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17話 ほ、本気ですかっ!?

大変だった。ものすごく。

本当に別の人なんじゃないかって思わされるくらい、水奈月さんはゲームが苦手なのだろう。

水奈月母が出してくれたケーキを食べながら見る。

一通りは教えたと思う。

「おい、指示通りに押しているぞ。」

いや、別のボタン押してますよ。

「回避しないじゃないか。」

現実の身体を横に動かしても動きませんって。

「何故斬れない!」

コントローラー振っても、キャラは動きませんよ。

「何故そんな攻撃で死ぬ・・・」

いやまぁ、そういうゲームですから。

制服のままゲームを夢中でプレイ?する水奈月さんは、それはそれで微笑ましかった。

身体を動かすからスカートがだんだんずれて、白い太腿の見える面積が増えると、どきっとしてしまう。

つい、視線がそこに固定され、この前の光景を思い出す。

今日は、何色だろう。

って僕の馬鹿っ!

何を考えているんだ。


「おい雪待。」

「な、なんですか?」

ぼーっと見ていたら、急に呼ばれるので焦ってしまう。

「これ、クソゲーだろ。」

はぁっ!?

何言いだすんだこの女は。よりによってDEWをクソゲーとは。焦りも何処かへ吹き飛んだ。

まて、それ以前に何故その単語は知っている・・・。

「何故、ゲームをしないのに、その言葉は知ってるんですか。」

「馬鹿にするな、それくらいは知っている。」

何か間違っている気がする。

そして使い方も間違っている気がする。

いや、個人的にならいいのか。

ってか今はそれどころじゃなかった。

「もう少し落ち着いて操作しましょう。」

「十分落ち着いているだろう。」

嘘だ。

絶対嘘だ。

動画に撮って見せてやろうか、まったく。

「僕が家に戻ったら手伝いますので、それまで練習しておいてください。」

「ここで手伝えばいいだろう。」

うわぁぁぁぁぁっ!

さっき説明したのにぃ・・・


僕が家に帰りついたのは、夜の八時を過ぎてからでした。家に連絡を入れていないので、ボスが冷酷な眼差しで、冷めた晩飯を突き付けて来たのが恐い。

連絡を入れなかったので、自業自得だけど。

息子だよ?もう少し柔らかく接してよ。

とりあえず、パーティプレイを教え、後はログインしていた祐二に押し付けて帰ってきた。

僕もこの後、合流するんだけどさ。

ただ、今日は酷く疲れた。




『クソゲー・・・』

「えぇっ!?」

水奈月莉菜は朝、何時ものノートを見て小さく悲鳴を上げると、硬直した。




向き不向きは人によってあると思う。それはしょうがない。僕だって苦手なタイプのゲームはあるんだ。でも、昨夜のあれは不向きというより、まったく合わないんだろうと思った。

何もないところで武器を振っている姿が、画面の端にちらちらと見えていたり、道具を意味も無く使っていたり、戦闘に参加していないのにいつの間にか死んでいたり。

つまりそういう事なのだろう。

ゲームによっては出来るのかもしれないが、DEWは合っていないのかもしれない。


ただ、家にお邪魔してその姿を見ていた僕としては、そんな行動も微笑ましい。

僕が帰った後も、制服のまま身体を動かしながら操作してたんだろうなって思うと。

思い出すと水奈月さんの白い太腿も思い出してしまって・・・

「朝から何を妄想してんだ。」

ガタンッ

祐二の声に驚いて身体が吃驚した所為で、椅子が音を立てた。

「おぉ、その驚き様、どんな妄想か聞きたいな。」

祐二がニヤニヤしながら僕の顔を覗き込んでくる。

「だから妄想なんてしてないってば。」

思い出していただけで。と、内心で付け加える。言葉に出したらろくな事にならないだろうから。

「だらしない顔をしてそれは説得力がないな。」

「え、マジで・・・」

って、僕はそんな顔をしていたのか?と焦って顔を触る。

「嘘だけどな。」

このヤロウ。

またうっかり祐二の口車に乗ってしまった事を後悔したところで、チャイムが鳴ってしまった。




放課後、水奈月・・・いや、莉菜さんに誘われいつものファミレスへ。

店員に顔を覚えられるんじゃないかって最近不安になってきた。

「昨日は、ごめんなさい。」

最初にいきなり謝られる。よく分からない。

「あの、どうかしました?」

「うん、迷惑かけちゃったよねって思って。」

気にしてたのか。そんな事よりも、僕は今の不思議な現状の方が何なのか知りたい。

「昨日もね、ちょっと調子が悪くて・・・」

「あの、莉菜・・・さん。」

そんなに直ぐ名前呼びなんて慣れるかっ!

でも頑張って、莉菜さんの話しを途切って呼びかけた。

「な、なに?」

「僕もそこまで馬鹿じゃないです、調子が悪いとか、演技とかじゃないくらい分かってます。」

僕の呼びかけにちょっと驚いて聞き返した莉菜さんに、僕は今の気持ちを正直に伝えた。それを聞いた莉菜さんは、暗い表情になって黙ってしまった。いつも笑顔で話してくれる彼女のその態度に、僕は触れてはならない事に触れてしまったんじゃないかと、少し困惑してしまう。

「理由は話さなくても、いいです。ただ、無理に取り繕わなくても、と思っただけです。」

本当は知りたいけれど、莉菜さんのその顔を見てまでは聞きたくなかった。

「ごめんなさい・・・ありがとう。」

「いつかは、聞かせてくれたら、嬉しいですけど。」

そう言った僕は、意識したわけではなく笑顔で言っていた。自分でも、今のような事が言えるなんて、ちょっと驚きだったけど。

「うん、話すつもりではいるの。ただ、今は、まだ・・・」

「はい、それでいいです。」

「ありがとう。」

莉菜さんも、笑顔に戻ってそう言った。僕は、誤魔化されるよりは、それでいいかなって思っていた。それは別人って割り切った方が楽かなって考えた、僕の都合かもしれないけど。

「じゃぁ改めて、昨日の私、迷惑じゃなかった?」

そこは気になるんだね。

「多少、振り回されたけど、迷惑でも、嫌でもないです。」

「そう、それなら良かった。」

と、莉菜さんは安堵したしたのか、椅子の背もたれに力が抜けたように寄りかかった。

「あ、それでね数音。」

と、莉菜さんは直ぐ起き上がって言う。

「な、なんですか?」

「もうすぐゴールデンウィークでしょ。何か予定ってある?」

あります。ずっとDEWです。って言えないよなぁ。

「ゲーム以外、特にないです。」

「あの、良かったら、旅行に行かない?」

はぁっ!?旅行?高校生二人で?


>もちろん、一泊ですよね?

 旅館派ですか、ホテル派ですか?

 部屋は一つでしょうか?

 まさか、混浴ですかっ!?


・・・ずいぶんと前向きな思考だねぇ。って僕かっ!?何故宿泊前提の選択肢のみなんだよ!

浴衣からあの白い太腿が見えるかも・・・

って昨日からそればっかか。

>「ねぇ数音、聞いてる?」

妄想に流れそうになった思考を、莉菜さんに引き戻されました。


き、聞いてますよ。それより旅行って。

「ほ、本気ですかっ?」

僕と旅行なんかして楽しいのだろうか。そう思うと、聞き方に疑わしさが出てしまう。

ただどういう旅行、なのか分からない。宿泊前提で考えた僕がアホなのだろう。きっと僕はその状況になっても、ただ硬直して終わるヘタレだと思うと、ちょっと情けなくなった。

「当たり前でしょ、じゃなきゃ言わないわ。日帰りで何処か数音と出掛けたいの。」

あ、日帰りね。あったね、そう言えば、日帰り旅行ってものが。

「う、うん。」

「それってOKって事?」

僕の曖昧な返事は、莉菜さんをちょっと苛立たせたようだった。

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