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30話 それ、変えてくれませんか?

莉菜さんの太腿に挟まれた僕の足の感触は、もう無かった。

悪鬼が僕らを見て気まずそうな顔をする。

しないで・・・

誤解だから・・・

「こ、こんにちは。」

莉菜さん?何を律儀に挨拶しているんですか!

「ああ、こんにちは。数音の姉の弥那子だ。」

「水奈月莉菜です。」

この状況で自己紹介始めてんじゃねーよ、アホか!

「その、なんだ、邪魔をしてすまなかった。」

悪鬼はそれだけ言うと部屋の扉を閉めた。助けてくれないの!?止めようよ、この状況をさ。


「もう着替えますね。」

「ざんねん。」

何とかその状況から解放された僕は力強く言った。残念ってなんだよ、見たいもんじゃないだろうに。

「すいません、また外で待っていてください。」

「うん。」

ふう、やっと解放される。

「数音、お茶持って来たわよ。」

と遠慮なく部屋の扉を開けるボス。なんで家の人間はノックもなくいきなり入ってくるんだよ。

「あ・・・」

あ、じゃねーよ。

親子揃ってその顔は止めろ!着たくて着てんじゃねーよ!

大体悪鬼に連絡したのはおまえだろ!

呼ぶなって言ってんのに呼んでおいてその態度は無いだろ。

「置いておくわね。」

ボスは微妙な笑みを浮かべて、トレーを置くとそそくさと去って行った。

ヤバイって。

あれは完全に勘違いした態度じゃないか!

「見られちゃったね。」

ほう、どの口が言ってんだこのヤロ。誰の所為だと思ってんだよ!なんて言う勇気は無い。

「着替えるので、待っててください。」

「う、うん。」

流石に莉菜さんも悪気があるのか、力なく返事をすると部屋の外へ移動した。


その後は以前のように、二人並んでPCで検索しながらああでもない、こうでもないと話し合った。肩が触れる事にも慣れてきて、これはやっぱり幸せな時間なんだなと感じた。

ただ、莉菜さんの太腿の感触が忘れられず、何度も隣にいる莉菜さんの太腿に目が行ってしまったけど。


プチ旅行は

五月四日の土曜日になった。今年は三日が金曜日なので、連休の恩恵は少ない。

集合時間は朝の七時と早めだ。ってか早すぎる。学校に行くときに起きる時間じゃないか。




「何か心の準備が必要なんじゃないかって思って、動揺してしまったわ。」

何の準備だよ。と、ボスの懸念に突っ込みたいが、原因が僕なので黙っておく。

「私は数音が新しい世界に飛び出したのかと思ってわくわくしたのだがな、つまらん。」

普通でいいだろ!

弟がそんな世界に行くのが面白いのか!?

悪鬼の考える事はよく分からない。

「すいません、無理矢理着せてしまって・・・」

当たり前の如く、夕飯に参加している莉菜さんが、申し訳なさそうに言った。

「いや、水奈月さんが悪いわけじゃない、そこのヘタレの問題だ。」

ヘタレは否定出来ないけど、扱いが酷い。

「そうよね。」

同意してんじゃねーよ。母親だろ。


「ところで、何か脅されたりしてないか?」

おい・・・

「あの、何の事でしょう?」

突然言われた悪鬼の言葉に、莉菜さんが戸惑う。そりゃそうだろう。

「私は不詳の弟にこんな可愛くて良い子が彼女として存在するのが、未だに腑に落ちないんだ。」

落ちろよ。

ついでに司法試験も落ちてしまえ。

僕だって不思議だが、悪鬼には言われたくない。

ってか素直に喜べよ。

「いえ、そんな事はまったく無いです。」

「ちょっと弥那子、そんな事を言ったら水奈月さんに失礼でしょ。」

僕には失礼じゃないのかよ!

「そうだな、悪かった。」

「いえ、全然大丈夫です。」

僕には謝らないのかよ!

貶められているのはこっちだぞ。


「まあしょうもない奴だが、これからもよろしく頼むよ。」

水奈月さんの帰り際に、悪鬼がそう言った。お前もしょうもねぇよ。

と思ったら睨まれた。

相変わらず鋭いな。

「はい。こちらこそ、これからも宜しくお願いします。」

と言って、莉菜さんが玄関を出ていく。

直後、僕は悪鬼に胸ぐらを掴まれた。

「何でここにいる?」

「へっ?」

視線だけで殺されそうな程、僕は睨まれていた。

「へっ?じゃないだろ、途中まででもいいから送っていくもんだろうが。」

「はい。」

怖いけれど、悪鬼の言っている事は正しかった。

僕は今まで、莉菜さんに甘えていたんだ。

そう思わされ、自分が情けなかった。


「待って、莉菜さん。」

「どうしたの?何か忘れた?」

「いえ、途中まで、その、送ろうかと思いまして・・・」

付き合った事もないし、そういう考えに至れない奴なんだよ。言い訳でしかないが、そんな言葉すらまともに言えなかった。

「うん、ありがと。お姉さんに言われたのね。」

「気が利かなくて、すいません。」

だから、今ここにいる状況もバレバレなわけだ。みっともない。

「気にしないで。これが始まりでいいじゃない、次からは送ってくれるんでしょ?」

その莉菜さんの笑顔に、僕はまた救われる。

「はい。」

頷いた僕は歩き始めると、自然と莉菜さんの手を掴んでいた。

横目で確認すると、嬉しそうに頷いてくれる。

それを見た僕は、したくもないけど悪鬼に感謝した。




次の日、いつも通り登校して祐二と雑談をする。もちろん、昨夜やったDEWの話しがメインになるのだけど。

最近は当たり前のように、四乃森さんも参加している。

昨日は莉菜さんだったので、四人で普通に素材集めマラソンをした。

ちなみに水奈月さんは、たまにログインしてくるが、向いていないのかログインしないことも多い。しても、居るだけなんだけど。


「なぁ雪待。」

その水奈月さんが、珍しく朝から僕のところに来た。

「な、なんでしょう?」

水奈月さん相手だと未だに構えてしまう。それとあまりいい予感もしない。

「お前も着たかったのか?」

と、水奈月さんが携帯を僕の机の上に置く。

「ちょっ!何してんですかっ!!」

その携帯のデスクトップ画像は、僕が昨日メイド服を着た画像だった。慌てて隠す横で、祐二と四乃森さんがハイタッチをしている。

そこで僕は気付いた。

甘かった。やっぱり、グルだったんだな。そう思って祐二を睨む。

「数音、勘違いするなよ。俺はただ、水奈月と二人なら着るんじゃないかと思っただけだ。つまり今目の前に置かれたのは副産物でしかない。」

「あたしも似たような事を思ったから、昨日はすぐ諦めたんだよ。」

嘘くせー。

それより、この画像をこれ以上拡散されるのはマズイ。


>携帯を窓から外に投げる。

 携帯を水の中に放り込む。

 携帯を物理的に破壊する。

 携帯を燃やす。


壊すの前提かよ。データ消せばいいだけだろ。でもきっと僕の心情では、本体ごと消去してしまいたいんだろうな。

>無料会話アプリに上げる(追加)

勝手に追加すんな!しかも拡散じゃねーか!そんな事をしたらもう死ぬしかないじゃないか!


「水奈月さん、それ、変えてくれませんか?」

せめてデスクトップはやめて欲しい。

そう思って水奈月さんにお願いする。

「いや、あいつがこのままにしておいてくれって。大切なものだからと。」

嫌だ。

明日変えさせてやる。

ただ、その言葉から三人で仕組んだんじゃないだろうと思わされた。




『莉菜。

 携帯の画像、変えないでね。大切な思い出なの。

 あとこれは内緒。

 森高くんと四乃森さんが居たら、

 数音の机にこの携帯置いて見せて。』


水奈月莉菜は、雪待数音の机から携帯を回収すると、今朝呼んだノートの内容を思い出していた。

(良かったのか、これで・・・)

そう思いながら、席に着くとチャイムの音が教室に木霊した。

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