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お決まりの悪役令嬢物語、健気なヒロインが意地悪な令嬢に虐められ素敵なヒーローに守られてハッピーエンド。のその後

作者: K











「いつもとても不思議に思っていましたの。

悪を断罪して弱い令嬢を守った殿方はその後どうなるのか、と」



薄く笑いティーカップを持つ公爵令嬢、カチュア様のその優雅な仕草にうっかり気を取られている私に、彼女はゆっくりと話始めました。



「驚く事に、かの男爵令嬢はあの場で王太子殿下の手を取り見つめ合ってその場を後にしましたの」



話は一ヶ月前。

雇われ吟遊詩人のわたしが訪れた最後の学園での舞踏会での出来事のことかと思われます。

学園内では、まことしやかに囁かれていた噂がございます。

王太子殿下、アルバン様御一行がつい最近まで平民として過ごしていた御令嬢に随分と、ご熱心だと。



「もちろん、周りにいらした御子息もご自身の御婚約者様の事をまるで居ないかのように、王太子殿下と会場を後にしましたわ」



次期宰相と噂の王太子殿下の側近、エーレンフリート様。

公爵子息のヨハン様。

王太子殿下と腹違いの弟君のアロイス様。

伯爵家主ヘルゲ様。

かの令嬢を取り巻いていました殿方はかなりたくさんいましたが、特に目立っていたのはこの方々と存じ上げます。



「しかし、イジドーラ様も恥ずかしい方でしたわ。あのように公の場で声を荒げて…日頃から恥ずかしい行いのなさる方でしたけど、周りのご学友も同じような方々ばかりで(わたくし)、さすがに呆れてしまいましたわ」



ため息を吐きながら、カチュア様はご一緒におかれた蜂蜜の甘い香りのするクッキーを一口、それはそれは優雅な仕草で口に運ばれたのです。



「すぐに大国から封が届きましたの。今年の学園には帝国の第三王子が留学に来ていましたから、そちらからお話が伝わったご様子のようで」



あの舞踏会の夜以降、王国内は王太子殿下と第二王子との王位継承問題に発展し、国内の勢力は真っ二つに別れてしまったのです。

元々、お力の弱いお家柄の母を持つ王太子殿下の地位を強くするべく結ばれた御婚約を、恋をしたという理由で破棄した王太子殿下に不満が挙がったのです。

今後そのような私情で国をゆるがしかねないのではないか、と。



「明日、この国を立つ予定です。残念ながら貴女ともしばらく会えそうにございませんの」



カチュア様は帝国の騎士団長の御婚約者にございます。

その血筋には帝国の姫君の血が混じっているため、結ばれた御婚約と伺っています。



「この話の続きを聞けることを楽しみしていますわ」



カチュア様はそれは見事なお辞儀(カーテシー)で美しく微笑みました。

それが私のこの国でのカチュア様との最後の記憶にございます。



それからしばらくして、前王による強行で王太子殿下は新王に、かの令嬢は王妃へ即位しました。

王妃になられてからは酷く浪費家で、わずか半年ほどで国は火の車となったのです。

その後宰相になられた第二王子は実に賢い方で、彼のおかげでなんとか持ち直したと言われています。

それにより一層、第二王子を王にと、国民からも声が上がったのです。



その翌年、地方の視察に向かった第二王子は馬車の転落によりお亡くなりになられたのです。

空いた宰相の位置にはエーレンフリート様が就任したと。

王による暗殺の噂が広まり、王政への拭いきれない不信感へと変わって行きました。



しかし、王妃の浪費は治りません。

国費を埋めるためにヨハン様とヘルゲ様のお家は没落したと風の噂で聞きました。



その5年後でございます。

帝国がこの国を制圧し、王制が崩壊したのは。

まるで見せしめのように断頭台に引きずられてきた王妃は、酷く歪んだ顔で恨み辛みを叫んでおりました。

かの令嬢の最後の言葉は「こんなのおかしい!!全てがうまくいっていた!!ヒロイン(わたし)が殺されるわけない!!!」と。




私は8年前のようにティーカップを持つカチュア様を眺めておりました。

あの時より随分と楽しそうにくつくつと笑うカチュア様は、その綺麗な笑みを描く唇を開けておっしゃいました。



「愛だの恋だのにうつつを抜かすなど、王国を治めていく者とは到底思えませんわ」



王太子殿下の母君は前王の最愛の奥方でしたが、側室だったそうです。

そのため正妃に出来なかった思いから、どうしても王太子殿下を王にしたかったとのことでした。



「しかし貴女も酷い方だわ。そうなる運命を認めておきながら、決して助けようとしないなんて」



あの時と同じ、蜂蜜の甘い香り。



「さて、そろそろ戻りましょうか」



カチュア様は帝国で名を挙げ、かの国の領地を任されたそうでございます。

かの国の貴族たちは殆どが亡命し、姿を消しました。

お噂だと隣国の貧民街にエーレンフリート様に似た御前を見かけたと。



私は帝国お抱えの吟遊詩人となりました。

我が君はより一層美しく、強くあり、私はいつまで楽しませていただけるかと、自然と口角があがるのです。













知識が乏しいのでダイナミックに表現できませんでした。


物語の語り手はこの物語の作者という設定です。


物語を知ってるヒロイン転生者は全員と恋愛的ハーレムエンドになるならばどう考えても誠意が無いし、ヒーローは手玉に取られて国家としてどこかダメになるのでは無いかなと思ってこの話を書きました。


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