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第16話

「防ぎきった!?」


 あの銃撃の雨を防ぎきった相手のプレイヤーに対してライトエッジは驚愕の声を漏らしていた。しかし、声を漏らしたのは彼女だけではない。観客席にいる俺やその他のプレイヤー達からも驚愕の表情が現れていた。

 しかし、一体どうやって相手のプレイヤーは彼女の銃撃の雨を防ぎきったのだろう。予想もつかない。

 剣にも拳銃にもあの量の銃弾を防ぐためのスキルなんてある覚えなんてないし、もし防御系のスキルを使ったとしてもあの激しい銃撃を防げるとは思えない。

 どのようなパターンを考えてみても今の状況に納得できるような結果にはならない。いや、本当にどうやって防いだんだ。

 疑問はいくつも浮き出てくるが、まだ勝負は終わっていない。空中で1撃貰ってしまったライトエッジだったが、地面に着地し直ぐに反撃の体制を整え、相手に向けて引き金を引く。

 HPゲージの減り方を見ると何発かは当たっているようだが、喰らったダメージと与えているダメージの比率がど明らかにライトエッジの方が後手に回っている。このままではライトエッジの負けだ。

 ただ、勝負というのは切り札があれば一瞬で場面がひっくり返る事があるのだ。……彼女はこれに賭けるしかないともいえるが。


「『バレット・レイン』でダメならこっちだァーー!!」


 そう叫ぶと『刈り取られる者への(デスカーネーション)花束・ディアボロ』を発動。踊り狂うように舞い、銃弾のカーテンを作り出す(というか、ライトエッジの使っているスキルって弾幕を張るようなスキルしかないのでは……?)。

 だが、先程のスキルを防いだ相手だ。案の定防がれている。とんだ化け物プレイヤーもいたものだ。あの量の銃弾を完璧に捌き切る事などあのMAKIですらできない芸当だろうに、それを相手のプレイヤーは平然とやってのける。


「王手だ」


 すばり。とライトエッジの身体が切り刻まれ、この瞬間彼女のHPが全損し、彼女の敗北が決定した。


***


 ――所変わってここは闘技場のプレイヤー待機場。

 俺は完璧に敗北してしまった彼女の様子を伺いにこんなところにまで来てしまった。前の俺がこんな様子の俺を見たらきっと悲しむだろう。

しかし、相手が強すぎた。あんなのトップのプレイヤーと同等かそれ以上のチートプレイヤーだ。

 俺なんかでは何の励ましにもなるわけないのだが、無駄だとしても同じギルドの仲間として放っておけるわけがない。女に近付くのはまだ怖いが、そんな事など言っていられない。

 キョロキョロ辺りを見渡すと、ベンチに座って落ち込んでいるようなライトエッジの姿があった。どう励ますべきか考える為に少しだけ、彼女との距離を取る。

 廊下まで後退し、壁にもたれかかったところですすり泣く声が聞こえてきてしまった。準備室には誰もいないが、それでも泣くのは少し遠慮したほうが良さそうだ。声が漏れてしまっている。


「悔しい……悔しいよぉ……」

 

 溢れ出てくる涙を涙で擦り、すすり泣いている。どんな時でも泣いている場面に出くわすのは勝手に気まずくなってしまう。相手だって自分が泣いているところに人なんて来て欲しくないだろうし。

 どうするべきなのか廊下で悩んでいるところで、俺が今来た道からプレイヤー同士の談笑が聞こえてきた。


「いやーさっきの試合すごかったけど、あの女の子の方のプレイヤーは実力はあっても使い方が甘いから負けたんだろーな」


「あぁ、基本的な使い方だけじゃ勝てねーよな? やっぱまだ雑魚プレイヤーなのかもな?」


 あまりにも無責任な会話に苛立ちが隠せない。しかも、ライトエッジにもその声が届いてしまっているようで、彼女の泣く声も頑張って押し殺しているようだが大きくなっていた。

 ……きっと俺は今日という日を後々後悔することになるだろう。


 アイテム欄から剣を顕現させ、すらりと刀身を抜き去った。

 そして、『霞の歩法(かすみのほほう)』で、まるで霞のごとく気配を希薄させ、マップから己の存在を消し去る。そのまま――。


 剣先を先程会話していたプレイヤーの胸元ウィークポイントを突き刺し、横にを薙ぎ払って横のプレイヤーごと斬り払う。

 HPを全損したプレイヤーがプリズムと化し、その場から消滅する。


「……何もわかっていないお前らが……彼女の事を簡単に片づけるな……!!」


上手く言葉にならない怒りを虚空にぶつけ、剣を再びアイテム欄に戻し、暗い廊下を歩く。

 準備室に近づくたびに彼女のすすり泣く声が大きくなってくるのに、俺は耳を塞ぎたくなった――。

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