22話 僕の母親じゃないのかっ!?
「いいじゃない!私温泉好きなの。」
おお、好感触。ってか温泉好きなのか。僕は湯船に浸かるのも面倒なので好きじゃない。その時間があったらゲームに回す。
「そ、そうですか。」
嬉しそうに言う莉菜さんの無邪気な笑顔は、ほんとに好きそうだった。
「でも日帰りじゃ入れないよね。」
「探せば、あるかもしれません。」
莉菜さんが入れて喜ぶなら、探してみてもいいかなって思えた。この笑顔が、見れるならと。
ついでに浴衣姿なんかも見たいけれど、それは日帰りじゃ無理だろうな。
「確か足湯は楽しめるはずよ。」
足湯。確か、足をお湯に浸けるだけだよな、何が楽しいんだ?
それは分からないが、莉菜さんの白い足を見れるかと思うと、見たい気がした。
そんな事を考えると、視線は足に行ってしまう。
足を何回か動かして直している所為か、制服のスカートが上がって白い太腿が結構見える。
ってか、パンツ見えそう・・・
「ね、何処見てるの?」
莉菜さんの声ではっとして視線を戻すと、冷たい目をしていた。
気付かれてしまったのかな。
これ、やばい?
「数音も男の子なのねぇー。」
なんて言っているが、冷たい目は変わっていない。
「ご、ごめんなさい・・・」
「ぷっ・・・素直。」
な・・・遊ばれていたのか。でも、その方が良かった。さっきの目は、きつい。
「で、もしかして見たいのかなぁ?」
莉菜さんは言いながらスカートの裾をチラチラと捲って見せる。ちょっと意地悪な目を僕に向けながら。「そんな事は、無いです。」
「数音くんも男の子ですねー、エッチ。」
って言うな!そりゃ気になるけど、そう言われるとなんか僕が悪いみたいじゃないか。もう完全に遊ばれているな。
「旅行の話しじゃないの?」
とりあえず解放されたい。話しを戻そう。
「そうよ。でもこっちの方が気になっているみたいだし。」
とか言いながらまだスカートで僕を煽っている。戻させてくれねー。強敵だ・・・。
>逃げるコマンドを入力
戦うコマンドを入力
魔法コマンドを入力
押し倒すコマンド入力
いや強敵だけど戦闘じゃないから出てくんなよ。しっかり最後に押し倒すとか入れてんじゃねー。
そんな事が出来るならこんな苦悩してねーよ。
>押し倒す
待て、良く考えろ、人生棒に振る気か。
「気になってませんから、旅行の話しを進めましょうよ。」
なんとか路線を変える方向に話せたな。よし。
「そっか、私の事気にならないんだ。」
と言って悲しそうな顔をする。なんでそういう事を言うかな。どうしたらいいんだよっ!
「そんなわけ、ないじゃないですか・・・」
「あ、やっぱり見たいんだ。」
ちげーよっ!どんだけ僕で遊びたいんだよ。もう勘弁してくれよ。莉菜さんが楽しそうに笑うのはいいけれど、僕は楽しくない。
「あはは、ごめん。で、実際どうなの?」
まだ聞くのかよ・・・
「この前は堂々とめ・・・」
あ、しまった。
追い詰められてきた僕はうっかり、水奈月さんの行動を言いそうになってしまった。ちょっとした反抗のつもりだったが、莉菜さんの笑顔は消え、問い詰めるような眼差しになっていた。
手遅れだったか・・・
「この前堂々とめ、何?続き、教えてくれるんでしょ?」
う・・・
「な、何でもないです。」
「で、続きは?」
聞いてねーっ!もう言うまでこの態度は変わらなさそうだ。え、つまりこれって言う以外の選択はもう無理なんじゃ。
「莉菜・・・さん、怖いです、よ?」
「誰の所為だと思ってるの!」
と言って莉菜さんが僕に掴みかかってくる。反動で倒れた僕は床に頭を打ち付けた。
「さぁ、逃げられないわよ。」
僕は胸ぐらを掴まれ、掴んでいる莉菜さんはほぼマウントポジション・・・どうしてこうなった。
「ちょっと、凄い音がしたけど大丈夫?」
と、そこへボスが慌てて言いながら部屋の扉を開ける。
やめろーっ!
と思ったが手遅れだった。
しっかりと情けない姿を目撃されてしまう。でもこれで解放されるだろう。流石に僕の親に見られてまで、莉菜さんは僕の上に居られないだろうから。
ボス、ナイスだ。よっ、救世主。
「あら、大丈夫そうね。」
なにーっ!?
「頑張って。」
ボスはそう言って莉菜さんに親指を立てて見せた。
まてコラ!!!
どういう事だよっ?おかしいだろそれ、僕の母親じゃないのかっ!?
「はい!」
ってなんでお前も笑顔で親指立ててんだよ。お前ら何時の間にそんな仲になったんだよっ!
「さ、続き聞かせて。」
ボスが去っていくと莉菜さんがまた冷たい目に戻った。
怖い・・・
僕は死を予感した。
なんの曲かは分からないが、重い雰囲気のBGMと共にGAME OVERの文字が頭の中に溢れていく。
「現実、見ようか。」
莉菜さんにシャツを引っ張られ現実に引き戻されました。
「はい・・・。」
「まったくあっちの莉菜は、なんて事をしてくれるかな。」
正直にこの前の出来事を話しました。
「それならそうと言ってくれればいいじゃない。別に数音が悪いわけじゃないんだから。」
言えねーよっ。昨日スカート捲ってパンツ見せてくれたよ、なんて言えるわけないだろ。
「すいません・・・」
「謝らなくていいってば。あっちの莉菜にはちゃんと言っておくから。」
この前の事で、莉菜さんは水奈月さんの事を誤魔化さなくなった。
理由は何時か話してくれるとも言っていたし。
それはいいが。
結構面倒だ。
「ちょっと待って・・・」
莉菜さんが頭を抱えて眉間に皺を寄せる。また僕は何かしただろうか?
「ひとつ聞いていい?」
「な、なんでしょう?」
嫌な予感。
「体育館倉庫裏に行ったの、一回じゃないんじゃないの?」
うわっ。鋭すぎるだろ。
「やっぱり・・・おかしいと思ったのよ。」
あっさりバレた。莉菜さんは溜息をついて、頭を左右に軽く振る。
「ごめんね。あっちの莉菜が迷惑を掛けちゃったね。」
「いえ、それは、気にしてません。」
気にしていないのは本当だった。ただ意味が分からなかっただけで。あと、見れたのは嬉しいとは言えないけど。
「良かった。」
そこで何時もの笑顔に莉菜さんは戻り、僕はそれでほっとした。と言っても笑顔が見れた事じゃなく、追求から解放された安堵だったけど。
「ちょっと携帯で、箱山の情報見ない?」
「そうだね。でも携帯より、家だからPCの方がいいよ。」
やっと本来の話しに戻ったところで、莉菜さんがそう言うので、僕はPCを指さす。
「あ、なるほど。私は自分でパソコン持ってないからつい。」
そうなんだ。
そう言えば、莉菜さんの家には二回行ったけれど、入ったのはテレビの置いてあるリビングだけったな。部屋ってどんな感じなんだろう。
そんな事を考えながらパソコンを起動させ、インターネットに繋ぐと箱山情報を調べる。
観光地だけあって、情報がいっぱいあり過ぎる。
「ね、駅にも足湯あるんだって、面白い。」
「ほんとですね。」
一つの画面を二人で見ているため、操作している僕に、莉菜さんが寄って来ている。
肩が当たる事にも、僕は少し慣れてきていた。
「お昼は箱山そばがいいかな。あ、箱山カレーもある。」
地名付けただけで、どれも変わらないような気もするけど、楽しそうに見る莉菜さんに言ったら悪いよな。
「箱山庭園だって、行ってみたい。」
だんだんと近寄って、完全に莉菜さんが僕に寄りかかる状態になっていたことに、僕は情報を見るどころじゃなかった。でも、心地よかったのだけは記憶に残った。
「美術館のトリックアートも面白そうだね。」
その状態に、ボスが晩御飯で呼びに来るまで、僕は浸っていた。




