27話 あれ、怒られない?
それから四人でメガで少し遊んで帰った。
莉菜さんがプリクラ撮りたいって言うので、四人で撮ったけど、何故誰も嫌がらないんだ?
僕は嫌なのに。
そして嫌がる僕を、祐二と四乃森さんが連行した。
久しぶりに、ゲーセンで楽しんだ気分だった。そう言えば、DEW買ってからは来てないもんな。
夜は四人で、DEWをする約束をして解散した。
家の玄関を抜けると、すかさずボスが現れ見下ろしてくる。予想通りの展開だ。
「高崎先生から連絡があったよ。」
「ごめんなさい・・・」
高崎 杏子、僕の居る二年D組の担任だ。
余計な事をとは思わない。
それが仕事だから先生は普通の事をしたまでだ。
ボスに怒られる覚悟も出来ている。
「今朝よりすっきりした顔をしてるじゃないか。」
え?
どういうこと?
学校を無断で休むとはどういう事だ!とか、怒鳴られると思ってたんだけど。
「明日からはちゃんと行きなよ。」
ボスはそれだけ言うと、台所の方に戻って行った。
「う、うん・・・」
それだけ?
返事はしといたけど、疑問だらけだ。
ボスの行動が理解出来ない。なんで、怒らなかったんだろう。
それは晩御飯の時も変わらなかった。
僕が学校をさぼった話しはまったく出て来ず、何事もなくご飯は終わった。
ボスの考えなんて分かりはしない。
とりあえず、ゲームするか。
と、その前に、携帯も電源切ったままだった。立ち上げると不在着信の数はそれ程じゃないが、無料会話アプリの未読件数がすごい・・・
ま、後でいいや。
たった二日だ。
R3を立ち上げなかったのは。
それでも、久しぶりに感じてしまう。
ただ、気分的にはまだ乗らないところがあるのだと思う。若干気が重い気がするのは。
ゼット ≪お、来たな≫
MaiMai ≪待ってたよ≫
早いなこいつら。RINAはまだ来ていないようだった。
あれ、僕が落ちた時と状態変わってないじゃないか。
Alice ≪二人ともランク変わってないね≫
ゼット ≪Aliceが居ないんじゃ、やる気が出なくてなー≫
MaiMai ≪自分がした事を差し置いて、出来ないよ≫
Alice ≪ほっとけばいいのに≫
MaiMai ≪そういう事を言うな≫
そうだよな。なんの為にゲーセンで謝ったんだか。進歩無いな、僕。
そこでRINAがログインしてきた。
RINA ≪お待たせ!≫
ゼット ≪おう、それじゃぁ行くか≫
MaiMai ≪よっしゃ、狩りまくるか≫
Alice ≪うん、遅れた分、働いてやるか≫
『昨日は取り乱してごめん。
あと、時間も奪っちゃったね。
でも、ありがとう。
今日は、思い出をもらったの・・・』
水奈月莉菜は朝、ノートに書かれた文を読むと、優しく微笑んでノートをそっと仕舞った。
「なあ数音。」
朝の教室で、いつも通り祐二が話しかけてくる。
「ん?」
「駅前にさ、バーガーKOF出来たの知ってる?」
「え、マジで?」
「ああ。帰りに行ってみね?」
「いいよ。フィッシュバーガーのソースがかなり美味しいらしいよね。」
バーガーキングオブフィッシュはテレビのCMでも良く見るらしい。なんでも大き目のフィッシュフライがサクっとしていて、タルタルソースが絶品らしい。
それが駅前に出来たとなると、一度は食べてみたいと思えた。
「おはよ。」
そこで四乃森さんが教室に入って来ると直ぐに近付いてきて挨拶をしてくる。何故か、普段は来ない空井くんも一緒に僕たちのところに来た。
「おはよ。」
「おう、おはよーさん。ってか空井までどうしたんだよ?」
祐二の疑問に四乃森さんがニヤニヤしながら大きな紙袋を見せる。
それを見て空井くんもニヤけていた。
「なんだよ、それ。」
若干嫌な予感を感じたように、祐二が怪訝な顔をした。
「ちゃんと借りてきてやったよ、メイド服。」
「なっ!?マジかよっ・・・」
「森高が着るんじゃ、見ないわけにはいかないだろ。」
引いている祐二に対し、空井くんが楽しそうに言う。
「待て待て、空井は関係無いだろ。」
「まあそう言うな。面白い事は共有しようぜ。」
祐二が気付いたように言う。そういや、DEWでの事が発端だもんな。
「なるほど。つまり参加したいわけだな、飛び入り参加は着る事が前提だ。」
「ちょ、なんだよそれ。」
「ああそれいいじゃん。浩太が混じるんなら、浩太も着るの決定。」
祐二の言葉で慌てた空井くんに、四乃森さんが追い打ちをかける。その言葉に空井くんは不穏な空気を感じたのか、足が後ろにゆっくりと退がっていた。
「ああ、用事を思い出した、俺参加できねぇわ。」
明後日の方を向きながら空井くんは言うと、この場から逃げるように自分の席に移動していった。
「逃げたね。」
「ああ、逃げたな。」
まぁ逃げるだろうね。
「さて、俺も授業の準備を。」
「待て森高。どさくさに紛れて逃げようとすんな。」
移動しようとした祐二の襟を、四乃森さんが掴んで止める。
「ほんとに着るのかよ・・・」
「昨日、決まったじゃん。」
既に決定事項だと言わんばかりに四乃森さんが言った。ってか僕自身、その場の乗りで言っただけなんだけど、大事になったな。
「じゃぁ放課後な。」
「まて、俺と数音は今日バーガーKOFに行くんだ。またにしよう。」
その言葉を聞いた四乃森さんは、何かを思いついたようで不敵な笑みを浮かべて席に移動していった。
何か企んでいるのか?
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。言い換えると放課後の始まりだ。
もちろん速攻で鞄を用意する。
「雪待くん。ちょっと来て。」
バーガーKOFに行こうとする出鼻を、高崎先生に挫かれた。
「待ってるから行って来いよ。」
「はい。」
祐二の言葉を背に、僕は先生に返事をする。
「では、指導室へ行きましょうか。」
連れられて来たのは進路指導室。僕はまだ何も考えていないし、まだ二年になったばかり。じゃなくて、昨日の事なんだろう。
高崎先生は身長が低く、童顔だ。多分百六十無いだろうと思われる。もうすぐ三十歳と聞いた事があるけれど、そうは見えない。だから生徒の中には杏子ちゃんって呼ぶ生徒もそれなりに居る。
「ねぇ雪待くん。」
「なんで、しょうか?」
机を挟んで向かいに座る先生が神妙な面持ちで話しかけてくる。流石に先生だからね、呼び出されると緊張する。
「昨日の事なんだけど・・・」
「ごめんなさい。ご迷惑をお掛けしました。」
予想通りの言葉に、僕はすぐ頭を下げた。実際、迷惑を掛けたのは事実だし、言い訳もない。素直に謝っておいた方が、早く解放されるかもしれないという打算もあったけど。
「いえ、それはいいの。それより何か、悩み事があるなら先生、相談に乗るよ?」
怒られるんじゃないのか?
昨日ボスに思った疑問を、僕はまた繰り返した。
てっきり、怒られると思っていたので、先生の態度に多少戸惑う。
だけど相談か・・・。
首を傾げる童顔の先生を見る。
>年下はどう思いますか?
今、二人きりですね。ところで彼氏はいますか?
先生の事を考えると眠れません。
先生の事が好きなのが悩みです。
・・・
どうしてそうなった。何考えてんだよアホっ!確かに先生は可愛いけど、そんな対象じゃない・・・ことは無いけれど、僕には水奈月さんがいるんだ。
>彼氏はいますか?
って興味はあるけど聞けるかっ!




