがったか。今すぐ忘れて欲しい、ってか死んでくれ。
「なぁ数音よ。」
「な、なんだよ。」
祐二が僕の肩に手を置いて顔を近づけてくる。
「それは、らぶなレターってやつじゃないのか。」
言うなアホっ!
考えないようにしてたのに。
だが、おそらくそれは無い!僕に限ってありえないだろ。
「見てないから、分からないよ。」
「どうかな。最近女子二人に告白されたもんなー。来てんじゃねーの?」
なんにも来てないっての。
それにその話しはやめて欲しいな。
「早く見ようぜ。」
「何故祐二が見ようとする。」
「え!?気になるからに決まってんだろ。」
見せないのが心外、みたいな反応すんな、バカか。僕に来たものを見て当たり前だとでも思ってんのか、まったく。
「じゃ、次の休み時間な。」
「えっ?」
そこでチャイムが鳴る。
ちょっと待て、何故見る方向で話しが進んでるんだよ!
「お、おぉ・・・熱烈な告白、だな・・・」
「告白?・・・らぶれたー?」
次の休み時間、祐二に強制連行されこっそり屋上に来た。そこで祐二が勝手に手紙を開いての反応だ。
『雪待 コロス
水奈月さんと イチャイチャ
してんじゃねー
ノロイ コロス
おぼえておけ・・・』
・・・
「水奈月にファンが居たとはな。」
・・・
思考が止まっていた。ってかなんだよこれ。ファンとかそういう問題でもないし。むしろ水奈月さんも危険だろ、これ。
ってか僕、殺されるの?
「どうしよう、祐二・・・ってなに合掌してんだよ!」
「あ、いや。つい。」
ついじゃねーよ、勝手に殺すなアホ。
「放置でいいだろ、差出人も不明だし。」
「えぇ・・・」
でも実際に何かあったわけでも無いし、特定も出来ない。昼休み誰かが見ていればいいけど、普通自分たち以外の行動なんて気にしないもんな。
「警察にでも行くか?」
「でも、手紙だけじゃ何もしてくれないんじゃない?」
「だよなぁ。」
「まぁ、ちょっと気を付けておくくらいしかないよね。」
「俺も周囲にちょっと気を配ってみるわ。」
「ありがと祐二。」
「ああ。しかし、これ、笑えねーじゃねーか。」
笑う気だったのかよ!ったく油断も隙も無いな。それが目的で見たがってたんだな、こいつは。
しかし予想通り、僕にはありえない事だった。
こんなのもあって欲しくないけどさ。
放課後、祐二がメガに誘って来たので一緒に向かった。
ゲーセンに入ると自動販売機が置いてある休憩スペースに、連行される。
「なんだよ。」
「いや、例の手紙の件だ。ここなら学校の連中に聞かれる事も無いだろ。」
祐二がそんな事を、真面目な顔で話し出した。
「なにか、あるの?」
「ああ。数音さ、明日の昼休み水奈月を食事に誘え。」
「はぁっ!?」
突然何を言い出すんだ。そんな事をしたら死期が早まるじゃないか!
「まあ聞け。俺はその間、教室で寝たふりをして見張っておいてやる。その為には、数音と水奈月が一緒に行動する方がいいだろう。」
そういう事か。僕はおとりで相手を煽るわけだな。
「そんなうまく行くかな?」
「他に方法を思いつかないんだから、しょうがないだろ。」
まぁ、僕は何も思いつかなかったから、否定は出来ない。むしろ考えてくれた事に感謝しなければならないよね。
「ごめん、僕は何も思いつかない。ありがと。」
「とりあえず、明日試してみるか。」
「って僕、誘えるかな・・・」
「そこは頑張れよ。脅迫されたのはお前なんだからさ。」
「う、うん。」
話しかけるのすら未だに緊張するのにな。特に学校では目立ちたくないから、余計に。
翌日、なんとか水奈月さんを誘って、弁当を調達する事に成功した。
校庭の脇にあるベンチで、二人で食べる事にする。
「数音から誘ってくるなんて思わなかった。しかも学校で。」
「う、うん。」
「何か隠してるでしょ。」
う・・・鋭い。
普段の僕の行動がヘタレだから、頑張ったところで見透かされてしまうんだな。
「そんな事は、ないです。」
でも、言えない。
「むー」
痛いから頬を引っ張るのをやめてください。
「教えて欲しいなー。」
うわ、しつこい。
>莉菜と一緒にランチがしたかったんだ。
昼休みも莉菜を独占したいんだよ。
莉菜、とだけ言って目を見つめる。
莉菜の事しか考えられないんだ。
ハードル上げて来たな。顔から火が出そうな事ばっかじゃないか。ってか無理って分かって出すとかアホじゃないか。
>莉菜と一緒にランチがしたかったんだ。
よし。
「莉菜・・・さんと、お昼がしたかったんです。」
無理に決まってんだろ!
「ふーん・・・」
うわぁ、信用してないよ。顔は笑顔だけど、目が笑ってないもん。
結局、話してしまった。
「で?」とういうのを笑顔で続けられたら言うしかないじゃないか!どうしろってんだよ。
「そんな目に遭っていたのね。話してくれればいいのに。」
いや、話せるわけないでしょ。
「大丈夫、私が守ってあげる。」
え、逆じゃ。
「いえ、莉菜さんに、迷惑をかけるわけには、いかないです。」
そもそも僕が気に入らないだけなんだろう。
莉菜さんにそんな事をされたら、余計に煽るだけな気もするし。
「ダメ。私が守るのよ・・・」
そう言った莉菜さんの顔に、僕は一瞬だけ悲しさが見えた気がした。
「そろそろお昼休み終わりだね。」
「ほんとだ。森高くん、何か得られてるといいね。」
本当にね。
祐二が頼みの綱だ。
教室に戻ると、祐二が僕の肩に手を回して顔を近づけてくる。
「って、なんだよ水奈月、男同士の話しだからちょっと外してくれ。」
離れない莉菜さんに祐二が言う。
「私、知ってるから。」
莉菜さんが言った瞬間、僕は祐二に顎を掴まれる。
「なんで言っちゃうかなぁ?」
と言いながら顎をぐにぐに揉まれる。痛いって。
だってしょうがないだろ、初めから僕には無理だったんだって。
「まあいいや。」
祐二はそう言って僕から離れると、僕と莉菜さんの顔を見る。
「入ってるぞ。ばっちり顔も見たから、犯人も分かった。」
「マジで!?」
「凄い森高くん!これで数音の仇が討てるね。」
「ああ。」
勝手に殺すな。
「ってことで、放課後は屋上に集合だ。」
何故そこに集まろうとする、立ち入り禁止だからね、見つかったら先生に怒られるんだよ?




