9 亜嵐side
「お久しぶりです、アラン。」
「レクト.......? 本当に久しぶりだ」
「そうですね。カエデは1度眠らせました。あ、今は聖女様でしたっけ?」
俺とカエデ、それにレクトは幼馴染だった。だった、じゃなくて今もだな。ありがちだと思われるかもしれないが、俺とレクトはカエデの事が好きだった。もちろん今もだ。
同じ人を好きになるのは仕方が無いと思う。カエデは美しくて、誰にでも優しかった。幼い頃から一緒に過ごしてきて知っている俺たちなら好きになることは自然だったと思う。
カエデは優しいだけでなく、イタズラが好きな子だった。厨房にこっそり侵入してお菓子を盗んだのも今となってはいい思い出だ。
「また、カエデに会えるとは思っていませんでした。.......アランも」
「俺はついでか」
こんな軽口を言い合えるのも懐かしい。
レクトはカエデの頬に手を当てると小さく微笑んだ。みんなからすると真顔のままだろうが。
「あともう少しで目を覚まします。次は譲ったりなんかしません。.......では。」
譲ったりなんか、か。みんなはカエデの幸せを願って、俺に任せてくれた。だがそれを裏切って幸せてしまった。魔王の部下のネロの手によって。多分だが、あいつもカエデのことが好きだったんだと思う。しかしその愛は歪んだものだった。手に入らないのなら殺せ殺してしまおうと思うほどに.......。魔王ならば気づきそうだが、まだ気づいてないのか? カエデをきずつけたものならば部下でもすぐに消しそうなんだがな。まぁ楓に言うつもりはない
「んっ、亜嵐.......?」
楓が目を覚ましたようだ。レクトは本当に優秀な医者だ。カエデを守るためならばどんな嘘でもつく。たとえ俺が辛くなっても。
今度は死なせない___________________
「おはよう、楓。」
この世界はライバルばかりだ。
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