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第7話

更新ペース遅れて申し訳ありません。しかし、感想や評価を頂いた俺なら書きます。

 昼休みが終わって午後の授業を受けている時の明淵は転校初日のような、つまらなそうな顔を浮かべていた。今朝彼女を突き放したことで心が痛まないのか、と言われると何も言えなくなるが突き放す事が彼女にとってもいい方向に転じる事を願って俺は、身勝手に突き放した。だが、今の様子を見ている限りどうやらまだ動けずにいるのか、それとも動いたが拒絶されてしまったか。このどちらかだろう。俺が突き放したのは無駄だったのだろうか。

 チラチラと横目で見ても彼女は溜息ばかり。ノートを取ることもままならない程溜息をついている(そんな俺も彼女を見ているだけでノートは取っていない)。こんな態度が続いているのでは、突き放した身としても何か申し訳ないというか、何かしないといけないという焦燥感に駆られてしまう。かと言って突き放してしまった手前何をすればいいのかもわからない。

 そんな葛藤を頭の中で繰り返している内に、気付けば既に放課後になっていた。周りを見ても帰る準備をしている生徒しかいない。もちろん彼女の姿も。リュックを背負い階段を駆け下りる。その途中にある空き教室を開けるがそこにも彼女の姿はない。

 追いかけて今朝の無礼を弁解しておくべきかと思っていたが、そんな考えすらも消え去ってしまった。


 ――帰宅していつもの習慣のようにゲームのデバイスを起動し、ゲームにログインした。

 いつもと変わらない広場、いつもと変わらない音。何も変わっていない。このゲームをプレイし続けて、俺を作り上げてくれた場所。


「何も変わってないじゃないか……」


 なのに何故彼女の怒っている顔が頭から離れない。消したい記憶なのに消えてくれない。消させてくれない。見たくもない記憶を、思い出したくもない記憶を蘇らせる。


(あいつ1人でいる事がカッコいいって思ってんだぜ)


「……黙れよ」


 この広場にいるはずのない奴の声がする。


(ごめーんw私アンタみたいな陰キャタイプでも何でもないからw少し話し掛けただけで『自分に好意持ってくれてるかも!』なーんて甘い考えは捨てときなw)


「……黙れよ」


 いくら耳をふさいでも、頭を振っても声が、離れない。脳裏に焼き付いてしまって、離れない。


(ゴメン……みんなから嫌われているお前とはもう、付き合えない)


「黙れって言ってんだろォ!!!!!」


 ――怒声が広場に響き渡る。

 談笑していたプレイヤー達の視線が俺に集まり、何事かと隣のプレイヤー同士で耳打ちを始める。


「クソッ!!」


 ――俺は広場から走り去った。


***


 先程の広場から走り去り、ここはメインの道から外れた人気の少ない路地裏。


「クソが……なんであんな事思い出しちまってんだよ」


 さっきの記憶。ヒトから嗤われ、ヒトに哂われ、ヒトに突き放された忌々しい俺の記憶。消し去りたい俺の記憶。

 中学校の頃の嫌な記憶だ。クラスの中心の奴から貼られてたくもないレッテルを貼られ、告白した奴からは『お前のことなど好きでも何でもない』と言われ、挙句の果てには、信じていた俺の友人が()()()()()()()()()()()()というだけの理由で俺を突き放した嫌な記憶。思い出したくないから記憶に蓋をしたはずなのに、自分が彼女に同じような事をやってしまった事から記憶の蓋が外れて思い出してしまった。


「何度見ても嫌な記憶だ……」


 走った時の汗だけではなく、額には冷や汗が浮かんでいる。息を整え、気持ちを整理する。ドクドクと激しく打っていた心音が段々とゆっくりになっていき、激しくなっていた呼吸も落ち着いてきた。

 さっきまで取り乱していた俺をなだめるように大きく深呼吸。ようやく気持ちも落ち着いた。


「なーにしてるの?」


「うわぁぁ!」


 いつの前にか俺の真後ろにMAKIが立っていた(本当にこの人どっから湧いてくるのか分からないな……)。その驚き方を見てニコニコしている彼はどうせまた俺を驚かしてくるのだろう。警戒しておかなければ。


「で、何してたの『MOON』君。 何やらすごい焦りようだったけど」


 心臓がいまだにバクバクしている。いや、『いまだに』というより「『また』の方が正しいだろう。彼が神出鬼没に現れて俺を脅かして遊ぶから心臓が落ち着かない。このギルドのメンバー、彼のせいで長生きできないのかもしれない。

 しかし、誰かにこの解決法を聞きたかったのもまた確かで、俺は彼に今回やってしまった事、俺の過去と共に打ち明けた。


***


「そうかーそんなことがあったんだ……」


「……はい」


 そう言うと彼は「うーん」と空を見上げ溜息をついた。


「まず君はどうしたいと思ってるのか、聞いてもいいかい?」


「……俺は、彼女に謝りたいと思ってます。だけど、俺はその後からどういう行動をとるべきなのか分からないです」


「そうだね。君は彼女に謝りたい、と。じゃあここからは君がどうするべきか、先輩として1人のプレイヤーとしてアドバイス……はできないけど、それっぽいことを言おうか」


 彼はまた空を見上げた。だが、空を見つめる瞳はさっきやいつものように、しっかりとモノを見ている様ではなく、どこか虚ろな雰囲気を感じさせた。

最後までお読み頂きありがとうございます!

明淵を突き放したことを後悔した彼の気持ちを表現するための1話です。そして彼の意見を聞いたMAKIがどのような意見を言うのか、次のお話をお楽しみに!

では、次のお話でお会いしましょう!

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