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24話 それがトリガーですか?

突然公園に現れ、突然叫ばれ、突然抱きつかれる。

意味が分からない。

公園に遊びに来ていた家族連れの視線が痛い。

どうでもいいか。

特に大人の視線がね。

どうでもいいんだ。


耳元で泣きじゃくる声が、大きく聞こえた。


「居なくなったかと思った・・・」

強く抱きつかれている所為か苦しい。

こんなに取り乱している莉菜さんを見るのは初めてだ。

どちらかと言えばいつも、僕が翻弄されているから。

「家に行ったら出掛けたって、居なくなるかと思った・・・」

嗚咽と一緒に吐き出す言葉は、酷く弱かった。

どうしてそこまで、僕の事を気にするんだ。

「ごめんなさい・・・」

「謝る事、なんかしましたか?」

僕は別に謝られるような事はされていない。勝手に落ちた事を考えれば、僕が謝る側かな。

「私、数音の事を傷つけちゃった、ごめんなさい・・・」

昨夜の事かな。

「そんな事はないです、ただ、疲れただけです。」

本当に、疲れたんだ。

「嘘・・・」

「三人で楽しんでいればいいじゃないですか。」


「うああぁぁぁ・・・」

僕がそう言うと、莉菜さんは声を上げて泣いた。

「馬鹿・・・」

「どうして、ですか?」

「だから馬鹿・・・」

意味が分からない。莉菜さんは一体何が言いたのか、何がしたいのか。

分からないよ。

「数音が一緒じゃなきゃ、やる意味ないのに・・・」


余計に意味が分からない。

だったら、何故一緒になって僕で遊ぶのか。

頼んでもいないのに。

嫌がっているように見えないのかな。


「一緒に時間を共有出来る、楽しくて、調子に乗ってた。」

「いいんじゃないですか、それで。」

「楽しんでいたの私だけ、数音の事、傷つけているのに気付いてなかった。」

「莉菜さんは悪く無いです。僕の態度が悪かったんですよ。嫌だってはっきりしないから。結果、もう疲れたんです。」

「ごめんな・・・さい・・・」


そこでまた莉菜さんが泣き出した。

僕はどうしたらいいんだ。

「お願い・・・もう、居なくならないで・・・」

泣きながらそう言った莉菜さんは、僕に回している腕に力が入る。

「何処にも行きませんよ。」

本当にどうしたらいいんだろう。

抱きつかれたのも初めてだし、泣かれたのも初めてだ。

周りの目は恥ずかしいし。

この

状況をどうしていいか分からない。

「もう少し、このまま居ていい?」

少しして、落ち着いた莉菜さんが聞いてくる。

「いいですよ。でもその前に、何か飲みたいです。」

公園の外に設置してある、自動販売機に僕は目を向ける。

「わかった。」


ベンチから立ち上がっても、莉菜さんは僕の腕を掴んで離そうとしなかった。

「待っててください。」

「やだ、一緒にいく。」

困ったな、どういう事なんだ。


ペットボトルのお茶を二本買って、ベンチに戻る。

「少し、横になっていい?」

「いいですよ。」

莉菜さんはそう言うと、僕の太腿に頭を乗せて横になった。なんだろう、この状況。

いつもだったら、僕は慌てていると思った。

でも何故か、今はそうならない。

疲れているのかな。


それでどうでもよくなっているんだろうか。


動けない。

莉菜さんは静かに寝息を立てている。まさか寝顔を見ることになるんて。

祐二に見られたら、また大変な事になりそうだ。

・・・

どうでもいいか。

余計な事、考えるの止めよ。


「ん・・・うん?」

お昼が近付いた頃。莉菜さんがむっくりと起き上がった。

「ん?ここは何処だ?何故雪待がここにいる?」

んげ、水奈月さん?

「あ、そうか。寝る事がトリガーになっているんですか?」

「なんだ急に。」

「入れ替わりです。」

「そうか、気付いたか。ただ寝るなのか、意識が途切れるなのか、それは分からない。意識が飛んだ事がないからな。それより、莉菜はここで寝たという事か。」

やっぱりそうなのか。でもそうなると、解離性同一性障害って可能性が高いんじゃ?でも、一定の間隔で入れ替わるものなのか?

「状況、説明しますか?」

それはおいといて、状況を話した方がいいよね。と思って聞いてみる。

「いやいい。帰れば多分わかる。」

そうなんだ。

「悪いな雪待、私は家に帰る。」

「はい、ゆっくり休んでください。」

水奈月さんは頷くと去って行った。


なんか色々あったな。びっくりしたよ。入れ替わる瞬間まで目撃するとは思わなかった。

ただ、なんか状況が少し見えてほっとした。

「家、帰るかな。」

そう思えたので、家に戻る事にした。

こんな時間を過ごしたのは初めてだ。

ゲームもしないで、ただぼーっとするなんて。




家に帰ると見慣れない女性物の靴。嫌な予感・・・

居間を見るとそれは居た。

「げっ!弥那子・・・」

雪待ゆきまち 弥那子みなこは大学二年生で寮生活をしている。普段家に帰ってなんか来ないくせいに、なんで今日に限って居るんだよ。

「んぐ・・・」

弥那子という悪鬼は僕に近づいて来ると、顎を下から掴んだ。

「姉を呼び捨てとはいい度胸だな数音。」


>もう一回言う。

 もう一回言ってやる。

 もう一回言ってやろうか、と言う。

 もう一回聞きたいのか?と聞く。


やめろ。何故もう一度言わせようとする。僕を殺したいのか?だったらせめて違う方法にしてくれ!

>みな・・・

危な・・・死ぬところだった。


「ごめんなさい・・・」

素直に謝っておく。しかし将来は暴力弁護士だな。いや、司法試験に落ちてしまえ。

「いま悪口考えたろ?」

勘も鋭い。

「そんな事、あるわけないだろ。」

無駄に胸に脂肪を蓄えてるくせに、法学部だもんな。ってか家から法学部とか無いわ。だったら僕も学年上位の成績でも不思議じゃない。

「数音、水奈月さんに会った?今朝来た時、凄い慌てていたわよ。」

そこで奥からボスの声が聞こえる。ああ、家に行ったとか言ってたな。

「うん、落ち着いて家に帰ったよ。」

「何があったか知らないけど、女の子を泣かせちゃだめよ。」

「はい。」

ボスに見られたのはしょうがない。問題は目の前の悪鬼だ。既に獲物見つけた目だ。口の端を上げて嗤っているあたりがもう終わりだ。

「数音、お姉さんも彼女さん見たいな。」

「じゃ。」

急いで二階に避難しようとしたが、後ろから羽交い絞めにされる。

「何処へ行く数音、私の話しは終わってないぞ。」

死んだ・・・


「へぇ、そうなんだ。そんなに可愛くていい子なのね。」

お昼ご飯を食べながら、珍しく悪鬼が感心している。出来れば知られたくなかった。

お昼は具無しの焼きそば、いつも通りだ。

それはいいけど。

「びっくりするわよ。なんであんな子が数音にくっついたのか、七不思議だわ。」

息子に対する言い様が酷い。それに七つもねぇよ、一つだろ。

「まさか私の沽券に関わるような事してないでしょうね。」

「するわけないだろ!」

お前の弁護士人生はどうでもいいが、僕は悪い事はしないっての。

「ならいいけど。」

お前ら僕をなんだと思っているんだよ、まったく。

「で、次はいつ来るの?」

「分からないよ、今のところそんな話しはしてないし。」

「そう。決まったら教えるのよ。」

「なんでだよ!」

「黙れ、呼べ。」

ぐ・・・これ以上悪鬼には逆らえない。この家はなんなんだよ、下僕は家に居たく無いから多分今日もゴルフの打ちっぱなしだろう。僕に押し付けるなよ。

「はい・・・」

としか言えない。


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