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ゾクっ.......。この人笑顔なのにすごく怖い。呑気だと思われるかもしれないが、この世界の人は皆顔がいいのか。美形羨ましい。
黒髪に赤い瞳、背は高めで髪は短い。あれ、でも昔は髪が長かったよね。
___________え、私何考えてるの? 私この人とは初対面のはずなのに。 懐かしいだなんて。
「ヤマト.......?」
思わず口から出た名前だ。私の言葉に彼は大きく反応を示した。
「久しい呼び方だなぁ? カエデ、俺と来い。二度と離さん。」
急に何を言ってるんだ、と思っていると後ろに控えていた人が前に出てきた。緑の髪と瞳をした、眼鏡をかけている人だ。
「カエデ様、お久しぶりです。私たちと一緒に来て下さりますよね? 拒否権はありませんよ?」
「や、やだ.......」
なぜかこの人がすごく怖くて、震えが止まらない。いつの間にか虎に戻って寝てしまっているルイを抱きしめる。
「ネロ、下がれ。」
「申し訳ございません。」
ヤマトは私の傍にきてしゃがんだ。恐怖で足が震えてまともに立てない。
「すまなかった。怖がらせるつもりはねぇ。だから泣くな。」
ヤマトが私の涙を拭った。
私、泣いてたんだ。普通に生きていれば、人語を話す虎に出会うこともなかったし、角の生えたこの人たちに会うこともなかった。しかし、これは現実だ。
「仕方ねぇな。一度帰るぞ。カエデ、また会いに来る。」
そう言って、私の瞼に軽く触れるくらいのキスをした。そのまま名残惜しそうな顔をしながら闇に消えた。
「んぅ、あれ魔王の匂いがするぅ。もしかして寝かされてた?」
さっきの人が魔王? 魔王だなんてゲームの中だけだと思っていたが、目の前に来て勇者ってすごい、って思った。あの人は強いと思う。ネロって人の何倍も。しかし何故私は魔王と知り合いだったのか。前世の記憶が関係しているのは確かだ。
「カエデ!! 探しても全然見つからなくて! この魔力、まさか.......魔王に会った?」
会ったのは本当のことなので頷いた。そのあと私が泣いたことに気づいたのかオロオロし始めた亜嵐。でも、どうしてここが分かったんだろ。
「楓、緑の髪のやつには気をつけて。あいつは昔、君を.......」
亜嵐がきて安心したのかどんどん瞼が下がっていく。緑ってネロって人だよね。私に.......なんだろう。